3──【友人】
今日は何だかいつもと違う朝だ。
上手く言えないけど、ちゃんと目が覚めたし。
朝が苦じゃない。
「行ってきまーす」
母さんはもう仕事でいない。
けど、昔からのこの習慣は抜けない。
鍵をいつもの場所に隠して、学校へ向かった。
学校でなんて言おう。
『風邪だった』って嘘を言うか、正直に言ってしまおうか…
でも、正直に言ったらみんなに心配かけるだろう。
悩むなぁ…
いろいろ考えてたら、もう学校に着いてしまった。
まぁ、聞かれたらその時思い付いたことを言えばいいか。
「よっ!昨日どうしたんだ?」
いきなり聞かれてしまった…
「う、うん。病院に行ったんだ」
「病院?どっか悪いのか?」
「ただの風邪だったよ。昨日休んだらだいぶ落ち着いた」
「そっか。でもあんまり無理すんなよー」
深く聞いてこない友達に感謝するべきか…
でも、助かった。
先生には、母さんが言ってるから大丈夫か。
また、倒れないように気を付けなきゃ。
深く聞いてこない友達に感謝するべきか…
でも、助かった。
先生には、母さんが言ってるから大丈夫か。
また、倒れないように気を付けなきゃ。
それから学校ではテスト自習が始まり、何事もなく1日が過ぎた。
学校が終わり、帰ろうと鞄を持つと、友達に呼ばれた気がした。
「一緒に帰ろうぜ」
「うん」
いつもは逆の方へ帰っていく友達が、今日は何故か誘ってきた。
僕は不思議に思ったが、断る理由がなかった為、首を縦に振った。
学校から程近い公園に寄ると、ベンチがあった。
白い何の変哲もないただのベンチ。
公園なのに、周りにはブランコも無ければ、滑り台も無い。
ベンチが二つあるだけの殺風景な公園。
僕と友達はそのベンチに座った。
「なぁ」
「ん?」
「お前とこうやってベンチに座ったの、久しぶりだな」
「うん」
本当に久しぶりだ。
一年生の時以来だと思う。
あの時も、ただ何となく公園に来てベンチに座った──
× × × × × ×
「ふぅ…暑いな」
「うん」
「お前は学校、楽しいか?」
「まだ分からないよ」
「そうだったな」
そう。
今の学校が楽しいかどうかなんて、まだ分からない。
これから時間を掛けて、楽しいか楽しくないかが決まっていく。
僕は、楽しい方がいい。
そうなるように頑張ればいいのかな…
「少し涼しくなってきたな」
「うん」
空には夕焼けを背景にして、カラスが群れをなして飛んでいく。
彼らはどこから来て、何処へ行くんだろう。
「帰るか」
「うん」
× × × × × × ×
あの時は、本当にどうでもいい話ばかりだった。
友達が話し掛けてきて、僕が応える。
今回もそうだろう。
「最初、元気無いぞ」
「誰が?」
「お前だよ。お、ま、え」
「そんなことないよ」
いつも通りに過ごした筈なのに…
顔に出てたのかな。
そうだったら、バレたかもしれない。
風邪なんて嘘だってこと…
「なぁ…」
僕は友達が発する言葉の一つ一つに心臓が大きく揺れる。
何でこんなに焦ってるんだろう。
バレるのが怖いからだろうか…
「何か悩みがあったら俺に相談しろよ」
「うん」
良かった…バレてない。
このまま隠し通せばいいんだ。
……本当に隠し通せばいいのかな。
「じゃあ、俺帰るわ」
「うん。じゃあね」
「また明日学校でな」
「うん…」
三ヶ月後にはこんな約束も出来ない。
僕は、友達が帰ってからもそこのベンチで悩んでいた。
残り──二ヶ月と二八日