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恋とはどんなものかしら。
あなたがもし知っているのなら、どうか私に教えて欲しい。
この胸に渦巻いているのが恋心なのか、それとも別のものなのかを、教えて欲しい。
うっとりするほどの熱い想い……私にとっては初めての経験で、本当によくわからないの。
私の心の中にはとても愛おしくて眩しい想いがある。
ふわふわのわたあめのような甘さだったり、かと思えばたまらなくほろ苦いビターチョコレートのようなもので。
ぎゅっと胸が締め付けられて息ができないと思った瞬間、身体の内側からぽっと生まれる熱い想いで胸が高鳴る。
けれど、すぐにまた私の心は揺らいで不安でいっぱいになってしまう。
私はこの気持ちをどうにかしてほしくて、誰かに助けを求めたいのだけれど、でもどうすればいいのかわからない……。
ため息を吐いて、ヘコんで、弱音も吐いて……もう諦める? って思って――ううん、気付けばもうすでに心を奪われているんだ。
いつもいつも、その笑顔に振り回されてドキドキして落ち着かなくて――でもこんな日常が、実は嬉しくて、楽しくて、安息感に満ち溢れているんだって私は知ってる。
もう知ってしまったの。
恋とはどんなものかしら。
あなたがもし知っているのなら、お願いだから私に教えて。
この胸に溢れる想いが愛なのか、それとも別のものなのか――。
モーツァルト 『フィガロの結婚』より ~恋とはどんなものかしら~
(別名:恋の悩みを知る君は)
サブタイトルに使ったアリアの和訳ですが、直訳すると全然ちがうので、その点はフィクションとしてご了承ください。