19話 4日目の3
少々遅くなりましたが、19話(スレ編含めると20話)投稿です!
「あ、ありがとうございました!まさかスレで噂になっている老夫婦の2人ともう1人の人に助けてもらえるなんて…」
「いえいえ、偶々通りかかっただけですので…」
一息ついた後、礼を言いに先程助けた三人組が寄って来た。
話を聞くと、所謂寄せ集めパーティーと言ったもので、偶々近くに居た3人で行動していたらしい。
そこで、森の中を探索していたらゴブリンが2匹現れたので迎撃、逃げたので追撃したらホブゴブリン率いる本隊に遭遇したそうだ。
そこから全力で逃走してたら、偶然フミ達が居た方向に出てきたというわけだ。
「あ、俺は獅子吼です!」
「僕は御剣」
「ジャンです!」
片手剣と盾を持った赤髪の青年が御剣、緑髪の斧使いが獅子吼、金髪の槍使いがジャン。
3人とも連携が上手く取れず苦戦したらしい。
3人の自己紹介を聞いて、フミ達も挨拶する。
「どうやら私達の事を知っているようですが、一応…私がフミです」
「サクラです」
「紅です!」
『月光です!!』
「あぁ、この狼は月光と言います」
「3人とも有名ですよ?『とある作業場に夕飯時に行くと、店売り料理よりも美味い飯が店より安く売っている。作っているのは老夫婦と1人の女子』って!」
「あ、俺1回だけ買った事あります!出来立てのトマトソーススパゲッティ…最高に美味かった!!!」
「ちょ、獅子吼ズルッ!俺昨日の夜負けたんだぞ!?一口貰えたけどさぁ!」
「ジャンも良いじゃん!僕なんてまだ一口も食べた事無いんだよ!?」
若い人は元気だね、と呟くフミを見て、サクラが笑う。
そんな時だ。
ぐぎゅるるるぅ…
まるで、時間が止まったかのような静寂が訪れた。風もまるで空気を呼んだかのように止んだ。
全員の視線が、1人にあつまった。
「あ、あはは…」
「…お昼に、しましょうか?」
「そうしようかねぇ…」
『お昼ですか!?楽しみです!!』
腹を押さえている紅を見て、今後の予定が1つ、決まった。
――――――――――――
「こ、これが噂の料理…」
「うっまそー!」
「美味そうじゃない、絶対に美味いだろ…!」
「そう言って貰えると、頑張って作って良かったって思えるよ」
昼食ということで、持ってきた物を取り出したフミ達一行だが、3人組も一緒に食べる事となった。
が、3人組が取り出したのは…パンを2つずつ。
ジャン曰く『俺達全員飯作れなかったんすよ。で、料理は金けっこう取られるんで、安売りのパンで済ませようかなーって』とのこと。
料理の料金が高い事情は知ってたフミ達としては、仕方のない事なんだよなーとしか言えないが、知らない3人組からすると不満があるらしいが、それは別の話。
『パンだけじゃ足りないでしょう?』というサクラの判断により、今日の夜販売予定のモノの試作品(今日の朝作成)が渡されたのだった。
縞牛の串焼き
完成度:7
説明:アインズの北側に生息する縞牛の肉を丁寧に下処理し、数種類のハーブや塩、胡椒で味付けし、絶妙なタイミングで焼き上げた素晴らしい一品。元が縞牛だったと分からないほど臭いや硬さが無くなっており、ビールが欲しくなる一品。
パンに切れ目を入れ、串焼きの肉と野菜を挟んだモノを手に持ちながら3人がフミとサクラ、紅の方を向く。
「「「 ありがとう御座います!!!そしていただきます!!! 」」」
「はい、召し上がれ」
一口食べ、噛む。そうした後、3人は食べる事に集中した。
一度食べたことのある2人も、初めて食べた御剣も、本当に『美味い』と思ったのだ。
「超うめぇ!やっぱおじいさんおばあさんの料理最高!!」
「今日の夜も作業場行かないとな!これの完成版、絶対ゲットしてやる!!」
「僕も今回から通いつめようかな!」
『やっぱおじいさんの料理は美味しいです!』
