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9話  2日目の2

東の森?あぁ、あの森か。

あそこには俺達も最初に行ったぜ、コボルトとかスライムには飽きたからな。

でもよ、あそこは絶対、初見なら死ぬぜ。ある事を守らなかったらな。

あそこに入ったら、疑え。全てを疑え。

あそこにあるもの全てを疑わなかったら、絶対死ぬ。

あの森を考えた運営の人、鬼畜すぎるぜ…    最前線のある攻略組メンバーがスレに書いた一言より



――――――――――――



東の森に入ったフミ達3人は、早速『初心者殺しの森』と言われるこの森の名物に襲われていた。


「木に敵が張り付いているとはね!」

「見分けが付きにくいわねぇこの敵!」

「数が多いし地味に硬いし、厄介ですね!」


カメムシの様なその敵は、正面が木の皮のような模様で、実際に凸凹しており、ピッタリくっ付いていて近づいても分かりにくく、通り過ぎようとした瞬間飛び掛ってくる厄介な敵だった。


バークバグ:Lv1


硬い、多い、キモいの三拍子揃った敵で、四方八方から襲い掛かってくる。

主な攻撃手段は爪と噛み付き、毒ガスである。HPが少ないことと、攻撃が弱いのが救いか。

フミはドスで飛び回るバークバグを斬ろうとするが、思ったより早く苦戦している。

紅も同様だが、投げナイフでチマチマと落とし、落ちた奴からドンドンナイフで止めを刺している。

唯一普通に戦えているのはサクラで、大活躍していた。


「ファイヤボール!ファイヤアロー!ああもう、早く広範囲魔法を覚えたいわねぇ!」


ほんの少しだけホーミング性能があることが判明した遠距離魔法で、ドンドン敵を灰にしていく。

既にサクラだけで10匹は倒しており、既にレベルが3になっている。

フミもさっき3に上がり、紅は4になっていた。

経験値的には美味しいが、面倒臭い相手だった。


「素材が一杯手に入ってお金持ちに近づくと考えるしかないね、これは!」

「スライム核スープでガッポリ稼いだのに、まだ稼ぐ気なんですかー!?」

「鍛冶にも手を出したいからね、やっぱ鉄などを買うにはお金がたくさんあった方がいいと思うんだよ!」

「私も調薬してみたいから機材とか買うのにお金が必要だと思うの!」

「盗人には何故か裁縫があるから布や革で服や革鎧なら作れますー!」

「「「  生きて素材持ち帰ろう!  」」」


こうしたやり取りで何とかやる気を持たせながら、虫の大群と戦っていた。

後に、この光景を見ていたとある初心者がスレにこう書く。

『初心者殺しの森の名物『虫の大群』を凌ぎ切った3人組が居る』と。

3人で100を超えるバークバグを倒した事に、スレを見た全てのプレイヤーが驚愕することになるのは、ゲーム内時間で当日22:00の事である。



――――――――――――



「よ、漸く終わった…何体倒したんですかね?」

「多分100は超えているはずだけど…」

「MPポーションが無くなっちゃったわぁ…フミちゃん、私に頂戴?」

「最初に配られていた奴だね?はい」

「いつの間にかレベルが上がってました!Lv5です!」

「私達はどうやら4になったようだねぇ。でも、サクラの方が経験値の入りはいいかな」

「あと半分で5になるわねぇ」


座り込んで会話する3人。疲れて休憩中である。

素材をガッポリ入手したものの、最初に配給されたMP回復用のポーション3本をサクラが消費してしまったのは痛手だろう。

回復薬はこのゲームでは高いのだ。HP用で一本300G、MP用は500Gもする。

レベルアップで全快するとはいえ、100匹連戦ではMPが切れるときがあったのだ。

それでも凌ぎ切れたのは、サクラの炎が飛び回る虫たちにどんどん燃え移り、ダメージが蓄積していったのも理由になっただろう。

職業がランダムに決まるこのゲームで、この森に来るパーティーの中に魔法使いが居たのは1割にも満たない。

その中でも火の魔法を好んで使っていたのはサクラしか居ない。


「素材一杯ねぇ…売ったら幾らかしら?」


樹皮虫の甲殻:レア度1

説明:バークバグの体を覆う甲殻。樹皮のような見た目だが軽くて硬く、篭手や臑当など守る範囲が狭い防具の素材として扱われる事が多い。需要は余り多くない為安く売買されている。


「安く売買されていると書いてるから、値段は微妙ですね~」

「うーん、残念…まぁ、篭手とかに使えるのなら私の防具にでも使えるかな?」

「多分大丈夫じゃないかしら?街に行ったら聞いて見ましょうか」

「さてと、休憩もしましたし奥に行きましょう!今スレに書き込んでいたんですけど、初見であの大群を凌ぎ切ったのは私達が初かもしれないそうなんです!もしかしたら初見突破者専用のイベントとかあるかもしれませんよ!!」

「それは楽しみだねぇ。なにか面白いイベントがあると良いんだけどね」


立ち上がり急かす紅の意見に同意しつつ、フミが立ち上がる。

サクラが立ち上がるのを待って、既に奥に向かって歩いている紅を追いかけた。



――――――――――――



「で、奥に来たんですけど…あれ、どうしましょう」

「どうしようかねぇ…罠、なのかな?」

「どうなのかしら?」


3人は今、とても悩んでいる。

100m程先の少し開けた場所のど真ん中に…


『くぅ~ん…』


トラバサミに掛かった小さな狼が居たのだ。

HPバーが表示されており、3分の1しか残っていない。

今もジリジリと減っており、このままでは死んでしまうかもしれない。


「…助けようか。私のHPポーションを使うよ」

「え、助けるんですか!?罠だったら…」

「その時はその時さ。あんな小さなもふもふとした生き物を放って置くのは嫌だからね」

「あらあら、フミちゃんもふもふが大好きだからねぇ…紅さん、諦めましょう」

「えぇぇ…まぁ、良いんですけどね」


辺りを確認してから狼の足についているトラバサミを丁寧に外し、ポーションを足にかける。

頭を撫でながら弁当代わりに持ってきた鴨サンドを食べさせる。

ポーションをかけた事でHPが回復し、サンドウィッチでお腹も満たされた子狼は完全にフミに懐いたようで…


『わん!わぅん!』

「ははは、元気になったようでなによりだ!」


子狼がフミの周りをグルグル回ってワンワン吠えている。


「あらあら、懐かれちゃったわねぇ。モンスターっぽい狼だけど、なんなのかしら?」

「おっと、まだ見ていなかったね、えっと…」


ウルフロード:Lv1  状態:懐き(フミ)

説明:狼系モンスターの最上位種族の子供。貴方に懐いており、『テイマー』の主職業であれば仲間にする事が可能です。


何か、見てはいけない物を見てしまった気がした。

他の二人もこの子狼の説明を見てしまったようで、固まっている。


「…狼の最上位種族?」

「あのー、ウルフロードって、『ALICE ONLINE2』での話ですが最後のアップデートで追加された面の敵だったはずなんですけど…」

「『テイマー』じゃないから仲間に出来ないわねぇ…残念ねぇ」

「…逃がしてあげよう。御免ね、仲間にしてあげたいけど、出来ないんだ」

『わぅ?』


首を傾げた子狼。その場で動きそうに無いので、抱きかかえて森の奥まで行こうか悩んだその時だった。

バキバキと音が聞こえたので、その方向に視線を移した3人。

それを見て、固まった。


トラック程の漆黒の狼が、木々を薙ぎ倒しながらこっちに走ってきていた。

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