立待月
今日は水曜日。バイトが休みだったため、僕は昨日約束したプレゼントを買いにデパートに来ていた。
学校で日暮さんに謝ろうと思ったが体調不良で学校を休んでいた。昨日の帰り何かあったんだろうか。心配と後悔が僕の心を包んだ。
今日またあの河川敷にいけば、会えるはず。そんな根拠もない希望を信じて僕は日暮さんへのプレゼントを探す。
デパートを散策しているとある店が僕の目に止まった。そして僕は品物を取りレジへと持っていた。
「これにしよう。そして今日あったらきちんと昨日のことを謝ろう」
自分に言い聞かせるようにして、僕は一人で呟いた。
そんなことを思っているうちに時は流れ、たちまち夜となった。
暗い夜道。昨日よりも月の形が欠けて、月の影が増えているように見えた。
今日はいるだろうか。もし彼女に何かあったら僕のせいだ。そんな気持ちが僕の足を重くした。
そして河川敷についた。彼女はいつもの河川敷には座っていなかった。僕は肩を落として彼女が座っていた場所に腰を落とした。
「やっぱり・・・・・・昨日先に帰らなければ」
僕は後悔の気持ちでいっぱいになった。手に持った包装された箱に力が入る。
「わぁ!!」
突然僕の両肩に叩かれたような衝撃が走り、後ろから大きな声がした。
「うわぁ!!??」
僕は突然のことに飛び上がり、後ろを見てみると元気そうに笑みを浮かべる日暮さんがいた。
「いぇーい。驚いたぁ?」
「驚いたよ。意地悪しないでよ。こっちは心配したんだよ。学校にもこないからさ」
「あはは。ごめん、今日朝起きられなくて学校行けなかった」
「何だ。そういことだったのか・・・・・・」
僕は安堵の表情を浮かべると心が軽くなっていったのを感じた。
「昨日置いて先帰っちゃつてごめん」
「いいって・・・・・・ていうかプレゼントくれるんでしょ。楽しみにしてたんだ」
「あ、これ!!一日遅いけど誕生日おめでとう日暮さん」
僕は手に持ったプレゼントを日暮さんに渡した。日暮さんは包装紙を丁寧に開け、箱を開けた。そして中に入っていた三日月型の髪飾りを取り出した。
「これは・・・・・・髪飾り?」
キョトンとする彼女に期待にそぐえなかったと思い。必死に弁明し始めた。
「日暮さんに似合うと思って、いや女子にプレゼント贈るとか初めてだからさよくわかんなくて髪飾りとか可愛いし、日暮さん月が好きだから似合うかなと思って気に入らなかったら捨ててもいいから」
僕が話している中、彼女は髪飾りを自身の髪につけ始めた。そして嬉しそうに笑みを浮かべて僕の顔を真っ直ぐに見つめる。
「どう・・・・・・似合う?」
髪飾りが月明かりに反射して煌めく。彼女の綺麗な笑みに僕は言葉を失ってしまう。数秒して僕は我に帰った。
「うん。似合ってるすごい綺麗だ」
「・・・・・・・ありがとう。後捨てないよせっかく羽瀬くんが誕生日プレゼントにくれたものだから」
「・・・・・・そっか。なら・・・・・・よかった」
僕たちは気恥ずかしくなったせいかしばらく沈黙に包まれた。
「・・・・・・お月見しようか」
「・・・・・・うん」
彼女の言葉に僕は賛同するといつもの河川敷に腰をかける。彼女の耳が赤くなっているように見えた気がした。
「昨日帰り大丈夫だった?」
「うん、置いてかれたあと普通に家に帰ったよ。いきなり帰っちゃうからびっくりしたけどね」
「それは本当にごめん」
「あはは、今日は一緒に帰る?」
「え!?」
僕は日暮さんの言葉に戸惑ったが、昨日のような後悔はしたくなかった。
「家の近くまでなら」
「家まではいってくれないんだぁ」
「からかわないでよ」
「あはははは、ごめんごめん」
僕たちは三十分ほど河川敷で話した。そして月が黒い雲に隠れた。スマホを見ると時間も九時五十分になっていた。
「日暮さんそろそろ帰ろうか」
「そうだね」
僕は日暮さんとの歩幅を合わせながら日暮さんが向かう方向に歩みを進める。
「そういえば羽瀬くんってどこのコンビニでバイトしてるの?」
「この前本屋で来たところあるでしょ。あの近くのコンビニ」
「あぁ、本屋の近くの」
「そう、そこ。同じクラスの東條良樹っているでしょ。そいつと誘われてバイトし始めたんだ」
「へぇー今度いこうかな・・・・・・」
「え!?バレたらまずいんじゃ学校で噂になるよ。良樹もいるし!!」
「冗談〜」
ヘラヘラ笑う日暮さんを見て、僕はまたからかわれていることに気がついた。
そして突然日暮さんの足が止まった。彼女は頭につけた三日月の髪飾りを優しく撫でた。
「ここで大丈夫かな。送ってくれてありがと」
「僕が好きでやったことだからいいって」
すると彼女はスマホを僕に向けてきた。僕がキョトンとした表情を浮かべると彼女は笑みを浮かべた。
「連絡先交換しない?今日みたいにお互いの場所もわからないと不便でしょ」
「え?あぁそうだね」
僕はポケットからスマホを取り出すと日暮さんと連絡先を交換した。
スマホの画面に映った僕の連絡先のアイコンを見て日暮さんはうれしそうに笑う。
「じゃあまた明日。河川敷で!!」
嬉しそうに笑って手を振る彼女に僕も笑い返して大きく手を振った。
「うん。また明日」
日暮さんは角を曲がるまで手を振り続けた。僕も日暮さんが見えなくなるまで手を振り続ける。
そして僕は暗い帰り道を一人歩いて帰った。不思議と不安や怖さはなかった。ただ僕の心は自分でもよくわからない暖かさと安心に包まれていた。




