二日月
日暮さんと会わなくなって九日経った。いつもの河川敷に行っても彼女の姿はなかった。学校で会うこともあったが、常に彼女は友人と一緒にいるため、話しかける勇気がなかった。
彼女と会わなくなった夜から月の満ち欠けは段々と進み、月の形が細くなり新月を迎えた。まるで僕の心のように暗闇へと月は包まれていった。
そんな心がここにはないような日々を過ごしている時だった。いつものように良樹と屋上で昼ご飯を食べていた。
「どうしたんだよ?お前最近死んだような顔になってるぞ」
「え・・・あぁ・・・・・・まぁ」
「え、なんだよ。その反応・・・・・・」
良樹は僕の反応を見て何か察したのか、僕の肩に腕を回してきた。
「どうしたんだよ?親友に話してみな」
良樹はニカっと歯をみせて笑ってみせた。恐らく僕のことを心配しているのだろう。僕も自分の中に貯まった気持ちを誰かに吐き出したくなったのか良樹に話すことにした。
良樹に茜さんとの出来事を全て話した。すると良樹は最初笑って聞いていたが、段々と表情が曇り始め顎に手を当て悩むような仕草を見せ始めた。
「んーなるほど・・・・・・突然ねぇ。いわゆるアレだな・・・・・・クソ女ってやつ」
「茜さんはクソ女じゃない!!!」
声を荒げる僕に良樹は「ヒュー」と口笛を鳴らしてみせた。僕はそれを見て良樹にのせられていたことに気がついた。
「とにかくだ。日暮さんと話をしてみないと何も解決しないわけだ」
「話すって言ってもどうするのさ。学校だと日暮さん、友達と一緒にいるしさ」
「親友に任せなって、人払いなしてやるよ。お前は心の準備を整えとけ、面倒なかぐや姫を迎えに行こうぜ」
良樹は僕に手を差し伸べた。僕は唾を飲み込み良樹の手を掴むと、良樹はニッと笑ってみせた。
「でも・・・・・・やっぱり明日でもいい?」
「えぇ・・・・・・お前ヘタレだな。まぁいいかじゃあ、明日決行だ。かぐや姫とお話し大作戦」
「何?そのかぐや姫って・・・・・・茜さんのこと?」
「だってそうだろ。お前の心を奪って遠くにいきなり消えたんだから、まるで月に帰ったかぐや姫みたいだろ」
「ハハ・・・・・・発想力豊かだね」
「まぁなんでもいいさ。かぐや姫を月から打ち落としてやろうぜ」
「・・・・・・全く物騒だな」
良樹のおかしな発想力に僕は自然と笑顔になった。そんな僕を見て良樹も笑っていた。
その日の夜空にはまるでせんのような繊のような月が浮かんでいた。まるで糸のように細く美しいその月は暗闇に包まれた僕の心に現れた希望の糸のように見えた。




