1話 1日目の1
今、世界で大人気のゲーム、『ALICE ONLINE』シリーズ。
VRMMOと言う、日本がリードしているこのゲームジャンルで、世界で最も最初に生まれたゲームの系譜である。
その最新作、『ALICE ONLINE3』が、先日、発売された。
ポスターの宣伝では、こう書かれている。
1000を超える職業!100000を超えるスキル!
独自のAIにより、殆ど人間と変わらない行動をとるNPC達!
VRMMOの王道、ALICE ONLINE最新作が遂に登場!
当社オリジナルの技術により、12分でゲーム内で1日過ごせる!
さあ、貴方だけのキャラクターで、貴方だけのゲームライフを!
まぁ、この様な内容である。
なぜこの話をしているのか、と言うと…
「大当たり!お二人の景品はなんと!先日発売された話題の新作、『ALICE ONLINE3』とその専用機材とのセットです!!」
ガラガラクジで、当たってしまったのだ。
――――――――――――
男の名前は櫻田章雄、78歳である。
妻の名前は櫻田桜、同い年。
二人とも結構なゲーマーで、ゲーム雑誌にも何度か登場している。
で、ヤ○ダ電機に数日前に壊れた電子レンジの代わりを買いに行き、買ったら一回ガラガラクジを回してくれと言われて回したら当たってしまった、ということだ。
VRMMOと言うジャンルは、よく分からないし専用機材があるので面倒だったので避けていたが、その機材も一緒にくれる、となればやる気が出てきた。
軽く説明書を読み、一番欲しい情報だけ纏めると…
1:最大ログイン時間は6時間、ゲーム内時間で一ヶ月(30日)。
2:キャラクター作成は自由に出来る。実年齢に合わせた見た目ではなくても可。
3:最初に決められる『主職業』はその系統以外に変えられないが、『副職業』やスキルは変えられる。
とりあえず、2が櫻田夫婦にとっては重要なものだった。
VRMMOで若い体を作れば、40を過ぎてからは体が追いつかなく出来なかった事も可能になるのである。
「楽しそうだなぁ、桜」
「そうねぇフミちゃん。ゆっくり冒険したり、物を作ったり、若い人たちと会話したり…じゃあ、始めましょうか」
「そうだね」
VRMMO専用機材『ダイバーギア』。
名前の由来は、ゲーム世界へ入る→潜る→ダイブと、ヘッドギアのような見た目からである。
それを頭に装着し、ベッドの上に寝転がる。
ダイバーギアの右側に付いているスイッチを押して5秒、意識はゲーム世界へと潜り込んだ。
――――――――――――
章雄の意識は、ゲーム用の仮想世界に入る前…キャラクターメイキング用の世界へと入る。
『これより、キャラクターメイキングを開始します』
目の前に青緑色の板…ウィンドウが開き、そう浮かび上がる。
『まず、貴方の本名、実年齢、性別、出身地を記入してください』
目の前のウィンドウに空欄が出来、タッチペンのようなものが現れる。
面倒なので、素直に書く。
櫻田章雄/78/男/北海道
『次に、キャラクター名を記入してください』
キャラクター名は、分かりやすいものにする。
Name:フミ
これで良い。フミ、とは桜が付けてくれた章雄のあだ名である。
『では、キャラクターの容姿を決めます。髪形や髪の色以外は今後変更出来ないので、よく考えて決めて下さい』
ウィンドウには、黒い髪の男性が映っている。これが基本形なのだろう。
取りあえず、ダイバーギアに差し込んでいたメモリーカードから自分の写真データを引っ張り出し、18~20歳の頃の写真を数枚選び、それを元にキャラクターを作る。
出来たキャラクターの髪形を、基本的にツンツンとさせ、後ろだけ長くし、それを黒い紐で纏める。
髪の色を黒から白に変え、瞳の色も黒から緋色に変える。
また、身長も少し伸ばし、175センチ程にする。
あとは肌を白っぽくして完成である。
『以上でキャラクターの容姿を決定します。次は主職業を決めます。主職業はガラガラクジを回してもらって決めて貰います』
またガラガラクジか…そう思いながら、空中に浮かんでいるガラガラクジを回す。
『貴方の主職業は『足軽』です。『足軽』は『侍』系統の最初の職業です』
侍か…武器は刀と槍と弓といった辺りだろうな。
『『足軽』とセットの『副職業』は、『鍛冶師』『両手持ち』『妖魔狩り』の3つです』
鍛冶師は、おそらくそのままだろう。両手持ちと妖魔狩りについては詳しい効果は分からない。
しかし、妖魔狩りはなんとなく分かる。『○○キラー』と同じで、ある種の敵への攻撃の威力が上がる、とかだろう。
『以上でキャラクターメイキングを終了します。ようこそ『ALICE ONLINE3』の世界へ!』