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6話

《先読み推奨》こんにちは、前書きより失礼します。一介です。前回説明しそびれましたが、伊澄のジョブは退魔師という名前です。彼女の能力はまだ未知数なので、ゴーレム戦では使用されませんでした。ただの剣士で無いことはご承知おきを。では、本編をどうぞ!

 グレンダール王国の城下町は夜も眠らない区画がある。そんな酒場の一角で、酒も飲まずに騒いでいる若者がいた。


「乾杯ですぞ!」


「おう」


「か、乾杯…」


 今日は懇親会とか号して輪田が俺達を夜の町に連れ出した。もちろん監視がついたが、それは仕方ないことだろう。


「なんだこの肉、美味えな」


「ビッグボアの肉とか言ってたぞ」


「美味いですな…これぞ異世界グルメ!最高ですぞ!」


「さてはそのために私達を集めたな?」


「やっと気づきましたか…そう、お二方は僕の手のひらの上で踊っていたのですぞ!」


 輪田はドヤ顔で答えた。

「いい機会ですし、色々と質問しあいませんか?」


「オタクが宴会仕切ってるのって、なんか変な感じだな。」


「じゃあ私から質問だ、大和田。何故不登校になったんだ?」


 何の容赦もなくいきなりぶっ込んでいくスタイルに、2人は驚いた。


「あ〜そうだな…何でだったかな?」


「大和田氏はヤンキーなのにそんなに悪い噂は聞きませんな」


「まあな、俺は自分の意思で喧嘩してたけど、暴力意外の犯罪は一切してないからな。不登校になったきっかけだが、聞いて後悔するなよ?昔のダチがいじめを受けてたからだ」


二人は神妙な表情をした。


「親友か。学校にいるのか?」


「いや、そいつは中学ン時に死んだ」


 大和田は昔を思い出して悲しそうな、懐かしむような顔をした。


「え…」


「デリケートな話題だったな…すまない」


「いや、この際聞いとけよ。どうせ話すことになるだろ」


「自分語りをあまりしない大和田氏が自ら…なんか嬉しいですぞ」


 大和田は、非行少年になった経緯を話し始めた。


「中学の頃、俺は普通に中学生をやってた。俺が中学校に入学して、大地だいちっていう友達ができた。気さくで、趣味も合うから毎日のように話して、部活も一緒にやって、正直知らないとこなんて一つもないと思ってた。

『皆、聞いてくれ。うちのクラスの大地が、大地が死んだ…』

担任がそういったとき、俺は一瞬訳がわからなかった。原因はその時は言われなかったけど、部活の顧問に教えてもらったんだ。

端的にいうと、他殺。絡んだ不良と気の強い大地がもみ合って、袋叩きにされた。そのとき運悪く致命的な負傷をしたみたいで、公園で見つかったらしい。」


伊澄は絶句した。


「そんな…」


輪田は沈黙で続きを促した。


「俺は泣いた。人生で一番泣いたよ。あいつほど良いやつはこの世にほとんどいないと思ってた。不良にゃ絶対ならねぇと誓ったよ。でもな…」


 大和田の表情は少し、いやかなり歪んだ。


「見つけちまったんだ、大地を殺した不良共をよ。しかもあいつら、俺の前で何を話してたと思う?」


伊澄も輪田も、監視役の男さえも息を呑んだ。


「『俺達未成年で助かったな』だってよ」


「なっ…」


「酷い話ですな…」


「ブチ切れたよ。俺はすぐに持ってた竹刀を捨ててそいつらに殴りかかったよ。身体だけは無駄に丈夫だったから、本気で殴り合って勝ったよ。高校生だろうが関係ねぇ、五人いたが、四人は後遺症が残るレベルまで瀕死に追いやった。最後の一人は女だったが、こっちも顔に傷が残ったと聞いたよ。知ったことじゃなかったけどな」


伊澄は何かを考え始めた。


「その後は…?」


輪田は食い入るように聞いた。


「その後は、俺は親に勘当されて、優しかった祖父ジジイのとこで暮らしたよ。高校には受かってたし入学もギリギリできた。無論登校はしなかったがな。それから俺は町を駆けずり回って不良共を一人残らず半殺しにして回った。犯罪率が下がって裏で警察署長に感謝されるくらいにはな。正直非行少年の俺に感謝する警察署長には反吐が出たが、そこで踏ん切りがついた。俺は高校に戻ってきたんだ。」


