第0章 |青朽葉弥生の話
第0章 青朽葉弥生の話
中学時代・・いや、幼少時代から僕は周りから疎遠されていた。理由と言えるようなものが有るとすれば、僕自身が「変わり者」だったことと、僕の家系が古くから村にある「神隠しの家系」と呼ばれるものだった、というところだと思うんだ。
「神隠しの家系」というのは昔々・・・・まぁこの昔話は長くなるからまた今度。
つまり、簡単で端的にまとめると、僕は周りから「気味悪がられていた」んだ。
こんな現代にそんなモノが残っているなんてくだらないと思うかもしれないケド、そのときの僕にとってその村そのものが全てであり世界であったワケで。その中で疎遠されるというのは、世界から否定されたのと同じようなことで。だからだろう、僕は内気で消極的で、今にも消えてしまいそうな性格をしていた。
もちろん友達と呼べるような人は居なかった。
でも、忘れもしない中学1年の4月、あの子に出会って僕は変わり始めた。
その子は名前を邑上桜華といった。僕と同じクラス(といっても1クラスしかなかったんだけどね)で、明るい女の子だった。
そんな彼女は何故か僕と一緒にいてくれた。
不思議だった。僕と一緒にいてくれる人ができるなんて思いもしなかったから。それでも僕は嬉しかった。だって初めて出来た友達だよ?嬉しくないわけ無いじゃないか。
この頃から、次第に僕は明るくなっていった。彼女と話して、一緒に居るのが楽しかったんだ。
でも、同時に不安だったよ。僕と一緒に居たら彼女まで疎遠されてしまうんじゃないか、ってね。だから僕はある日彼女に聞いてみたんだ。
「ねぇ、桜華さん。何故僕なんかと一緒に居てくれるんだい?知ってるだろ、僕が周りから疎遠されてること。そんな僕と一緒に居たら桜華さんまで疎遠されかねないんだよ?」
ってね。そしたら彼女なんて答えたと思う?
「弥生君、私たちは友達よ?僕なんか、なんて言わないで。あと、周りなんか私は気にしてないわ。私は弥生君が好き。だから一緒にいる。他に理由がいる?」
なんて言うんだ。
嬉しかった、とても。初めて他人から「好き」なんていわれたから。心臓がドキドキしたのを覚えてる。そして僕は言葉を返した。
「でも、君が疎遠されたら悲しいよ。君みたいな素敵な人が周りから嫌われていくのはとても悲しい。その原因が僕だっていうなら尚更だよ。」
唇が震えていた。
「素敵な人・・・か。ありがとう。でもね、私は何があっても立ち向かう。弥生君を悪く言うような人がいても、私が守ってあげるから。だから、一緒にいよう。私の居場所を弥生君にも分けてあげるから。」
そう、彼女は答えた。
正直、僕は泣いてしまった。ポロポロ、ポロポロ、大粒の涙が流れた。それほどに嬉しかったんだ。
「ありがとう。ありがとう・・」
僕は「ありがとう」を繰り返すことしか出来なかった。心がいっぱいだったんだ。
なんて強い人なんだろう、そのとき僕はそう思った。そして僕も彼女みたいに強くなりたいと思ったんだ。
そんな出来事があってから、僕らは前以上に仲良くなった。そうして、中学生活の三年を僕と彼女は一緒に過ごした。
そして季節はめぐり、月日は流れ、彼女は都会の進学校に行くことになったんだ。
寂しかったけれど、僕は笑顔で見送った。そして、僕も自分の道を歩こうと決めた。
僕は日本を旅して、色んな世界を見に行こう。そのときの僕の夢、「誰かを守れるような、強い人間になる」ために。
色んな世界の人に触れ、色んなことを学ぼう。そして再び桜華に会ったときに、今度は僕が守れるように。
そして、僕は村を出た。
それが、全ての始まりだったんだろうね。
不定期に連載していこうと思っています。
感想がありましたら連載中でも送ってくださると嬉しいです。