2──【放心】
僕は、余命三ヶ月という宣告を受けてから、何にもやる気が起きなくなった。
テスト勉強、テレビ、コミュニケーション、学校。
『どうせ、あと三ヶ月だから』なんて思うと、余計に僕はやる気を無くした。
母さんは母さんで、そんな宣告を受けた僕を励まそうと、いろいろやってくれる。
でも、僕はそれすら目障りになっていた。
「優、おはよう。学校に行きましょう?」
「行かない」
「そんなこと言わないで。テストもあるんでしょ?」
「行かない」
「そう…学校に連絡はしておくけど、行きたくなったらお母さんに言って?今日休みだから…」
「……」
行く筈がない。
行ける訳がない。
学校に行って『僕はもうすぐ死ぬ』なんて言いふらすのか?
そんなのはごめんだ。
だから、勉強なんてしない。
もうすぐ死ぬんだ。
将来がないから、勉強なんて意味がない。
時間も昼にさしかかった時、僕の携帯が鳴った。
けれど、見るのが面倒臭い。
放っておこう。
どうせ、友達からだ。
友達なんて作っても意味がない。
僕は居なくなるんだから。
「優ー。お昼ご飯よ」
「わかった」
食べなくてもいいけど、死ぬのが早まるのだけは嫌だ。
母さんとは何も話さずご飯を食べている。
母さんも、かける言葉が無いのだろう。
僕も無いから。
何気なく付いていたテレビに目をやると、ニュースが流れている。
自殺とか殺人とかのニュースばかりだ。
自殺、か…
どうして自殺なんてするんだろう。
つまんなくなったから?
寂しいから?
僕は自殺しようとは思わない。
自分はいいかもしれないけど、後に残った家族とかは悲しむだろうなぁ。
……僕が死んだら、母さんはどうするんだろう。
泣いてくれるのかな?
「ねぇ、母さ…」
「駄目よ」
「え?」
「優が死ぬのは許しません」
許さないって、僕は何もしないでも死んじゃうのに。
母さんって変な人。
でも、母さんの厳しい顔を見たのは初めてだ。
優しくて、強くて、暖かくて…
「優…」
あれ?
視界がぼやけてる。
あぁ…泣いてるんだ…
「ごめん…母さん…」
「いいのよ…」
母さんも泣いて、る?
母さんを初めて泣かせた?
僕がこんなんだからだ。
そうだ、もう母さんを悲しませちゃいけないんだ。
母さんの涙を見るのは、これが最初で最後にするんだ。
部屋に戻って携帯を見てみると、友達からメールが数件来ていた。
内容はみんな『学校休んだみたいだけど、大丈夫か?』などの僕を心配するメールばかり。
みんなが心配してくれてる。
心配をかけないようにしなきゃ。
僕にとっては一番大切な友達だから…
前向きに生きていこう。
たとえ、死ぬ時期がわかっていても、挫けちゃいけないんだ…──
余命…二ヶ月と三十日──
更新はまちまちですが、出来るだけ頻繁に更新しようと思います




