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14.プール 後編

皆さんお久しぶりです。

どうにかこうにか国家試験やら、就職試験がひと段落ついたので続きをゆっくり書いていきたいと思います。

…久しぶりに書いたので、文章がとてもえらいことになってます。

後、短いです。

一人になれそうな所を探し、ちょうどいいベンチがあったのでそこで座って顔を伏せる。

 …水は嫌いなんだ。

 子役時代、川のPRの撮影で川遊びをしていた時に深い所に足を滑らせて流されたことがあるのだ。

 幸い、大きな怪我はなく溺れただけでことは済んだが、当然その撮影は無かったことになった。

 流され、身動きが出来ない川で、どんなにあがいても外に出れることがなく、ただ、流れのままグルグルと回っていくあの感覚が忘れられず、足のつかない所に入ると、自分でどうにかできるほど冷静でいられなくなる。

 水中で手を掴まれ、必死に手を伸ばしても掴めないのが、その時と重なった。

「…帰りたい」

「帰るには早いよ、凛」

 そう言って気が付けば隣に彩希がいた。

「で、どうしたの」

「…無理やり足のつかないとこに引き込まれた」

「凛って金槌だったの?」

 無言で首を振り肯定を表す。

 その時のことを思い出すとやはり、トラウマがよみがえる。

 彩希はただ、そっかと呟いて頭を撫でるだけだった。  

 

「事情は分かったし、先輩さんも悪い」

「うん」

「けど、凛にも非はあるんだよ?」

 ゆっくりと、切り出した席の口調は冷静で、どこか暖かかった。

「……」

「一応、自覚はあるんだね。言っておくけど、私は背が小さくとも心まで小さい女じゃないよ」

「…ごめん」

「以後、気をつけるようにっ!」

「~っ!」

 その言葉と共にデコピンを食らい、何を考えていたのかが飛んで、冷静になった。

 確かに、事前に言わなかった私も悪いが、何の前触れもなく水の中に引き入れるのは、本当に混乱した。二度とこういうことを無くして欲しい。

 一度、イライラと感情が募り始めると完全にどうやって先輩に復讐するかの方に思考がシフトする。

「落ち着いたみたいだから先輩さんのとこ行くよ、凛。文句言ってやりなさい」

「ん」

「我慢して鉄仮面つけてるくらいならありのままぶつけてなさい。それでも食い下がるなら先輩さんの気持ちは本物だよ」

 彩希に背中を押され、先輩を探しに歩き出した。 

 



 探し始めて1分ほどで先輩が走ってきた。

「凛、さっきは本当n---」

「先輩、頭を下げるのはやめてください」

 遭遇早々綺麗な角度で頭を下げてきた。

「あ、ああ--」

 先輩の顔が上がると同時に往復ビンタをかまし、小奇麗な高い音が周囲の会話を途切れさせた。

 周囲の客も、野次馬のようにこちらを見てきて、あっけ取られている所で男の急所を全力で蹴り上げた。

「アガッ!?」

「先輩、これの倍くらいが私の受けたトラウマの痛みです。どれほど私が水の中に入るのが辛いかご理解いただけましたか?」

「~~~~~っ!?」

 あまりの痛みにプールサイドに蹲り右往左往転がり、すぐ横のプールにドボンと落ちる。

 が、すぐに息を切らしたように荒い呼吸で這い上がってきた。

「今度から私、先輩相手に嫌悪感がいだいたら肉体言語か生活的制裁をさせてもらうことにしたのでよろしくお願いしますね」

 一方的に、ただ言いたいことを言って髪の後ろに手を持っていき、いかにも我が儘な御嬢さんがやるような行動を再現してみたが、ちょっと自分でもいい感じかもしれない。

 スッキリして自分の顔の筋肉が緩んだ気がした。


「あの、凛さん?ありのままぶつけすぎじゃないでしょうか?」

「自分で言うのもなんだけど性格捻じ曲がってるみたいなんだよね」

 --それに背中を押したのは彩希なんだよ?

 と笑顔で答えると、彩希は二歩後退した。


「ねえ、愁君。私、何かとんでもないことをやらかした気がする」

「…お前が萩本の所に行っている間に、俺もあの人に色々と言ったんだがまさか丸つぶれになるとは思わなかった」

 



 二人を駅で見送り、車の中では先輩と二人きり。

「…いくらなんでも、急所を蹴り上げるのはやめてくれよ」

 車のミラーから見える先輩の眉間には皺が寄っており、本当に勘弁してほしいようだった。

「私のトラウマを抉るのが悪いんです。今後一切そう言ったことのないようにお願いします」

「なんつうか、その勢いに任せて悪かったな」

「デリカシー0ですね」

「…へこむからやめてくれ。反省してる。その、俺は--」

 主に精神的疲労でそんなやりとりをしている合間に眠気が襲ってくる。 

 全部先輩が悪い。

 窓から差し込む太陽が傾いていることに気がつきながら、微睡に身を任せようとすると、

「---って、寝ているのか!?」

 意識が消えかけているなか、驚くような声と、


「はぁ、何かシリアスになってたのが馬鹿らしくなったな」


 ---俺は、俺なりのやり方で遠慮なしに攻めてくことにしたから


 ---覚悟しとけよ?


 妙に嬉しそうな声が、聞こえた気がした。


此処から先輩が復活していく予定。


先輩は年上の余裕を取り戻すことができるのか←

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