「「……」 」


「悪いな。お通夜みたいな空気にしちまったよ」


 親友の死がきっかけで非行に走る少年。小説や漫画ならありふれた話だが、輪田は動揺せずにはいられなかった。


「いや、そんなことはありませんぞ、大和田氏。むしろこういうことを聞くために開いたんですからな」


「そんなに面白かなかったろ?」


「コレを面白いと言う奴は人の心がないと思いますぞ」


 伊澄は考えが纏まったのか、大和田を見つめた。


「大和田。私はお前を勘違いしていた。すまなかった…」


「別にいいっての。じゃあ理由を聞かせろよ。勘違いのよ」


「私は剣道を小学校からやっている。私は剣道が好きだったから毎日本気で練習してたんだ。そんなある日、私の通ってた道場にお前とお前の道場のやつらがやってきたんだ。他流試合とか言って前々から決まってたらしいが…」


「あぁ、あの時か。少し覚えてるぜ、俺は剣道嫌いだったけどな」


「そうだ、お前はそんな目をしてたよ。でもそんなお前に挑んだ私はお前に完膚なきまでに負けた。」


「なんと…そんな昔から交友があったのですな?」


輪田は興味深そうに聞いた。


「その時にお前が私になんて言ったか覚えてるか?私は剣道をやっててこの言葉を忘れた日はないぞ」


「うん…?」


「『やっぱり、剣道ってつまんねぇな』だ!!」


「……言った気がする」


「ヤバすぎでは!?剣道を本気でやってる人に一番言っちゃいけないやつですそ!!」


酒場の雰囲気に酔ってきたのか、伊澄は赤裸々に自分語りを始めた。


「私は言い聞かせたよ。剣道は最高に面白いって!許せなかったよ、剣道を愛してやまない私に片手間で勝っておいてつまらない?殺意が芽生えたのはあの日が初めてだ!!」


「わ、悪かったな…」


「そういえば部活を頑張ってたって言ってませんでした?」


「中学で大地に会うまでは嫌いだったよ。実家は武家の末裔でな、今も剣道として秘伝の形を受け継いでんだよ。バカみてぇにガキの頃からやりたくもねぇ形をやらされて、嫌いになるのも当たり前だろうが」


「そうだな…隣町の中学で全国優勝の知らせを聞いたときは余計にムカついたさ。無論私も優勝したが…あれだけの事を言っておいて、まだ剣道をやってるんだ。高校が同じだったとき、私は一緒に練習ができると思って内心怒りどころか喜びすら湧いてたのに…ふぇ〜〜ん」


「急に泣いた…キャラ崩壊してますぞ。不登校への怒りはそれが原因だったんですな」


「これは俺が全面的に悪い気がするな」


「いや、お前は悪くなかった。いや、お前の人生の前半部分は有罪だが、その話をきくと、後半は無罪だ 」


「裁判官か、てめぇは」 


「黙れぇ…お前の剣道は所詮遊びだったんだ…」


「はぁ!?俺も本気でやってたわ!」


 そこからは謎に剣道談義がはじまった。輪田はついていけないので黙り込んでしまった。というか飯に夢中になった。


ーーーーー


 明くる日の朝。パチコは酒場のテイクアウトを貪りつつ泣いていた。


「アニキにそんな悲しい過去があったなんてぇ〜!」


「輪田…話したのか」


「昨日の宴会に同行できなかったのが我慢ならなかったようで…何を話したかを教えましたぞ」


 輪田は意外と押しに強いが、監視役からの目をかいくぐれ無いのを理由に部屋に置いてきたことが少し申し訳なかったそうだ。

すると、ノックの音がした。


「朝からなんでしょうね」


「アタシ隠れますね…」


輪田は広げていたパチコの私物を仕舞い、パチコは凄まじいスピードで木箱に隠れた。


「こんな朝から来んな、ヤ○ルトはいらねぇよ…」


「ヤ○ルトさんではない」


 扉を開けると、伊澄が立っていた。


「おはよう、今日の訓練は休みだそうだ。だから遊びに来たぞ」


 男子寮に軽く入ってきた伊澄に辟易しつつ、大和田は視線が気になったので仕方なく部屋に招いた。


「なんか…広いな!」


「改造しましたからな。って伊澄氏!?」


輪田はかなり驚いた。


「今日は休みか、何をしたもんか…」


大和田は趣味が特にないので悩んでいた。


「町を歩きましょうぞ、異世界の露店を回るのも乙ですぞ!」


そんな他愛のない話をしていると、伊澄が何かに気づいた。


「女物の服…?」


二人は戦慄した。そして目を合わせあったのだった。


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