前へ目次 次へ 15/94 ひとりぼっち‐15‐ 女の手あるいは足である狼の牙がハンカチをくわえた。そのハンカチは使われ、女の口回りの汚れが拭われた。女は吐瀉物のついたハンカチを、その青い肌の手で掴み、その黒目赤い瞳でしばし見つめていた。 鏡太郎はすぐに察した。汚したままハンカチを返せない、と考えたのだろう。ハンカチは惜しくなかった。それに返すのがこの場でないなら、また会う必要があるのだ。女も面倒と思うはずだ、と考えた。だから、 「ハンカチはそのまま捨て──」