第一章 「お嬢様とボディーガード」
私の目の前に差し出されたものは…
「結婚してほしい」
婚約指輪だった。
私と彼は付き合っていない。
お見合いで会っただけ…。
こういう人はいくらでもいる。
だから、気軽にいう人は嫌いだ。
私はもっとお互いの気持ちが同じで幸せになれる状況で結婚したい。
「お断りします。」
もちろん私は断った。
なぜ好きでもない人と結婚しなきゃいけないの。
こういう日々が毎日のように続く。
そして、それを変える日がやってくる。
「雪、この人は君と同じ歳で同じ高校に通う事になる哲くんだよ」
「どうも。」
彼は他の人と違って…派手?チャライ?不良?
耳にピアスをつけネックレス指輪は当たり前
髪は茶色でいかにもまじめに見えない。
「こんにちは。」
私はおどおどしていると、
「俺のこと…怖い?」
「え!?そんなことは…」
ただ…今までの人と違うから。
「んー、まぁ、大丈夫だょ。心配すんな。」
それにしてもこんな人が私の…婚約相手?
「あの…あなたは?」
「ん?俺はこれから君のボディーガードなのだ!」
は?…へ?
ボ、ボディーガード??
あの…SPみたいな人のことかしら?
私に…ボディーガードって…なんで??
「お父様、なぜ私にボディーガードが必要なのです?」
「私はお前が心配なんだ。お前は誰に狙われてもおかしくない。
だからボディーガードを頼んだのだ。」
私が金持ちの娘だから?
皆金持ち目当てだから?
皆お金目当てで近づくの…。
この人も…
私のお金をもらうために仕方なくボディーガードするんでしょうね。
「私にボディーガードなどいりません。」
私はリビングから自室に戻る。
自室に戻った私は自分のベッドに寝転がる。
「はぁー…」
自分が金持ちの家に生まれたこと…本当は嫌で仕方ない。
金持ちのお嬢様じゃなくて、普通の女の子がよかった。
コンコン…
ノックの音だ。誰だろう…。
「誰?」
私は冷たい口調で喋る。
「雪、大丈夫?」
この声はボディーガードだ。
哲…だったかな?
同じ高校の…さと…し?
さとし?どこかで聞いたこと…。
「ゆきー!おーい!!」
哲は大声で叫んでいる。
うるさいうるさい!
…もぉー…。
私は自室のドアを開けた。
このドアは押すドアだから
ドアをおもいきり押すと、
ドンッ!
「っー!!いってーよ!」
哲の顔面に当たり痛いみたいで
目から涙を出している。
そんなに、痛かったのかな…。
「ご、ごめんなさい。」
私はお辞儀をして謝る。
哲は困った顔をして
私の頭を撫でる。
「大丈夫だよ、雪…あのさ」
私は頭を撫でられたことに驚き
手を叩いた。
「!…どうした?」
哲は唖然としていた。
私は哲の手をみて、
昔もそんなことがあった気がして考えてみた。
「雪、どうかした?」
哲は私の顔を覗き込む
そうえば苗字!苗字を聞けばわかるかもしれない
「あの…」
「ん?」
「苗字ってなんですか?」
「え?苗字?」
不思議そうな顔をしてる。
「日比野だけど?」
日比野?…
昔たくさん遊び相手になってくれた家族。
見た目は怖そうだったけど本当は優しくて…
その家族の人たちが大好きだった。
私が5歳くらいの時かな…
ずっと私の傍にいてくれて、
遊んでくれた人がいた気がする。
でも、6歳の私の誕生日の時、
彼が引っ越すことになり、
彼は私の前から姿を消した。
・・・
「おれがしょーらいゆきのことまもってやる!ぜったいだ!!」
・・・
そんな約束をした気がする。
まさか!?この人が…?
「どうした?」
「昔…どこかでお会いした…かしら?」
私は彼の目をみると、彼は優しく微笑んだ。
「やっと思い出した?雪気づくの遅すぎ。」
哲は私の頭をコツンっと軽くたたく。
「ごめんなさい。私…ずっと家に引きこもってずっと外に出なかったから。」
そう。
彼と離れてから体調を崩してしまい、
私は小学校に通う事ができず
ずっと家の自室のベッドで寝ていた。
起きてもベッドから出る事ができず、
ずっと起きていてもボーっとしていた。
でも、体調も除々に良くなって、
中学校には通う事ができた。
でも、完全に体調が治ったわけではないので
治療をしながら、学校に通っていた
時には休む事もあって、
ほとんど中学を満喫などできなかった。
それに、中学の中では皆私を特別扱い。
私は特別扱いされたおかげで友達も、
一緒に喋る相手もいなかった。
中学が終わる頃には体調が万全で
ほとんど治ったことで高校も無事通う事ができる。
中学があんな状況だったから高校では普通でいたくて、
特別扱いされずに、金持ちでお嬢様扱いされずに
普通の生活を過ごしたいと思った。
でも…ボディーガードが出来る事になった今
もう普通の生活が出来ないと思って嫌だった。
「私は…」
私が泣きそうな顔で哲を見ると…
「そっか、雪はいままで辛い思いをしたんだね。大丈夫、雪の言いたい事」
哲はにっこりと微笑み私の頭を撫でる。
「ずっと…一人だったんだね。」
そう言われた瞬間私の目から涙がでてきた。
