三日月
次の日の放課後、僕と良樹は帰り道の茜さんとその友達が帰っているところをつけていた。茜さんの友達は三人おり楽しそうに話しているが、茜さんはなぜか浮かない顔をしていた。
冬が近いせいか日は傾きつつあり、あと数分で周りが暗くなりそうだった。
「なぁ、本当にやるのか?なんかストーカーみたいでやなんだけど」
「バカ、誰のためにやってると思ってるんだよ。さっさとやるぞ、俺も明日学校でよくない噂が広まっちまうんだから」
良樹は息を整えると、茜さん達の女性グループに早足で近づくと髪をサッと掻き上げ声をかけた。
「ヘイ。彼女達今日は暇かな?よかったら僕とお茶しないかな?」
茜さんの友達は一瞬呆気に取られたような表情をすると、状況を飲み込んだのか良樹を睨みつけた。
「僕的には奥の綺麗な髪飾りをつけた子がいいかなぁ」
良樹の目線を遮るように茜さんの女友達が良樹の前に立つと、茜さんを先に行かせるように女友達が先に行けとハンドサインを送った。
それを見た茜さんはコクンと頷くと良樹に背を向けて歩き出した。それを見て良樹も僕の方にアイコンタクトを送ると僕も茜さんを追いかけた。
道を迂回して茜さんが歩いているだろう道に出たが、そこには茜さんの姿はなかった。
僕は必死に走って追いかけた、そして茜さんの姿をみつけた。そこはいつもの河川敷に続く道だった。必死に走って追いつくと何も考えずに声をかけた。
「待って茜さん!!!」
振り向いた彼女は少し驚いたような顔をしたが徐々に周りが暗くなると同時に表情は落ち着きを取り戻したように感情はなくなり、無表情になった。
「どうしたの?こんなところまで来て。私には関わらないでほしいんだけど」
「なんで遠ざけようとするだよ!!僕が何かしたなら謝るよ」
「何もしてないよ!!!」
叫ぶように言葉を吐いた茜さんを見て初めて彼女から感情をぶつけられたような気がした。泣きそうになる顔を必死に堪えているように悲しそうな顔で彼女は言葉を続けた。
「私と同じ思いをしてほしくないの・・・・・・光輝くんには眠ってほしいの。私と関わると眠れなくなるから・・・・・・光輝くんには眠れない夜を過ごしてほしくない」
辛そうに言葉を吐く彼女の目からは涙が溢れていた。そして泣きながら顔を真っ赤にする彼女の目元には黒い隈ができていた。
「別にいいよ・・・・・・眠れなくても」
「よくないよ!!!寝れないことは辛いんだよ。私が一番よく知ってる!!寝たくても寝れない人の気持ちがわかる?朝や昼間に眠たくなってやりたいこともできないんだよ!!そんな思いしてほしくない」
「寝れないなら僕が側にいるよ。茜さんが安心して眠れるまで僕が側から離れないよ!!!」
僕の言葉を耳にして、茜さんの目が見開き明らかに動揺していた。いつのまにか日は落ち暗闇に包まれ、周りの街灯がつきはじめていた。
茜さんは顔がさらに赤くなっているように見えた。
「・・・・・・本当に?」
「あぁ、眠れないなら付き合うし話も聞くよ。茜さんが眠るまで」
茜さんはゆっくりと近づいてくると僕の胸に顔を埋めるよう抱きついた。
「・・・・・・わかった」
僕は顔の火照りを感じながらも彼女を腕で優しく包み込んだ。
暗い空にはいつのまにか星が煌めいており、その星空達を優しく見守るように三日月が昇っていた。
しばらくして、茜さんは離れると夜空を見上げた。そして、深呼吸すると顔を赤くしたまま照れくさそうしていた。
「落ち着いたら、理由話すから五日後の夜に・・・・・・またいつもの河川敷に来て・・・・・・」
「え!?なんで五日後?」
「気持ち落ち着かせるのにそれぐらい必要なの!!じゃあね!!」
捨て台詞を吐くように走り去っていく彼女の最後の顔は夜空に浮かぶ三日月よりも美しい笑顔だった。
僕は茜さんの後ろ姿を見送ると、我に返り恥ずかしいセリフを吐いた自分に悶絶するのであった。




