18話 4日目の2
殆ど戦闘シーンとなっています。戦闘シーンを上手く書ける人が羨ましいです…
紅が先行していた2人と1匹に追いついたのは、ゴブリンの群れと3人のプレイヤーが戦闘している場所まであと100m程の場所だった。
ゴブリンの群れを見て、最悪の状況だと判断した。
「ホブゴブリンが1匹!あとゴブリンがいっぱい!!」
「頑張って助けないとね!」
「おばあさん遠距離から1発お願いします!あとおじいさんにエンチャント!」
「わかったわぁ。『ファイヤボール』『ファイヤエンチャント』!」
サクラが放った火球が、プレイヤーに襲い掛かっていたゴブリンの後頭部で爆ぜる。
火球が飛んできた方向に、ホブゴブリンが向いたのが分かった。
「だ、誰だか知らないけどありがとう!」
「お礼は後で良いので今はこれを切り抜けますよ!『ポイズンシュート』!」
紅が放った、淡く紫色に輝くナイフがホブゴブリンに掠り、後ろに居たゴブリンの腕に突き刺さる。
ホブゴブリンの動きが、少し鈍くなる。
「月光、行くよ!」
『はい!』
一行の中で最もAgiの高いフミと月光が合流。少し遅れて紅、サクラは走りながらも『ファイヤアロー』でゴブリンの頭を射抜く。
取り巻きのゴブリンたちが、ようやく乱入者に気付く。
仲間を殺された怒りだろうか、吠えながら5匹ほどがフミ達に突っ込んでくる。
「よっと!」
『ガウゥ!』
フミがゴブリンの頭を足蹴にして跳躍、月光はゴブリンの真ん中を全速力で突っ切る。
そして1人と1匹が反転する事で、5匹を包囲することに成功した。
「こっちをすぐに片付けるので持ちこたえてください!」
「わ、わかった!『パリィ』!」
「お願いしますね!!『乱れ突き』!」
あちらの方も、ゴブリンの攻撃を一人が弾き飛ばし、隙を付いて放たれた槍の連撃がゴブリンを仕留める。
状況としては、フミ達一行対ゴブリン5、プレイヤー3対ホブゴブリン1ゴブリン3となった。
『すぐに倒して合流しましょう!』
「そうだね!」
エンチャントにより炎を纏った刀で切りかかるフミ。
ゴブリンの1体が盾で受け止めるが、盾が燃え始め、その盾を放棄する。
別のゴブリンが棍棒で殴りかかるも、追いついた紅が横から蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたゴブリンは月光に首を噛み千切られ、光となって散る。
「『急所突き』!」
宣言する必要も無いがそう言い、フミが刀を突き出す。
ゴブリンの急所は人の急所と同じ場所…脳天、首、心臓の三箇所が急所として設定されている。
今回フミが狙ったのは心臓。盾を先ほど放棄したゴブリンが棍棒で防ごうとするが、間に合わず心臓に刃が突き刺さる。
燃える痛みと貫かれた痛みに絶叫しながらもゴブリンが倒れる。余りのリアルさに表情を曇らせる。
「『ファイヤソード』!」
杖の先端に炎の刃を生み出し、サクラも乱入する。
走ってきた勢いで杖を突き出す。ゴブリンが構えた粗末な盾を貫き、炎の刃がゴブリンの腕を焼く。
痛みに叫びながらも、ゴブリンが振るった棍棒がサクラの腕に当たる。
現実で同じ事をされたよりは小さいのだろうが、痛みを感じる。我慢しながら押し込んだ刃がゴブリンの肩に突き刺さる。
『おばあさん!』
月光が横から飛びかかり、鋭い爪で頭を引っ掻く。ゴブリンのHPが無くなり、倒れた。
『おばあさん、大丈夫?』
「大丈夫よ。あと2匹倒して、あっちの人達を助けないとね」
『そうですね!頑張ります!』
サクラの言葉に返事をしながら、月光が駆ける。
紅が毒状態にしたゴブリンを、あっち側のプレイヤーが倒したのがサクラには見えた。
現状、こっちにはゴブリンが2匹、あっちにはホブゴブリン1匹とゴブリン1匹となる。
あっちはもう1体、見ていない間に倒したようだ。
「サクラ!」
「フミちゃん、分かったわ!『ファイヤエンチャント』!」
名前を呼ぶだけで、何を求めているか大体分かる。
サクラはすぐにフミが求めている事が分かり、エンチャントをかけ直す。
このタイミングでエンチャントがかかる分かっていたのか、フミの斬撃が当たる寸前でエンチャントがかかり、ゴブリンを切り裂く。
凄いな、と思いながらも放った紅のナイフがゴブリンの額に刺さり、全てのゴブリンが倒れた。
「あっちにすぐ合流するよ!」
「1人HPがヤバイです!他の2人も結構減ってる!」
「えーっと、ポーションって投げても使えるわよね?」
「あ、そうですね!よいしょー!」
ポーションの使い方は幾つかある。
飲むのが一般的な方法だが、戦闘中はそんな余裕は無い。その為、体にかけて使うやり方もある。
そして、ビンごとぶつけて割る事で、ぶつかった相手を回復させる方法だ。
当てても割れないのでは?と思うかもしれないが、ゲームの仕様によって当てればちゃんと割れる為問題ない。
紅の投げたポーションは、HPが一番減っていたプレイヤーにぶつかり効果を発揮する。
飲むのに比べると効果は落ちるが、緊急の回復手段としては十分だ。
「HPポーション!?」
「今合流しますからねー!」
「よし、これなら…!」
「それ死亡フラグー!?」
HPが回復し、油断したのだろうか。槍を構えているプレイヤーがホブゴブリンに蹴り飛ばされる。
鳩尾を蹴られたようで、苦しそうに悶える。
「ジャン!!うわっ!?」
仲間が蹴り飛ばされた方に視線を向けたプレイヤーが、ゴブリンに叩かれる。
そこにホブゴブリンが追撃をしかけようと剣を両手で持ち上げ…
『させません!』
がら空きになった横腹に、月光が喰らい付く。
噛まれた痛みに怒り、左手を離して月光を殴る。
殴られた衝撃で地面に叩きつけられるが…
「『へヴィースマッシュ』!!」
斧を持っていたプレイヤーがその隙を逃さずスキルを決める。
横に振るわれた斧はホブゴブリンの腹に当たり、その威力で吹き飛ばす。
「『シールドバッシュ』!」
群れのリーダーであるホブゴブリンが吹き飛ばされた事に驚いていたゴブリンを、先程殴られた御返しだと言わんばかりに盾で殴り飛ばす。
仲良く2匹ともほぼ同じ位置に飛ばされ、地面を滑る。
「『ファイヤボール』!」
滑っている2匹が止まった瞬間を狙い、サクラが放った火球が炸裂!
ゴブリンが消えるが、ホブゴブリンがピクピクと震えながらもギリギリ生き延びる。
そこに、蹴り飛ばされていた槍使いのプレイヤーが駆け寄り…
「お返しだッ!」
槍を腹に突き立てる。
暫くもがき苦しんだ後、動かなくなり、光となって散った。
「…ふぅ。疲れたよ、私は」
「私も疲れたわぁ…月光ちゃんもお疲れ」
『…ゴブリン、齧っても美味しくないって本当でした…』
「私、走りまくったのでお腹空きましたぁ…」
「そうかそうか。お昼は美味しい物を食べようねぇ」
『そうですね!』
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