前へ目次 次へ 29/94 またたきのあいだ‐12‐ 椛は人間だ。しかし鏡太郎の目には……人間に、見えなかった。鏡太郎のは、怪物を見る怪物の目だ。怪物の目をもてばそれは怪物だ。酒樽に一滴の毒を垂らせば、それはもはや酒ではなく毒である。そんなものの心の内を、はたして『普通の人』に明かせるだろうか? 鏡太郎は「否」と考えた。 「そりゃやっぱり、こんな美人さんを自宅に招けて、運命を感じてしまうものさ。それってとても嬉しいことだ。女の人の縁ってのは結びにくいからな。いわゆる幸運、ラッキーてヤツだ」