4話 1日目の4
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今後も頑張っていこうと思います。
スライムを斬る為に走り出す。
この辺りの敵はノンアクティブ…こちらから攻撃しなければ何もしてこない。
ドスを構え、叫ぶ。
「喰らいやがれ!」
核目掛けてドスを突き出す。
赤い核にドスが届いたようで、上のほうに浮かんでいるウィンドウに新たな文字が。
『急所に突きをヒットさせる事に成功しました。スキル『急所突き』を入手しました。このスキルは敵の急所への攻撃が成功した時に発動し、威力を1.5倍にします。このスキルは剣や槍を装備している時のみ使用可能です』
スライムのHPバーが半分ほど空になったのを確認し、少し離れる。
急所突き、か…結構使い勝手は良さそうだ、今後も使い続けよう。
などと考えていたら、スライムの体から矢が飛んできた。
青い透き通った矢が、膝に…当たりそうだから避ける。
まだ膝に矢を受けて冒険者稼業を辞めたくないからな。
また駆け寄って2連続で斬りつけると、HPバーが0になり、光の粒になって散った。
「お疲れ、フミちゃん」
「疲れた…という程でもないな。若い体は良いな」
腰も痛くならないし、体力もまだまだ余裕がある。
この調子なら、もっと行ける。
「あれ、次のLvまでの経験値ってどう見るんだ?」
「…説明書、全然見てなかったからね…わかんない」
説明書では最低限の事しか確認しなかったから、何も分からない。
かといって、ログアウトして確認するのも面倒だ。
どうしよう、と考えていたその時だった。
「あのー、すみませーん」
「ん、なんですか?」
振り返ると、別のプレイヤーが居た。
黒髪ポニーテールの女性だった。
「なんか悩んでるっぽかったので、声をかけてみたんですが、どうかしましたか?」
「あぁ、説明書を詳しく読んでいなくて…次のLvまでの経験値ってどうすれば分かるかな?」
「左上にHPバーとMPバーがあるでしょ?その下に薄く丸があって、黄色い丸ゲージが一周すれば次のレベルに上がるよ」
「あ、私は10分の1位溜まってる」
「俺は5分の1位かな。有難う」
「困ったときはお互い様、だよ。あ、私は紅、高校2年生だよ。貴方達は?」
「フミ、78歳のゲーマーおじさんだよ」
「私はサクラ、フミちゃんと結婚している同い年よ」
紅がポカンと口を開け固まり、フミとサクラを交互に見る。
たっぷり10秒ほど考え込み、第一声。
「…嘘だよね?」
「いや、本当」
「話し方がなんかおじさんっぽく無いよ?」
「だって、折角若い体を手に入れたんだもの。ゲームの中くらい良いじゃない?」
「…実際にあった事件の話をするけどね。VRMMOで、おじさん達と同じくらいの歳の男の人が、女子高生と仲良くなって、現実で会おうって話になって実際に会ったら、『キャラと年齢が違いすぎる』って話になって、大喧嘩になって…」
「わ、分かった分かった。…こうでいいかね?」
「あ、おじさんっぽい」
「分かったわ。今からは歳相応の話し方にするわねぇ」
「こっちもおばさんっぽい」
どうやらVRMMOで実年齢より若いキャラクターを作ると、色々と大変らしい。
若い体に年寄りっぽい話し方は若干違和感を感じるが、この際は気にしないことにしよう。
「じゃあ改めて、私の名前はフミ、78歳のおじさんだよ。気軽におじさんとでも呼んでくれ」
「私はサクラ、78歳のおばさん。私もおばさんと呼んでいいからねぇ」
「退職後ってことですよね…良いなぁ、ゆっくりこのゲーム出来て」
「どういうことかね?」
「あ、説明書あんまり読んでいないんですよね」
「気軽に話しかけてくれた方が、こっちは気分的に楽だから、さっきみたいな感じで良いんだよ?」
「あ、はーい。えっとですねぇ…」
話を纏めると。
1:20歳未満の人がプレイできるのは連続2時間…ゲーム内で10日まで
2:20歳以上であり、大学に通っていたり会社に勤めている人は連続3時間…ゲーム内で15日まで
3:20歳以上であり、職についていない人は連続6時間…ゲーム内で30日、1カ月まで
この範囲内でプレイが出来るらしい。
理由としては、やはり学業や勤めている仕事を忘れたりしないように、と言うのがあるようだ。
確かに、最大で1カ月もゲーム内で楽しく過ごしたとしたら、勉強内容なんてサッパリ忘れていそうだ。
「羨ましいなぁ…高2って色々大変なんですよ…」
「なぁに、それも含めて青春ってものだ。老後は長いが、青春時代は短い。ちゃんとお友達と仲良くするんだよ」
「うぅ、年上に言われると説得力が高い…あ、もし良かったらフレンド登録しません?お互いがログインしているか分かるし、メッセージとかで遠くに居ても誘ったり出来るから」
「あら、良いわねぇ。フミちゃん、どうする?」
「良いんじゃないかね。紅さんは良い人そうだからね」
「じゃあ、フレンド登録、しましょうか。これからも宜しくねぇ」