第四章 「現実逃避」
「んー…」
ふと目が覚めて、窓の外を見ると明るく照らされてる太陽があり、朝だと気づく。
私はいつの間にか寝てしまっていた。
ゆっくり身体を起こすと隣からうなり声がしたので目を向ける。
「うわぁ!」
自分の口をおさえて声を出さないようにする。
そう、哲がベッドにふせて熟睡していた。
ちゃんと私の傍にずっといてくれたんだ…
「ありがとう」
私はそう小さく呟いて軽く哲の頭を撫でる。
「んー…。…雪ー…」
「ふぇ!?」
いきなり私の名前を呼ぶ哲だったが寝言を発していたようだ。
突然でびっくりしたせいで変な声でちゃったょ…。
哲はとてもかわいらしい寝顔だ。スヤスヤと寝息もたててとても可愛い。
寝ている時だとこんな人がボディーガードとは…誰も思わないだろう。
なにか遠くからドドド…と足音が聞こえる。
大体予想はついていたが私の部屋の扉で思い切り開けバタンッと大きな音を出した。
「妹よ!聞いてくれ大ニュースだ!!」
「シー!」
いきなり大声で叫ぶ兄を私は注意して哲を指差す。
すると近づいてきて哲を覗き込む。
「こ、こやつ!妹の部屋で何をしておるのだ!!」
「お兄様うるさいわ、少しは黙ると言う言葉を学んでくださらない?」
私は笑顔で毒舌を吐く。すると…
「んー…うるさいなぁー。」と哲は身体を起こし頭を?く。
「お兄様!!」
私は兄のせいで哲が起きたのよ!と言わんばかりのオーラを発すると兄はすまない。謝る。
哲はあくびをして立った。
「雪、そんな起こんなくても大丈夫だよ。俺十分寝たから。」そういって私の頭を撫でる。
私もベッドから降りて兄に喋りかける。
「お兄様、大ニュースとさっき言っていましたけれど、なんでしたの?」
私がそういうと兄は…
「おぉ、聞いてくれ。天音とやらに注意してきたのだ。妹に近づくなと…」
「そしたらどう反応していましたの?」
兄は私に輝いた目で私の手を握る。
「『僕お兄様の剣術が素晴らしくていつも見ていました。僕は雪さんが好きです。
だから僕、お兄様に認められるようにたくさんの剣術を学んでいきたいを思っています。
なのでどうか雪さんと僕のお付き合いに許可をくださらないでしょうか。』だと言っていた。
天音とやらは妹にふさわしいんだと思うのだが」
兄はニヤニヤ気味の悪い笑顔を向け天音のことを認めたようだった。
なんて騙されやすい兄なのだろうか…。
「俺だって真のことすごいと思うぞ、尊敬するよ…いろんな意味で」
哲は兄に向けて笑顔を向ける。多分アレは…嫌味かな。
が…
「貴様に尊敬されても嬉しくないわ!」
と、どなりだす。哲の言った意味きっと理解していないだろうと思う。
「哲、学校行こう?」
私は哲の腕を引っ張り兄から離れようとする。…が、
「妹よー。早く相手を決めるのだぞ」
と、まじめな物言いで言う兄。私はその言葉を無視するかのようにスルーした。
その後私はお風呂に入り、学校の支度をし哲と学校に向かう。
その途中で私は哲と兄とのことを話した。
哲が兄の事どう思ってるか知りたかったから。
「哲…哲はお兄様の事どう思ってるの?」
「ん?どうって言われてもなー。」
哲ははぐらかすように首を傾げそっぽを向く。
「…結局哲は何がしたいの?」
私は下を向きながら言う。本当のことを知りたかったから。
「…。俺は、雪を…」
哲は口ずさんで口調を変える。
「ゆ、雪に良い旦那ができるように支援しに来たのさ。」
私が顔を上げて哲のほうをみる。哲はニコニコ笑っていた。
「し、支援…。」
「雪に将来の旦那が見つかれば俺はお前のボディーガードをやめる。」
え?やめる?ボディーガードを?
「ずっと…言ったじゃ…」
「え?何て?」
「ずっと傍で守ってくれるって言ったじゃない!また嘘つくの!?…もぉいい。さよなら。」
私は哲の前で涙をこらえて学校に向かって走った。
この胸が張り裂けそうな気持ちは何?こんな気持ち哲にばれたくないわ。
その後私は走り続けて学校につく、そして靴を履き替え教室に向かう。
教室に行く前にトイレに向かい、自分の顔を鏡で見る。
涙で顔がぐちゃぐちゃ。こんな顔誰にも見せる事なんかできないわ。
そう思い私は何度も顔を洗い、ポケットに入っていたハンカチを出し、顔を拭く。
…皆私を裏切るのね。
そう思った瞬間頭の中で声が流れる。
「僕は君を裏切らないよ。だからおいで僕の元に。」
この声は天音…。そうえば昨日もこんなことがあったような。
テレパシー?何がしたいの…。
それから私は教室に入る。すると…
「雪!!」
哲は席から勢いよく立ち上がり私に駆け寄ろうとする。私は怖くてその場から逃げる。
哲の近くにいたくない。傍にいったら泣いてしまうわ。
走って逃げていると後ろから哲がおいかけてくる。
私はこんな走った事が久しぶりのせいで息がとても苦しかった。
息が切れてきて倒れそうになった瞬間…
「おいで。」と私の腕を引っ張り階段の下の隙間に隠れる。
とても息が苦しくて、呼吸を整えた後、後ろを見た。
するとそこには天音がいた。
「あ、天音…」
哲が通り過ぎていった。私が立ち上がろうとすると、
「まって」とまた引っ張られバランスを崩し天音の胸の中に飛び込む。
そして腕をまわされ覆われた状態になる。
「僕は雪の傍にいたいのに、雪はあいつのほうがいいの?」
とさっき哲が走っていった方向をさす。
「ちがっ!…」
「違うよね。だって雪、あいつから逃げてたもんね。」
天音はニッコリ笑う。…天音。淋しい人。
私が傍にいてあげなくてはいけないの?彼が幸せになるには私が必要?
だったら…
「じゃあ、天音の傍にいるよ。」
私は逃げることにした。哲から…離れる事にした。
「本当!?」
天音は驚き抱きしめていた腕を解き次は私の肩にテをおいて少し揺する。
「本当だよ。」
「や、やったぁ!」
天音はとても喜んで再び私を抱きしめた。私は天音の腰に手をまわす。
「なに…やってんの?」
私は声のする方向へ向く、そこには悲しい顔をした哲がいた。
私は心臓の鼓動が一気に早くなっていった。
「なにって?恋人同士がイチャついたらいけないわけ?」
哲はその言葉を聞いたとき驚いた顔をし私の腕をつかもうとする。
「ちょっ、雪になにするの!?」
「ちょっと来い!!」
哲は力強く私の腕を引っ張る。私はとても痛みを感じた。
…哲から逃げなきゃ。
こんな気持ちが湧くととっさに口が開いた。
「私!天音の傍にいるから…だから離して下さる?あなたとはこれでお別れよ。」
と言って哲の腕を振り払う。すると後ろから天音が抱きついてきた。
「君はもう用済みなんだよ。雪にもぉボディーガードなんて必要ない。」
なんでボディーガードの事知ってるんだろう。
…あぁ、兄がベラベラ勝手にしゃべったのか。
それから私と天音は授業を受けず天音の家に行く事にした。
天音は早く結婚したいそうで…私は何も言わなかった。
・・・to be continued