「大丈夫。俺がなんとかしてあげる」
哲は私を抱き寄せ、背中をさすってくれる。
「どう…するの?」
「雪は、普段どうりの生活したいんだよね?だったら、普段どうりの生活をすればいい」
「でも…ボディーガード…」
私は哲を潤んだ目で見上げる。
哲は私の目をみて言う。
「危険なときは俺が守ってやる、約束しただろ?」
約束…あんなずっと前の約束覚えてたんだ。
「明日から入学式だよ。」
そぉ…明日から私の高校生活が始まる。
緊張してクラスに馴染めるかどうか…
不安かつ、少し怖かった。
「大丈夫大丈夫。雪ならたくさん友達できるよ!」
「本当?」
「マジ。」
哲は昔からこうやって優しくしてくれた。
不安になることや緊張することがあっても
哲は私を励まして元気にしようとしてくれる。
昔からそうだった気がする。
「ありがとう。」
私はそれからベッドでゆっくり寝た。
私がすやすや寝ていると、
「おはよぉお嬢様!」
大きな叫び声が聞こえバッと身体をおこす。
「なに!?…あ、哲ですか」
「なんだよ、なんか期待してた?」
哲はニコニコ笑っていて、何か楽しそうです。
「何言っているの?何に期待しろと?」
「い、いや何でもないです…」
「で、何の用で来たのかしら?」
私は朝が苦手で、どうも性格が暗くなる。
まぁ、元からなんですけど。
「いゃー、お嬢様を起こすのも俺の役目かと思って…」
「なぜ『お嬢様』なのですか?」
昨日は『雪』って呼んでくれたのに…。
名前で呼ばれなかったことが寂しく感じた。
「いやぁー、一応呼ばれなきゃいけないかと…」
「気分を害すからやめてください」
「…はぁーい」
『雪』と呼んで欲しくてそういうしかなかった。
ワガママですね…私は。
「よし!早く着替えて学校に行こう!」
哲は私の服をグイグイ引っ張る。
「まず着替えさせて」
私は哲が掴んでいる手を払って
哲を追い出そうとした。
すると…
「え?着替えさせて?そんなに脱がせて…」
パチンっと哲の頬をビンタする。
「ち、違うわよ!!何言ってるの!!早く出て行って頂戴!」
私は顔を赤く染めながらも諭しの背中を押して出てかせようとする。
「もぉ、冗談だょー痛いなぁー」
哲は私が叩いた自分の頬をスリスリと撫でる。
そして哲はしょうがないかのように自室からでていく。
それから私は着替えてリビングに行くと
いつものように食事の用意がされていた。
「雪ー、食べよー!」
哲は朝食を食べようとすると…
「お前の何処に食べる資格があるのだ」
「あ…」
「ひー相変わらずだなぁー真は」
「お、お兄様」
私の兄は哲に短剣を向ける
「黙れ。何の権利があって食事を食べて良いと言ったのだ!」
兄は大声で叫び哲を睨む
哲はビクともせずテーブルにおいてある食事を食べようとする。
「待て貴様!まず貴様の分の食事がないであろうが!」
「本当だぁー、でも腹減ったんだもん」
「知るかぁー!」
兄が短剣を哲に刺そうとするが、
哲は瞬間に椅子から立ちそこからバク転をして避ける
昔からそうだ。
兄は昔から哲のことが嫌いで
私に関わろうとすると必ず怒ってしまう。
「お兄様…落ち着いてください…」
私が兄に近づき手をのばすと、
「おー雪!我が妹よ。まだ私を『お兄様』を呼ぶのか…。
昔みたいに『お兄ちゃん』とでも呼んでくれたまえ」
「えっと…お兄ちゃんなんて…昔から呼んだことも…」
私は困惑していると哲がしゃべりだす。
「へぇー、シスコン、シスコン。まだシスコンだったのかぁー」
哲が兄をあおる。そぉ…兄は昔から妹の私に溺愛していて困っている。
「貴様!私はシスコンではない!!私は妹を愛しているのだ!」
「それをシスコンって言うんだよ。ばぁーか」
「コラッ 哲…」
私が哲を注意しようとすると、
「妹!こんな奴に近づくでない!ほら、私の隣においで!」
・・・。
もぉ、これどうしたらいいんだろ…。
私はとりあえずシェフに哲の分も作らせて食事はなんとか皆で一緒に食べた。
「よし!雪学校行こー!!」
哲が私の手を握り玄関に行こうとすると、
「妹!!そんなミジンコより、私と一緒に行こうじゃないか」
高校生になって兄と学校に行けと?
さすがに嫌だな…逆に私がブラコンって言われそう…。
「お兄様、お仕事頑張ってくださいね。」
なんとか兄の言う事をスルーして、
とにかく兄の喜ぶことを言う事にする。
「妹が…私を応援してくれた…あぁー幸せ。」
私と哲は家を出る。
・・・
「哲、本当に大丈夫かしら…」
「大丈夫だって!」
相変わらず哲は元気一杯で、その元気を私にくれる。
哲と喋っているといつの間にか学校につく。
「こ、ここが…シルベール高校。」
高校は中学より断然大きかった
私はこれからこの高校に通うのだ。
・・・to be continued
第1章を読んでくださってありがとうございました。
どうでしたでしょうか。
見てて面白かったり、興味を持ってくださるならありがたいです^^
第2章も頑張って書きます。
次回もよろしくお願いします。