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第五章 「それでも私は裏切らない…はず。」



私は意識をハッとさせるといつの間にか目の前には天音の親がいた。

私は哲とケンカした後のことを思い出せず、動揺していた。


「君が風林寺 雪さんか。大きくなって…それにとても綺麗になられた…」

この人は天音の父。


私は、うまく口が回らずお辞儀しかできなかった。


「あなたが天音の妻になってくれるなんて嬉しいわ」

この人が母…。2人とも口では笑っていても、目が冷たい…。


「でしょ!雪が僕のお嫁さん…素敵だよね。」

天音の親たちは笑顔でうなずく。天音はとても上機嫌だ…。


その後私は天音が親と話している間外に出て気持ちを落ち着かせたいと天音に言い

私は天音たちから離れ庭に出た。

そして自分のしたことを頭の中で振り返った。



本当にこれでよかったのか。と…



なぜ私はあの時哲から逃げたのか…。哲は大切でずっと…

ずっと哲に傍に居て欲しかった。


でもこの気持ちは?ボディーガードとして?ボディーガードとして傍に居て欲しかった?


…違う。より哲に私を知ってほしくて、どんな人よりも哲の頭の中で私を大事な存在としておいてほしかった。

それに私も…。



「ゆーき?」

私の耳に息を吹きかけてきた天音。私はビクッと一瞬肩を上げて一歩下がる。

「あのね、父さんと母さんはちゃんと僕たちの事認めてくれたよ。

結婚も早くしたいって言ったら、早くしておくように考えておくって言ってたよ。」

「そぅ。」

私は天音に笑顔を向ける。すると天音もとても喜んでるようだ。

結婚…なぜ天音は結婚することにこだわるのだろう。



「私の親にも…」

私は身体を震わせる。

すると天音はそっと私を抱きしめる。

「そうだね、挨拶しなきゃ。」

そういって私の手をつかむ。

車に乗り私の家に向かう。


大体、私の家にはほとんど家族はいない。

それぞれ忙しい身の親たちだったが、

家につくと父の部屋の電気がついている事に気づいた。


なんてめずらしいのだろうか。

大体私が居る時はいないのに…。


私は父の部屋の前に行きノックをする。

「父様、お話したいことがあるのですが…」

と言うとすぐに返答がきた。


「入りなさい。」

隣に天音を連れて中に入る。

父の部屋には父だけではなく母もいた。


「お久しぶりです、雪さんのお父様とお母様。僕は昔お世話になっていた風林寺 天音です。」


「おぉ、天音君か…。とても立派になって…。」

「天音君かぁー。昔はあんなに小さくて可愛かったのに本当に大きくなったわねー…」


父も母もとても笑顔だ。私はこんな笑顔見たことあっただろうか…。

親と顔合わせしたのも久しいのに…。



「で、何の用なんだね?」

父は問いかける。

私が言おうとすると天音が一歩前に出て答える。


「この度は雪さんとの交際の許可をもらうために来ました。」


天音の態度も言葉遣いも完璧だった。

いままで甘やかされたりしても、天音はまじめだったのかもしれない…。


「ほぉ…交際か。交際して今どのくらいなのだ?」

「今日お付き合いを始めました。あと、近々結婚したいとも考えております」

「け…結婚だと!…今日交際して近々結婚というのはどうかと思うのだが…。」


父と天音が話をしている途中、母が私の手を掴み父の隣の部屋へと連れて行かれた。

母はいったい何を言うおつもりなのだろうか…。


「ねぇ、雪…雪は本当に天音くんと結婚する気なの?」

母が心配そうに聞いてきた。

「そ、そうですわ。天音と…結婚します。」

私は心なしでいうと母は言う。


「雪は哲くんのことが好きなのかと思っていたわ。」

私はハッとする。哲を…好き?そんなこと…

「私は哲のこと…。」

「好きなんじゃないの?私時々見てるのよ?雪と哲くんが一緒に居るところ。

私時々この家に帰ってきていたから。」


「そうだったんだ…」

「あの時の雪、とても楽しく笑っていたわ…。雪のあんな笑顔初めて見た気がしたわ。」

母は私に優しい笑みを浮かべる、私は除々に視界がぼやけてきた。


「どうしたの?大丈夫、雪?」

母は私の頭を撫で心配そうに見た。

私は…


「私は、天音を裏切る事はできない…わ」

そう言って涙を拭った。


「そう言って、雪は自分の気持ちに嘘をつくのね?」

「え…。」


母は真剣な顔をし、私を見る。


「私は!…行かなきゃ。」

私は部屋を後にした。そして父と天音のところに向かう。



もし、哲が好きだとしても、天音と一緒にいると約束した。

天音は1人ぼっちだったのに、それを裏切る事は…私にはできない。


でも…この胸の痛みを放って置いていいのだろうか…

私はこのままで…本当にいいのだろうか。


…あれ?また涙が…止まらない。


「俺がずっと傍で守ってやる!」


あの言葉が忘れられない。

本当は…あの言葉が事実であってほしい。

あの言葉が嘘じゃないことを…。


「私は…。」

父と天音がいる部屋に向かう途中私の隣にある窓を見た。

そこにはありえない光景がうつっていた。


「雪!!」

そこにはヘリからはしごがぶら下がっており、

そこには…哲がいた。



「申し訳ないけど窓を割らせてもらうよ。」

その後私に後ろに下がってと言い、パリンッと大きな音を出しながら可憐に入ってくる哲。


「さ…とし。」

「やっと会えた。ごめんな…雪を傷つけまいと言ったはずなのに、結局雪を傷つけちまった。」

哲は私が泣いていることに気づき哲は自分の指で私の涙をすくうように、拭ってくれた。

「窓…」

「あ、ごめん。これ後で弁償するから。」

哲が苦笑いをし割れた窓を見る。

そしてボソッと呟いた。


「今の俺みたい…」


哲は空しそうに笑っていた。私は何か変な感情が出てくるといきなり哲の手を握る。

数秒後自分が何をしたのか自覚し、突然顔が赤く染まる。


「なに?心配してくれてんの?」

「しん…ぱい。してない…こともない。」

私は下を向きつつ、目線は哲に向ける。


「何その微妙な反応、ってか上目遣いとかやめっ!」

「えっ?」

哲は私の顔を見てすぐ逸らす。私変なことしたのだろうか。

哲の耳は赤くなっていたので照れたのだと気づく。

一息ついた後哲は私の方を振り向き私の両手を握った。

そして言うのだった。


「こんな感情ボディーガードの俺が許されることじゃない。でも、もう遅いんだ。

この感情をお前に伝えることなんかもっての外だ。でももぉ言わずにはいられない。」


哲は私の目をずっと見る。いつか哲の目に吸い込まれそうな綺麗な瞳をしている。

そして哲は続けて言った。満面の笑みを浮かべながら。



「俺は雪を愛している。」


その瞬間は私にとっては最高の幸福だった。


でも、あの最高の瞬間とは真逆に、最低な地獄を味わう事を、その時の私は知るよしもなかった。




・・・to be continued

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