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5話

早朝、綺麗な空気をつんざくのは伊澄と大和田の怒号だった。


「ちゃんと合わせろ!大和田ァ!!」


「うるせー!俺は輪田に気を遣って動いてンだよ!」


 連携して戦うのにはなかなか慣れない。俺は一人でヤンキーやってたからな。


「まあまあ、大和田氏も伊澄氏もいい動きをしてるんですから、喧嘩はよくないですぞ…?」


 輪田は我の強い二人をいなすのに精一杯だ。普通の人ならメンタルをやられるだろう。


「いい動きなど当たり前だ、私達はその先を目指しているからな」


 しかし、普通のヲタクではない輪田はここで限界を迎えた。


「伊澄氏、少しこちらへ…」


「どうした、もう疲れたか?」


「そうではなく、話があります」


「なんだぁ輪田、内緒話か?」


「あ、大和田氏。新しい道具を作ったので試してみては?」


「おお、コレか!すげぇ!!」


 意外と単純で御しやすい大和田をエサで遠ざけ、輪田は伊澄を諭し始めた。


「伊澄氏、厳しく訓練するのは別にいいんですよ。でもね…それでは大和田氏は制御できませんぞ」


「何だと?ああいう輩は力でだな…」


「大和田氏は元来そこまで話の分からない人間じゃないんですよ…」


「続けろ」


 なんでこんな偉そうなんだ…と思いつつ輪田は話を続ける。


「大和田氏は基本縛られるのは嫌いなんです。だから命令とかするとテコでも動きません。ですが…言い方を変えれば何でもしますぞ」


「ほう、私の言い方はヤツに合っていないと?」


「その通り!そのやり方普通にパワハラというか…」


 苦い表情で輪田が呟くと、伊澄は少しも自覚していなかったのかショックを受けた。


「な…何だとッ…私、パワハラしてたのか…」


 昔のことでも思い出したのか、目の色がコロコロ変わる。


「『合わせろ』とか『当たり前』とか…部活をやったことない僕でも分かるヤバい先輩の典型ですぞ…!」


「う…言われてみれば…!」


 伊澄が部活で疎まれていたのを風の噂で知っていた輪田はその噂がマジだということを悟った。


「じゃ、じゃあどうすればいいのだ!教えろ、いや教えてくれ輪田…!」


 いつも教室で静かに授業を受けていた剣道女子伊澄のこんな姿は意外だった。


「では一つ、具体的に、理由も合わせてアドバイスをするといいですぞ。」


「な、なるほど…私は感覚派だから難しいが、やってみるぞ」


「あ、それとフォーメーションも…いや、やっぱり何でもないですぞ」


「聞こう。輪田、お前は優秀だ」


 輪田は若干驚いたが、冷静に答える。伊澄は自分が認めた相手には寛容なのだった。


「多分大和田氏に細かい指示は通らないので…交代で守備をするのをやめてみては?」


「しかし、交代でなければ攻撃側に疲労が溜まるだろ」


「それはですね…」


そのままディベートが始まってしまい、朝練は終わった。


ーーーーー


「今日の訓練はゴーレムとの対魔物想定の戦闘を行う。最初は自分たちで連携を考え戦ってみろ。そのあと私が指導する」


訓練場の真ん中に大きな石造りのゴーレムが現れた。


「まずは一班、前へ出ろ」


一班の金宮達の班がゴーレムと対峙した。


「行くぞ!!」


 金宮が攻撃役として剣に魔力をまとわせ突撃する。 あわせて補助役で一番優秀といわれている金宮の右腕の白銀太一しろがねたいちは筋力補助の魔法をかけ、魔法使いの本田奈子ほんだなこは後ろで魔法を詠唱した。他の取り巻きは本田の守りを固めており、無難な陣形だ。


「ファイアスピア!」


魔法に気を取られたゴーレムの足を白銀が強化した蹴撃で崩し、頭のコアに必殺の一撃を下す。


「天下撃!」


 水晶玉のようなコアが砕け散り、ゴーレムは動かなくなった。技に名前なんて付けて、金宮もノリノリである。


「さすが勇者、さすゆうですな。」


 そんな戯言を吐く輪田は、抜け目なく何かをメモしていた。色々と金宮の班もガルシアにアドバイスをもらったようだ。無論、少し自己陶酔的な彼は聞いていないようにも見えたが。

 他の班もそれぞれの特徴を活かし、ゴーレムを倒した。倒せない班も出たが、そいつらも逆に気合が入っている。


「大和田氏、我々の出番ですぞ」


「あぁ、やるか」


 結界内に入ると、ゴーレムが動き出した。ピンク色が混じった、石造りのゴーレム。


「よくわかんねーが、この新しい陣形は大丈夫なのか?」


「勿論だ、大和田。お前はお前のベストを尽くせ」


(なんだコイツ急に丸くなりやがって、気持ち悪いな。)


