更待月
今日は土曜日。バイトは休みの日だし、特にやることもない。僕は家でダラダラとゲームをやっていた。
モンスターを育成するテレビゲームだ。やり込み要素が多く暇を潰すにもってこいだ。ベッドに寝ながらすっかりゲームに夢中になっていると時間は過ぎていった。
「光輝〜ご飯よ」
下の階から母親の声が聞こえてきた。そして自分がベッドで寝落ちしていたことに気がついた。時刻は午後七時十分。
「はーい」
僕は口から垂れた涎を手で拭き取ると、下の階に降りていった。
夕飯を食べ、皿洗いを手伝った後、僕は外に出るために服を着替える。いや違う、彼女に会うためにおしゃれな服を選んでいた。
「ちょっと散歩してくる」
黒いジャケットを羽織った服で、母に声をかけると母はキョトンとした顔をしていた。
「そんなおしゃれしてどこ行くの?」
「散歩だって」
「へーふ〜ん」
母がニマニマとした気持ち悪い笑顔でこちらを見ていた。なんとなく心を見透かされたような気もするが、母に追求されないうちに家から出た。
今の時間は21時。外は肌寒く長袖で過ごすのが当たり前となっていた。
外は街灯の灯りが道を照らすのみだった。月はまだ出ておらず、漆黒のキャンパスにビーズをこぼしたような星空が広がっていた。
星空が広がる空も綺麗だが、月が出ておらずなんだが寂しく感じる。今宵は更待月月の出は夜の十時ごろに登ってくる。
月明かりが出ていない道を歩きながら、彼女が待つ河川敷を目指す。月が出ていないのに彼女はあの場所にいるような気がした。いつのまにか彼女に会いたくなっていた。僕の足取りは早くなっていった。
そして河川敷着くと、彼女は夜空を見上げていた。三日月の髪飾りをつけた彼女は真っ直ぐと夜空を見つめており、まるでまだ見えていない月を見えているように写った。
「あかねさーん」
僕は声をかけながら大きく手を振ると彼女は手を嬉しそうに振り返した。
「おーい。待ったよ光輝くん」
「ごめん、ごめん」
僕は謝りながらいつもの定位置である彼女の隣に座る。茜さんの顔は寒さで顔が赤くなっていた。
「今日もバイト?それにしては自転車乗ってないけど」
「今日はバイトは休みだったから、家でゲームしてたんだ」
「へぇー光輝くんゲームって何するの?」
「育成ゲームかな。何かを育てるのが面白いんだよ」
「男の子ってゲーム好きだよね」
「茜さんはゲームやらないの?」
「うーん私はあんまりやらないかな。本を読んだりするのが好きかな。後ショッピングとか」
「女の子って買い物好きだよね」
「私たち学生ですから」
「アハハハハッ」
「あははははっ」
月が出ていないためか、お互いの顔を見ながら話し合っていた。今日は月や夜空よりも茜さんを見ている時間が長いような気がした。
「明日はバイト休み?」
「うん休みだけど」
「じゃあ明日一緒に買い物行こうよ」
「え!?」
僕は茜さんの意外な発言に驚きの声をあげてしまうが、茜さんは不安そうな表情をしていた。
「・・・・・・ダメ?」
「え、いやいいよ。ちょっと驚いただけ」
「そっかなら・・・・・・よかった」
そう言った彼女の頬の赤らみが少し増したような気がした。
そうこう話している内に夜空に黄色い光が登っていきた。昨日よりも月の形が欠けたように弧を描いたその月はまるで僕たちに時間を知らせているようだった。
「月が登ってきたね。もう十時だ、じゃあまた明日。場所と時間は連絡するね」
「うん、また明日」
茜さんを見送った僕は先ほどの肌寒さを感じなくなるほど身体のほてりを感じていた。明日が楽しみになった嬉しさからか、それとも彼女と話せた楽しさからかなのかは今の僕にはどちらかわからなかった。




