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7話

「女物の服…?」


 大和田と輪田は戦慄した。そして、狼狽しながら目を見合わせる。


「あ…えっと、昨日拾ったというか…」


輪田が苦し紛れの言い訳を放った。


「嘘つけ」


もちろん一刀両断だった。というか、拾ったでも大分アウトである。


「女、女装趣味だろ?輪田!」


「お前達…嘘下手か!!」


 伊澄は一度冷静になった。前回のパワハラのトラウマがあるからだ。落ち着いて経緯を問う。


「洗いざらい話せ、私が納得するように。でなければ…斬る」


 二人は観念した。パチコの存在は、クラスメイトに対してならば無理に隠すことでもないので、話すことにしたようだ。


「あ〜あ〜、分かったよ。話してやるか」


「パチコ氏、もう無理ですね。出てきてください」


 木箱の中から人形のような少女が現れた。そして、机から飛び降り、突然サイズが人間に戻った。

「人間が、いたのか…?」


「お前が伊澄灯香か、アニキは渡さんぞ! 」


「おい、何所有権を主張してやがる。俺は俺のものだバカ」


強烈な一言にパチコはふらふらとソファに座り込んだ。


「あ〜こいつはパチコ。召喚に巻き込まれた俺たちと同じ異世界人だ。」


 その後、伊澄に隠していた理由を説明した。


「なるほど…一理あるな。無罪!」


「はぁ、何でてめぇに自分の判決を決められなきゃならねーんだか…」


「僕はわかってくれて安心しましたぞ」


「言っておくが伊澄灯香。アタシは好きでここにいるんだからな」


 何故か釘を差すようにパチコは伊澄に告げた。


「はは、わかったよ。女子寮こっちに来なくていいか、なんて無粋な質問は控えるとしよう。ただ、お前達、不貞行為だけは…」


「殺すぞ」


大和田は食い気味に答えた。


「それで言ったら男部屋に押しかける伊澄氏も割とグレーゾーンでは?」


 輪田がその一言を放ったあと、伊澄は顔を真っ赤にして一時間後に集合と告げ全速力で去った。

 後に目撃したクラスメイトに伊澄は色々と誤解されて、それを解くのに難儀したのはまた別の話なのだった。


ーーーーー


 一時間後、パチコを除く三人は町の中心にやってきていた。


「人が多いな」


「今日は休日といっても祭りがあるからな。祭りのあと、ダンジョンという国管理の地下迷宮が開くらしいぞ」


「ダンジョン!?凄いですな…そんなものまであるのですか!」


 大和田の脳で迷路、罠、宝箱、というワードが巡った。その存在にウキウキしているのは秘密だ。


「まあどうせ訓練名目で行くことになるだろうな」


「なるほど、そのための連携訓練ですか…」


 異世界人の召喚は何も戦争の為だけではない。ダンジョンから貴重な武器や秘宝、遺物を持って帰れば国庫が潤う。そういったことにも異世界人は駆り出されるのだろう。


「今日は祭りだし、自由に回ろうじゃないか」


 輪田は知らなかったのか、ワクワクしながら人混みに消えていった。


「帰る」


大和田はくるりと回り、寮に戻ろうとする。


「…待て。帰るだと?」


「興味がねぇから帰るわ」


「ふざけるな、それならば私の買い物に付き合え 」


「嫌にきまってんだろ、そもそも金持ってきてんのかよ」


「勿論だ、この前の訓練の褒美にもらったものをな!」


ドヤ顔をしていたら大和田はもういない。


「コラ!逃げるな!」


伊澄は大和田の腕を掴み、恋人同士のように組んだ。


「逃げたら大声でお前の名前を叫んでやるからな」


「…質悪ぃな、てめぇ!」


「大体何のために呼び出したと思ってるんだ、鈍感野郎…」


「あァ、なんか言ったか?」


「イエ、ナニモ」


 伊澄は必死で顔が赤くなるのを堪えるのだった。町を歩いていると、露店が見えた。何故かショーケースがあり、中には意外とお洒落なアクセサリーが並んでいた。


「高ッ…高いな…」


「へへ、嬢ちゃん。この石は魔法石と言ってな、それぞれ魔法が組み込まれてんだよ。作れるやつがすくねぇから、値が張るのさ」


露店のオヤジは饒舌にそう語った。


「そうか…こっちは防御、こっちは攻撃、色々とあるな…」


「どれか買ってくれんのか、在庫が余っちまって困ってんだよ。安くするぜ?」


「いや、予算不足だ。済まないが、またの機会にさせてもらうよ」


「そうか、まあ仕方ねぇな…」


「よこせ、コレとコレだ」


大和田はお金を出し、そう言い放った。伊澄は驚いた顔をした。


「お、なかなかセンスがあるな、あんちゃん。この二つか?」


「あぁ、これで足りるか?」


「勿論だ、まいど!」


 その後も、一時間ほど買い物をし、しばらくしてベンチに座り、少し休憩をすることにした。


「おい」


「なんだ、もう行くのか?」


大和田は何かを伊澄に差し出した。


「やるよ」


魔法石の入ったネックレスだった。効果は"冷静化"だ。


「これは…いいのか?」


「あぁ、散々ついて行って何も買わねぇのもシャクだしよ、ついでに買った。礼だよ」


「…そうか、ありがとう」


(そんなこと言われたら、この魔法も意味がないだろ…)

