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ある晴れた日に遠い海の向こうから
あの人が帰ってくる
でも私は迎えには行かない
ここでじっと彼を待つの
ずっと待っていても何ともないんだから
聞いて、誰かが近づく足音が聞こえるわ
誰かしら? ねえ、誰が来たの?
最初になんて言うの? 私になんて言うの?
ほら、遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえるわ
でもね、私は返事をしないの
こっそり隠れて待っているの
それはちょっとしたいたずら心でもあるし、
嬉しくてどうにかなってしまわないためでもあるの
そしたらね、きっと彼は心配して私を探すでしょう?
愛しい人――彼は私をそう呼ぶの
愛しい人、どこにいるの? って
素敵なことだと思わない?
夢のようだと思わない?
でもね、これは夢でも想像でもなく本当のこと
誓ってもいいわ、必ずその通りになるんだって
プッチーニ作 『蝶々夫人』より ~ある晴れた日に~