1章-6
「逃げられちゃったか…。まぁ仕方ないか、この子達に任せればなんとかなるかもだし」
J.Wは颯馬を一瞥すると慎弥の目の前にたち首を捻った。
「うーん、颯馬はこれから鍛えれば魔砂の足元に及ぶかもしれないけど問題は慎弥くんだな…。即席の破魔器を扱うものになってしまった訳だし…どうするかね…」
J.Wは空中からさまざまな破魔器を出すとそのまま地面に落とした。
「これは…問題外…これは、使いこなせれば問題ないけど…無理だな。となるとこれか……」
J.Wは地面から数珠を持ち上げると用心深く眺めた。
「んー……問題ありだけど、もしかしたら扱えるかもしれないし…仕方ない、これをつけるか」
J.Wは軽くため息をつくと慎弥の腕に青い数珠をはめた。
すると、数珠は自然と慎弥の腕に収まるように収縮した。
[おいおい、こんなガキに俺を扱わせるつもりか?冗談じゃねえぞ、暴走してやる]
「まぁそういってやるな。君とも関係がない訳じゃないんだから」
[ああ?それはどういうことだ?]
「後々嫌でもわかることになるよ。それより、宗康、慎弥くんがほんとのピンチの時か慎弥くんが君の存在に気づくまでは出てくるんじゃないぞ?特訓にならないから」
[俺は、血を浴びたくてうずうずイライラしてるんだ。その願いは聞けるかどうかわかんねえな]
「誰が君を永遠の封印を与えたと思ってるんだ?君を消滅させることなんて一瞬だよ?」
J.Wはいつのまにか片手に縫い針のようなものを持っていた。
[…分かったよ、黙って大人しくしときゃいいんだろ。分かりましたよ]
数珠から声が聞こえなくなりJ.Wは颯馬の方に近づいた。
「J.W…」
「しゃべらなくていい、ゆっくりと呼吸をするんだ」
颯馬はヒューヒューと細い息を繰り返していた。
「颯馬、君は今強さの限界を感じているのだろう?それは恐らく君の力のそこが見えたと言うことだ。はっきり言おう、君はこれからどんな訓練や特訓を積んでもこれ以上強くなれない。それに比べて慎弥くんは底が見えない上に目まぐるしい速度で成長している。いつか追い抜かれる日が来るかもしれないな」
「俺は…俺は強くなりたい」
「君がそう感じる理由もわかる。君は元々魔恐が見える特異体質だ。魔恐を恨む気持ちも充分理解できる。でも…無理だ。君は今が限界だ」
「ふざ…ける…な!」
颯馬は無理矢理体を起こしJ.Wの胸ぐらをつかんだ。
「恐らく君の今の強さは魔砂の足元どころか近くにも及ばないだろう。だから魔砂との戦闘は僕と慎弥くんに任せてくれ」
「…ざけるな…ふざけるのもいい加減にしろ!」
颯馬は一瞬で2つの破魔器を二重展開させると刀を振り銃を3発撃った。
しかし、J.Wはその攻撃をたったの二回の動作で避けるとよけた反動で颯馬を蹴り飛ばした。
「グハッ!」
颯馬はそのまま倒れ気絶した。
「底は広げた。限界を越えろ颯馬。君はもっと強くなれる。強くなれ。そして、僕を越えろ」
J.Wは颯馬の方を向き軽く微笑むとデスクに向かった。