「あァ、わかったよ。ところで聞くが、こいつさっきと色が…」


 言い終わる前に横を通り過ぎたのは…ゴーレムの腕だった。轟音が後ろで鳴る。


「輪田ァ、避けろ!」


完全に輪田を狙った攻撃。輪田にとっさに攻撃を避けられるほどの脚力も反射神経もない。すなわち…と、思いきや。


「危なかったですぞ…」


 輪田は錬金術を使える。錬金術は本来物質の形や成分割合を変える魔法とスキルの複合技術だ。

 彼はその使い方を完全に理解していた。地面をせり上げ、密度を上げて壁を生成し身を守ったのだった。


「成功した…!コレは完全に◯ドですぞ、◯ド!!」


「うるせぇな、早く切り替えろ…は?」


 次の一撃は伊澄に向かう。しかし伊澄はさっきの一撃に萎縮していた。


「っぶねぇなァ!おいクソアマ!!」


咄嗟に伊澄を抱き上げ回避する大和田。


「す…すまない!」


「謝ってねぇで早く陣形組めや!」


「落ち着くのですぞ伊澄氏、予想済みの事態であるからして、ここから攻撃に移りましょう」


「わかった…全力を尽くそう」


 伊澄は神経を研ぎ澄ました。輪田は用意していた強化魔法を発動させ、それを狙うゴーレムの攻撃を伊澄の剣が受け流して逸らす。


「ったく間抜けが…攻撃するぞ!!」


大和田は振り切ったゴーレムの腕を伝って走る。


「大和田氏、右に緊急回避!」


 聞いた瞬間反応する。避ける前の位置に異常な速度の攻撃が入った。


「凄いな…」


「やっぱり…ここまで想像通りだと不安になりますな」


輪田が提案したフォーメーションは確かだった。


『まず思うのは、伊澄氏の剣は"静"って感じがしますが、違いますかね?』


『素人がよくわかったな、私の目指す剣はそっち側だ』


『対して大和田氏の動きを剣で例えると…』


『動の太刀、という訳か』


『それに大和田氏はスタミナが本当に化け物なので、攻撃役は大和田氏に一任しようと思いますぞ。大和田氏がまずい時に伊澄氏には動いてもらいますぞ。』


そんな会話が脳裏に蘇る輪田。


「伊澄氏、次の右腕の攻撃から大和田氏を保護!」


 伊澄も指示を聞き、瞬時に実行。感覚派、というか才能の塊である二人は指示されれば何でもできる。右腕から放たれる一撃を完全に制御し、斜に流した。輪田は地面を動かし、足を崩してゴーレムの姿勢を調整する。


「やればできんじゃねぇか、伊澄」


 伊澄を救い、振り返らず猛進する大和田にはすでに"カッコよさ"が上がりきっている。

 大きく構えた完璧なフォーム。そこが空中であっても、攻撃されていようとも、大和田は構わず敵を殴る。


「死ねェ!カラフル石ころ野郎がァ!」


 大和田が放った一撃はコアどころかゴーレムの全身を砕いた。


「技名考えてたってのに言えなかったじゃねぇか…」


「はは、天下撃はどうです?大和田氏」


「もうその次元は超えてただろ、バーカ」


「お前達、あんなギリギリの戦いをしたのに、気楽な奴らだな」


 伊澄もクスッと笑った。


「メテオアタック!スーパーパンチ!」


「破天の一撃、いや…ゴッドストライクもかっこいいですな…」


「小学生か!!」


 伊澄は確信した。この二人とならばもっと強くなれると。そんな三人に触発されて、他の班にも闘争心が芽生えた。この訓練で、大きなものを得たのだった。


ーーーーー


ある男は、王城の一角に用意された部屋で怒りのあまり机を叩いた。


「ふざけるな、あれは上位ゴーレムだぞ…?」


「ハッハッハ、だからやめろと申したでしょう?」


 豪快に笑うのはガルシアだ。

(彼ならばこの呪縛を……あるいはこいつらを滅ぼせるかもしれぬな)


「黙れ…義賊が勇者を超えるなど、あってはならん!ガルシア、次は…」


「嫌です。」


「何だと…?」


「私はあの子たちが気に入りましたよ。驕らず、弛まず。他を追い抜こうという気概もあっていいではありませんか。」


「私に逆らうというのか!」


「あ、私仕事が終わったので帰ります。さようなら」


男はわなわなと震えた。


「いつか殺してやる、どいつもこいつも…!」


怒りに燃える男。その目的は如何に…

こんにちは、一介です。今回の話は面白かったですか?

この物語が好き、このキャラが好きという方は是非いいねや感想、ブックマークをお待ちしています。有識者や先輩ユーザーの方々もアドバイスお願いします!では、また次回お会いしましょう。

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