少し離れたところで、大量に積まれた肉を食べていた月光がそう言う。
野菜が無いのは、挟んだ野菜がネギ系の見た目だった為『犬とか狼にはネギは駄目だったような?』と思い出したフミが抜いたからである。
「うーん…おじいさん。ちょっと聞いても良いですか?」
「なんだい?」
「いや…その狼?ここら辺で全然見ないなーって。僕、最近始めたばかりですけど、それでも黒い狼なんて見たことないですよ?」
「あ、それ俺も気になります!」
「普通の狼なら森に居るけどなぁ…」
御剣の質問に、それもそうだなと残り2人が思い始める。
どうしたものか、と思いフミがサクラ達に相談をする。
「どこまで言っても大丈夫かねぇ?」
「うーん…どうしましょ?」
「そうですね…そもそも言って信じて貰えるかすら分かりませんし」
「ここは、フミちゃんが話したいだけ話しても良いんじゃないかしら」
「そうですね!私達のリーダーに任せましょう!」
「あれ、何時の間にリーダーに?」
「今決めました!」
「実際フミちゃんに合わせて行動してるし良いんじゃない?」
やれやれ、と思いながら、月光を呼ぶ。
丁度食べ終えたようで、すぐに膝の上に乗っかった。
『どうしたんですかおじいさん?』
「君の事を話そうと思ってねぇ」
『私ですか?』
「うん。この子は月光と言ってね。森に言ったら罠にかかってて、助けたら懐いたんだよ」
「へー、罠に!うっかりさんだなーお前!」
『うわぁ止めてくださいお腹を触って良いのはおじいさんだけですー!他の人は背中までですー!!』
ぬわーっ!と叫びながらも撫でられ続ける月光だったが、フミが撫で始めると途端に大人しくなった。
「まぁうっかりさんなんだけど。皆と話して考えた結果、虫の大群を初見突破?したボーナスじゃないかって話になってね」
「…あの初心者殺しの森を初見で!?」
「パーティーメンバーの人数×40の虫の大群が襲ってくるあれを!?」
「しかもLv6以下のパーティーにしか襲い掛からないから、挑むなら低レベルでしか挑めないのに!?」
「あ、あれってそんな縛りあったんですかー。いやー、早めに行って良かったですねー」
軽く返されて、3人組も反応に困る。
そういえばスレで話題になってたなー、と御剣が思い出していた。
「にしても、初見クリアとか初回クリアとかで報酬あるんすかね?あるんだったら、こういった事も積極的にトライしないと!」
「レア武器レア防具レアアイテムだけじゃなくて、こんなモノまであるのか…」
「おじいさんは足軽なんですよね?つまり、専門ジョブ以外でもモンスターを引き連れられるようになる…」
『モノ扱いするなー!』
「あいだーっ!?」
『こんなモノ』と言ったジャンが月光に噛まれるが、他のメンバーはスルーした。
作業場でも似たような出来事があったからだ。御剣と獅子吼はそれぞれの考察に夢中で気付いていない。
「私はこういう事についてはあまり詳しくないけど、多分ほかの場所でも何かあるかもしれないねぇ」
「このゲームは製作者側が良い方で頑張りまくる事で有名ですからね。多分色々と隠し要素があるかもしれませんね」
「よっし!飯食って元気出た!!この後もレベル上げ頑張るか!」
「そうだね。おじいさん、おばあさん、紅さん、月光ちゃん。今日はありがとうございました!」
「ケツいてぇ…ホント助かりました!今日の夜行きますからねー!」
3人組とはこれで別れることになる。
共に手を振って別れ、それぞれの行動を取る。
余談ではあるが、ちゃんと夜の販売会に3人組が現れた。
そして、奇跡的に3人とも勝利して、仲良く夕飯を食べることに成功する。
その後、臨時ではなく正式的にパーティーを組み、活躍していくが、それはまだ先の話…
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