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13話  3日目の2

「えっと、ここで良いのかしら?すみませーん」


 サクラは今、他のプレイヤーから教えてもらった薬屋に入っている。HP、MP回復用のポーションから、一定時間ステータスアップなどのポーション、毒消しなどの状態異常回復アイテム、モンスターにぶつけて使う毒薬の類など、様々な薬を扱っている店だ。

 サクラ以外に誰も居なく、入り口から呼んでみる。すると、1人の女性が頭を掻きながら奥から出てきた。とんがり帽子にローブ、木の杖を持った、黒めな肌と金髪の美少女だ。ジト目でクールな印象を受ける。もっと明るい表情を浮かべれば可愛いのにな、とサクラは思う。


「…ふぁあ…ん、いらっしゃい。『リリムの薬屋』にようこそ。私が店主のリリム・スリプス…回復用のポーションがいる?それとも毒薬?」

「初めまして、サクラと言います。じつは、貴方にポーションの作り方を教えて貰いたくて来たんです」

「そう…ふーん。他の人なら無償で教えるかもしれないけど簡単な物しか教えてもらえない。私なら、結構難しいポーションまで作り方を教えられるわ。その分、物かお金を最初に貰うけど」


 サクラがこの店を選んだ理由は、難しいポーションの作り方も彼女なら知っているという話を、レベルの高いプレイヤーから聞いたからだ。あるパーティーの魔法使いから教えてもらったし、その人が作ったポーションも見せてもらったので信憑性は高い。


「お金だと、いくら位かかるのかしら?」

「…10万G。これ以上譲らないよ。こっちもこれで生きているんだから」

「物だと?」

「…私、美味しいものが大好き。稼ぎも料理を作る為の食材とか、外食で結構使う。だから、私が認める料理を持って来て、それの作り方を教えてくれたら良い」

「あら、ならこれどうぞ。私とフミちゃん…あ、私の夫と一緒に作った物だし、朝から食べるには重いかもしれませんが」



縞牛しまうしのハーブステーキ

完成度8

説明:アインズの北側に生息する縞牛の肉を丁寧に下処理し、数種類のハーブや塩、胡椒で味付けし、絶妙なタイミングで焼き上げた素晴らしい一品。強い縞牛の臭みがハーブで消され、筋きりもされて柔らかく食べやすくなっている。



「ん、今朝は6時から作業してて、何も食べてないから問題ない。それじゃあ早速頂きます」

「どうぞ召し上がれ」


 そう言うとカウンターに料理を載せ、椅子に座り食べ始めるリリム。サクラ以外の客が居ない状況だから誰も気にしていないが、今この薬屋ではとても美味しそうな匂いが漂っている。もちろん、ハーブステーキからだ。


「…!お、美味しい!これ、何のお肉!?」

「縞牛、って売っていたプレイヤーの人は言っていましたよ?」

「縞牛?あの、筋が多くてすっごく硬くて、匂いもきつくて食べようと思わないあの?」

「えぇ、でも安くて…筋きりを丁寧にして、数種類ハーブを混ぜ合わせてそれと塩、胡椒で味付け、あとはフミちゃんに焼いてもらったの」

「凄い…あの縞牛のお肉が、こんな…今までに食べてきたステーキの、どれよりも美味しい」

「そう言って貰えると嬉しいわ。フミちゃんと頑張って作った料理が、他人に食べて貰って褒めてもらえるのはとっても嬉しい」

「…料理の腕では完敗…1つ、提案がある」


 全て綺麗に食べ終えたリリムがそう言う。最初のジト目でクールな印象は何処へ行ったのか、美味しいものを食べてニコニコしており、とても可愛い。あとは服を変えれば誰もが振り返る様な美少女になるだろう、とサクラは予想する。


「提案?」

「ん、私は貴方に薬の作り方を教える。他の人にも教えてない秘薬も、幾つか教えてあげる。だから…料理を教えて欲しい。私は貴方の調合の先生で料理の弟子、貴方は私の料理の先生で調合の弟子」

「ん~…多分良いと思うわぁ。後でフミちゃん達に連絡を入れてからで良いかしら?」

「それでも構わない…これだけ美味しい料理、お店でも滅多に出ないレベル。売れば1000G、いや、1500Gでも誰も文句を言わないレベルだと思う」

「原材料費と手間賃合わせても300Gで十分だと思うんだけれど…」

「縞牛の肉は主にペット用として安く売られているお肉で1つ50G程度。塩、胡椒、ハーブは1瓶100Gと結構高価。さらに下処理等…300Gは安すぎる。500Gも駄目、それでこの美味しさだと注文殺到で追いつかなくなると思う。とすれば、1000G位は出して貰っても良いと思う」

「そうかしら…今度料理を教えるときにでもフミちゃん達と一緒に相談しない?あと、段々話が逸れてるけど薬の作り方、教えてね?」

「忘れてないから大丈夫。教えるからこっちに来て。今日は閉店、貴方に教えることに専念する」

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