上弦の月
茜さんと話してからあっという間に日にちは経った。そして五日が経った今日の夜茜さんと河川敷で会う約束になっているが僕はどこか緊張していた。
「何そわそわしてんだよ?」
「え!?別にそわそわなんてしてないよ」
突然話しかけてきた良樹の声にもビクリと驚いてしまった。
「お前・・・・・・俺が身体張ったんだから失敗すんなよな・・・・・・俺が学校でなんて噂されてるか知ってるか?」
「・・・・・・チャラナンパ男」
「そうだよ・・・・・・ちなみにお前もナンパ男の取り巻きっていうあだ名を付けられている」
「えぇなんで僕まで!!ていうか誰だよそんな噂流したの!!」
「俺だ!!!」
誇らしげに親指を立て自分だとアピールする良樹に僕はアームロックをかけた。
「なんてあだ名を流してんだよ!!」
「うるせぇ!!協力したんだから一緒に地獄におちろ!!」
「協力はありがとう・・・・・・だけどお前と地獄には堕ちたくない!!」
僕と良樹がそんな会話をしながらも時はドンドンと流れ瞬く間に日は暮れていった。
時刻は午後九時、バイトが終わり僕は河川敷に向かっていた。
自転車を漕ぐ足がいつもより早くなった。白い息を吐きながら河川敷に着くと一人の女性が河川敷に座っていた。
さらさらの黒髪が冷たい夜風に揺れたなびき、三日月の髪飾りが半分になった月に照らされる。黒曜石のように美しい黒い目の先には川に反射して写った月が見えていた。
「・・・・・・お待たせ」
僕は自転車を停めて、彼女に近寄ると彼女は隣の草をペシペシと軽く叩いた。隣に座れという意味なのだろうかと思いつつ、僕は彼女の叩いた場所に腰を落とした。
「前に親が海外に仕事に行ってるって言ったでしょ」
彼女が口を開いて、静かに語り始めたのを僕はただ黙って聴き始めた。
「私も昔は海外に居て、日本に戻ってからだった。不眠症になったの」
彼女は上空に浮かぶ月を見ながらゆっくりと物語でも読み聞かせるように言葉を紡ぐ。
「それから寝れなくなって、体調も崩しやすくなったし、精神的に不安定になったの・・・・・・そんな思いを光輝くんにしてほしくなかった・・・・・・」
なんとなくだけど茜さんの言っていることもわかるような気がした。茜さんは自分と同じ苦しみを味わせたくなかったのだろう。気づかずうちに彼女に気を使わせていたらしい。
「だけど一人で夜を過ごすのは寂しいでしょ?」
自然と言葉が出た。僕の言葉を聴いて、茜さんの目が涙が一粒流れた。
「うん・・・・・・寂しかった。ずっと一人の夜が不安だった。眠れないことが辛かった」
「もう大丈夫だよ・・・・・・一人で過ごす夜は終わったから」
「・・・・・・うん」
僕と茜さんは河川敷に座り、一時間ほど静かに月を見て帰った。
その後の会話は少ししかなかったが、それでも彼女のことを半分でも理解できたような気がした。




