第2話:初めての大ゲンカ!?ー②
一方、天界のルカの方は—
天国の受付業務にて、ルカはお年寄りたちと和気藹々と接していた。
「いらっしゃい〜、加藤さん、よく来たね〜」
「あら〜こんな綺麗なお兄さんに相手してもらえるとはね〜」
「加藤さんも綺麗だよ〜」
「いや〜口も上手いわ〜」
(おじいちゃん、おばあちゃんといると、めっちゃ平和〜
女の人より、お年寄り相手の方気楽でいいや)
キューピッド業務で散々トラブル続きだったルカは、老人たちの穏やかさに癒されていた。
(やっぱり僕は恋愛には向いてないんだよな……灯里のことも怒らせてばっかだし……)
昨日の灯里の顔が、ふと脳裏に浮かぶ。
やがてお年寄りたちが去り、わいわいとした喧騒が消え、静かな時間が訪れる。
ルカは椅子にもたれかかり、肩の力を抜いてふーっと息をついた。
(静かになると、どうしても昨日のことばっかり思い出してしまう……)
ルカの心には昨日の灯里の言葉が重く居座っている。
ーーなんか最近、ルカと全然噛み合わないし……
ーー一緒にいても安心できないし……楽しくないよ……
(僕と一緒にいても楽しくないって……灯里の気持ちはもう離れてしまったんだろうな……)
胸の奥に鉛のような重さが沈む。
(……僕の前では全然笑ってくれなくなったし……)
今更何を言っても、気持ちは取り戻せないだろう——そんな諦めの感覚が、静かに心を占めていた。
結局、またいつものパターンだ。
外見に惹かれて女性の方から近づいてくるが、内面を知っていくと、思ってたのと違う」と言ってあっさり去っていく。毎回その繰り返しだった。
けれど――灯里は違った。
キューピッド業務を通じて出会い、最初から素の自分を見せていた。
友達のように接してくれ、内面を知っても離れず、しかもそんな自分を好きだと言ってくれた。
初めて、自分をそのまま受け入れてもらえたと思ったのに……。
しかも灯里は、初めて自分から好きになった特別な相手だ。
今回は違うと思ったのに――胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
(灯里も、深く知ったら、僕が嫌になっちゃったんだろうな……)
ぐったり項垂れるルカに、背後から声がかかる。
「相変わらず、こっちでもモテモテだな」
ルカの上司であるセラがやってきた。
「お年寄りはいいけど、もう女性は懲り懲りですよ」
ルカはうんざりした表情で答える。
「はは。あっちでは相当トラブってたみたいだな。まぁ、俺はお前が戻ってきてくれて嬉しいよ」
セラは軽く返すがルカの落ち込んだ様子に気づき、続ける。
「まぁ、お前は戻ってきたくなかったのかもしれないが」
「いや、まぁ……その……」
ルカは歯切れ悪く返す。
「人間界の彼女と会えなくなるもんな」
セラは冷やかすようにニヤニヤ笑いながら指摘する。
セラとは長い付き合いで、ルカの恋愛遍歴も把握している。もちろん灯里のことも。
「……人間界の仕事に変わるか? ちょっと特殊だから、一般には知られてないが。俺が口聞いてやってもいいぞ」
セラは簡単に仕事内容を説明してくれた。詳細はよくわからなかったが、面倒で特殊な任務らしいことだけは理解できた。
ルカはそれでも、表情は晴れない。
「もし人間界に行けたとしても、もう向こうは僕から気持ちが離れてるみたいだし……
次に会う時は、別れ話かも」
ルカの苦しそうな表情に、セラは少し驚く。
「おや、今回はいつもと違う感じだな」
「え?」
「いつも別れても平然としてるのに」
「そ、そうですか……?」
「あぁ、初めて見たよ」
ルカはわずかに視線を逸らすが、なんでもないふりをして答える。
「いや……別にいつもと同じですよ。僕が勝手に今回は違うと思ってただけで……」
明らかに強がってるだけのルカに、セラは少しおかしそうに声をかける。
「そんなに沈んでるなら、もっとあがいてみればいいのに」
「あがいたって変わるもんじゃないですよ。
相手の気持ちが離れたら、僕が何を言っても無駄だと思います」
「まあ、それはそうかもしれないが、完全に離れる前なら間に合うかもな」
「そうでしょうか……?」
「ま、終わってしまうにしても、ちゃんと気持ちは伝えた方がいい。後悔するぞ」
セラの言葉を聞き、ルカは少し思い直す。
「確かにそうですね……」
(灯里は初めて心から好きになれた相手だから……
やっぱりちゃんと気持ちを伝えたい。後悔はしたくない……)
セラはふっと笑ってルカに声をかけてその場を去る。
「人間界の仕事のこと、考えとけよ」




