第七章 「愛と勇気?」
数分後。
「じゃあ本題に入ろうか…」
哲はまじめな顔をする。
でも、私の隣には哲の弟君の椿君が私の腕を引っ張りニコニコと笑っている。
「おぃ!椿!!雪とこれから大事な話をするんだよ。邪魔すんなょ…。」
「俺、別に邪魔した覚えなんかないし、俺はお姉ちゃんを兄貴から守るんだよ!」
椿くんはさっきの時と口調が全然変わってしまい、まるっきり男の子だ。
あれから椿君は、哲と兄弟喧嘩をした後、
自分の部屋で着替えてくると言ってさっさと走って数十秒で帰ってきた。
なんでそんなに早いのかと椿君に聞いてみると、
「え?お姉ちゃんを守るために急いで来たんだよ!」
と、満面な笑顔で言う。
それにしても、私を哲から守るって…椿君も面白いなぁー。
「椿ぃー…」
「何だよ!俺がいちゃ悪いのかょ!!」
椿君は、私の腕を引っ張り、哲を威嚇する。
哲は呆れて私の顔を見る。私は別に他の人が聞いてても構わないんだけどな。
でも、哲がちょっと嫌みたい?私が言うしかないのかな…。
「ねぇ椿君?私と哲、2人きりで話さなきゃいけない大事なことがあるの…
だから少しだけ母様の所にいって遊んできて…ね?」
そう言うと椿君はしょうがないなぁと言って部屋を後にした。
「ありがとう雪…いつもは俺の言う事聞くんだけど、
雪を気に入ったからか…俺警戒されてるかな。」
と、哲は苦笑いをする。
「ごめんね。」
「別に雪が謝る必要はないから。」
哲は私に笑顔を向ける。私も笑顔を返すといつものように頭を撫でられた。
「じゃあ、話の続きをしようか。」
「うん。」
私は、いままで起きたことを哲に話した。そして今の私の気持ちも告げる。
「ほぉ…と言う事はすれ違いになってたみたいだな。俺たちは」
「そうなの?」
もちろん私は哲のことが好きだと告げた。哲は色々考えた故に、微笑んだ。
「俺はお前と喧嘩する前、お前に言ったよな?俺がここに来たのはお前を支援するためだって。」
「う、うん…」
「それは嘘だょ。前にも言った通り俺は…雪、お前を守るために来た。
…あと、お前の事が好きだったから来たと言う理由もあるけど。」
哲は、少し照れくさそうに下を向きながら言った。
「俺はあの時言っただろう?お前の事を愛してるって…」
「そ、そうだね…。」
私にも恥ずかしいのが伝染して私もとっさに顔を赤く染める。
「こんな俺に思われても嬉しくないかなと思ったんだ。
だから突き放してしまった。それでお前を傷つけたな…ごめん。」
「大丈夫だょ。今はもぉ嬉しいよ…こんな気持ちが通じ合えるなんて…」
私は哲の頭を撫でる。私も哲の頭を撫でるのは日課になってきたようだ。
「そうだな。」
私は天音のことを思い出す。傷つけてしまっただろうか。私が天音を裏切ったから。
「自分が悪い事をしたって思ってるだろ?顔に書いてあるぞ」
「えっ!?」
「そんなに自分を責めるな。俺のせいだってあるんだから、お前一人が悪いわけじゃない。」
哲は本当にいつまでも優しい人だ。そう、私はそんな哲を好きになった。
いつまでの善人な哲が…好きだ。
「ありがとう。」
私は少し微笑む。すると哲も私を見て笑顔を見せる。
でも私はすぐ不安になる。
「どうしよう…」
「一緒に謝りに行こう?」
「えっ?」
私は顔を見上げ哲を見る。
「嘘をついてごめんって…自分の気持ちに嘘をついてたって。」
「う、うん…そうだよね!ちゃんと言わなくちゃ…」
「雪はそういうところは律儀と言うかなんと言うか…いい奴って言うのかな…」
「ん?そうかな??」
私たちは天音に謝罪をするために天音の家に向かう事にした。
哲の家を出ようとしたとき、
「お姉ちゃん…」
椿君が私の腕を掴んできた。
すごく心配そうな顔をして…
「どうしたの?」
「なんか…心配で、嫌な予感がして。」
「心配しなくても大丈夫だょ。また、椿君に会いに行くからね」
私は椿君の頭を撫で哲と一緒に家を後にした。
天音の家にはヘリで向かう事になり、咲が操縦してくれることになった。
「わざわざありがとうございます。」
「いゃ、心配いらないょ。哲の彼女なんだから。」
「え!あ…はぃ」
なに!?私と哲って恋人になったの!!?
でも、ちゃんとした告白はなかった…ような?
両思いとは確信しましたけど、正確に付き合ってとは言ってもないし、言われてないような気がする。
いつの間にか色々考えているともう天音の家についていた。さすがヘリだ…。
「行こうか…」
哲が真剣な顔をし私の腕を引っ張る。
「あ、うん…咲さん、ありがとうございます!」
「うん。行ってらっしゃい」
私は咲さんに笑顔を向け、その後に哲と一緒に天音の家の玄関に向かう。
「雪…これで終わるかもしれない。」
「え?」
「…いゃ、なんでもない」
私は哲が言った一言が気になったが、今はそれどころではないかもしれない。
行こう…天音が待ってるとこへ…。
・・・to be continued