伊澄はそう考えずにはいられなかった。


「帰んぞ。輪田は遅ぇから置いてく」


「あはは、可哀想だな」


ーーーーー


「諸君、祭りは楽しんだか?私も妻と一緒に歩いたよ。やはり良いものだな、平和というのは」


ガルシアは訓練の始めにそう言った。


「惚気てんのか?」


「アレは無意識ですぞ、それだけにキツイですな…」


 大和田は輪田に激しく同意した。なんだか、親のイチャつきをみたようなむず痒さである。


「突然だが、祭りが終わってから、この国の地下迷宮ダンジョンが開放される。お前達は私から合格をもらった後、そこに潜ってもらう。国に役立つものを持ち帰れば、褒美を与えよう。では、その試験だが…」


 試験は、チーム対抗戦だった。チームでくじ引きを引き、互いに争うらしい。十分な実力があると認められればダンジョンに入れるそうだ。


「ワクワクしますな、このチームの対人戦も、ダンジョンも!」


「そうだな、私も柄にもなく浮ついているかもしれない」


 くじ引きを引くと、相手は輪田の友達のチームだった。いわゆるオタクチームである。


「フッ、輪田氏。ここで当たるのが運命だったか」


「我々は手を抜かず、全力で相手させてもらう!」


「私も魔力が爆発しそうだ!!」


(なんなんだこいつら…)


「そうですか…」


 輪田は友達のこじらせた様子を見てなんだか恥ずかしいようだ。伊澄に至ってはガン無視である。


「うるせぇな、勝手にしやがれ」


「…ヤンキー風情が言ってくれる!」


「我々は本を読み異世界の知識を蓄えていたのですぞ?」


「わからせてご覧に入れよう」


 後ろで黙っていた二人も加わり、オタクたちは大和田に罵声を浴びせた。


「大和田、気にする必要はない。じきに分かるさ…どっちが分からせられるかをな」


「てめぇがキレてンじゃねぇか」


 結界に入ると、合図が出て試合が始まった。


「ファイアトルネード!」

「サンダースパイラル!」

「アイスブロウ!!」


初手から高火力の魔法を放ってきた。


「後退!」


 輪田の指示に従い、俺達は輪田の後ろまで下がる。輪田は足に魔力をこめ、原理は大和田にはわからなかったが地面から壁をせり出させた。


「攻撃開始ですぞ!」


「しゃぁッ、指示頼んだぜ!」


「完璧に指示を実行しよう」


 全速力で結界内を駆け抜ける。


「バカが、私の深淵の餌食となれ、魔眼発動!」


 オタクの一人である根田康太ねだこうたはそのスキルで得た魔眼を光らせ、大和田の動きを鈍らせる。はずだった。


「マヌケはてめぇだ、拗らせ野郎」


「何ッ!?」


鈍い音と共に根田は吹き飛んだ。


 大和田にはスキル"崩れぬ気勢"がある。状態異常は完全に抵抗されてしまったのだった。


「不味い、一旦離脱を…」


「許すと思ったか?」


 根田の敗北に反応した仲間の一人は、伊澄に隙を突かれ、刃のついていない剣で首を刈られ、一撃で沈む。


「この、チート野郎が!」


 大和田に追い詰められ、その拳に一人、もう一人と倒れていく。


「悪かったな、俺だけだったらちょこまかと逃げながら魔法を撃ってお前らの勝ちだったろうが、優秀な司令塔がいるんでね」


「輪田か、あいつは俺達に与しなかったし、ただの馬鹿だろ?わかりやすい嘘を付くな、学のないクセに!あいつから倒してやるよ…!」


 輪田に向かって魔法を同時に放つ残りの二人。しかし輪田も黙っては受けない。


「行きますぞ、伊澄氏!」


「勿論だ、やれ」


「「瞬間入換チェンジ!」」


 輪田の位置に伊澄が、伊澄がいた位置に輪田が移動した。輪田の隠し玉、空間魔法だ。


「錬金術士をなめてかかりましたな。一応これでも一種の魔法使いですぞ」


 伊澄は入れ替わった直後、紙を二枚取り出した。


「封殺護符!」


 伊澄の職業ジョブ、"退魔師"の専用スキル、護符生成により、魔法を吸収する札を作り出し、魔法を防御した。


「は…?防がれた!」


「それはいいが、周りをよく見ろよ」


 すでに右から拳が迫ってきていた。吸い込まれるようにみぞおちにヒットした一撃で、最後の一人も倒れた。


「完全勝利かよ…」


「あいつらは別に弱くないのに!」


 クラスメイトや見に来ていた騎士たちは驚愕した。


「くそ…負けた」


「なんなんだあの格闘は……ただの不良じゃないよ」


やられたオタクチームは戸惑っている。


「おい」


「「はい!」」


「お前ら、強かったな」


大和田はそう告げた。


「嫌味を言ってバカにするな!」


根田は叫んだ。


「してねぇよ。俺が言いてぇのはそんだけだ、じゃあな」


「な、なんだったんだ…?」


 大和田は反省していた。魔法の攻撃規模があそこまでとは想像していなかったのだ。クラスメイトが思ったより強かったから褒めた。大和田にとっては、それだけなのだった。


「まだ試合あんのか?」


「大和田氏、我々は文句無しの合格ですぞ」


「やったな、お手柄だぞ。輪田!」


 実際無傷で勝利できたのは輪田の的確な指示とサポートのお陰だ。振り返り、反省して、次に生かす。三人はまた話し合いを始めた。











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