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31話

張り詰めた空気の中、竜皇と対峙する金宮、一条、そしてあとから加わった大和田。

「おや、君か。お揃いだね、仕方ないから地上で戦ってあげよう」

クルシェは地に足をつけ、剣を構えた。

「ご丁寧にどうも…ッ!!」

クルシェが瞬きした頃には、既に目の前に迫る大和田。

「なっ…!?」

洗練された動きで剣を振るうその様に気圧される。

(剣が見えない、いや、気配を感じないのか!)

大和田の剣技"霞断カスミダチ"は、空気を乱さず、魔力の揺らぎが起きない。そのため、刃が消えたように感じる。

大和田の戦闘スピードと相まって、不可視の斬撃と化していた。

「どうした、お得意の出鱈目パワーはいいのか?」

「ほざけ!私は手を抜いてなどいない!!」

その通り、クルシェはさっき金宮たちを吹き飛ばしたときのような力を剣に込めていた。

それにもかかわらず、大和田に威力を受け流され、決定打に欠ける結果となっている。

遠距離攻撃を仕掛けようにも、要所要所で金宮達が遊撃してくるので、距離を取ることすら許されない。

しかし決定打がないのは大和田達も同じである。

傷をつけても膨大な魔力で瞬時に回復されてしまい、致命傷にならない。ただ、あちらの体力消耗のほうが多く、長期戦を続ければいつかは勝てそうだった。

「鬱陶しい…!」

「そりゃ褒め言葉だな」

クルシェは敵がなかなか倒れないので、次の一手を仕掛けようと魔力を練り始める。

「お前が戦う理由を忘れていたよ」

「は?」

高密度の魔力で出来た槍を作ったクルシェは、三人が警戒して距離を取った隙に、超高速で明後日の方向へと飛んでいく。

「「まさか…!!」」

飛んでいった方向には、エリュシアのいる塔。

「………」

大和田は黙って剣を構えた。

「何をしてるんだ?」

「早く行かないと!」

勇者二人組は焦った。

「さっさと行け。俺も後から行くから」

大和田のスピードでは間に合わない。金竜を纏った二人ならば或いは…

二人は飛び立った。


ーーーーー


「来たぞ、輪田。ヤバい王子ヤツだ!」

こちらも高速で向かうエネルギーの塊を察知していた。

「命懸けで止めるんですぞ!!」

塔の上にいたエリュシアを護るように、本田、伊澄によって結界が展開された。

秤も剣を重ねてエリュシアの周りに展開する。

輪田は魔法陣を展開した。

「"錬金超化オーバーブースト"…!」

魔法による脳の模倣。これにより輪田は絶大な魔法の演算処理能力を手にする。しかし、エネルギーが足りずみるみる痩せていく。

彼岸は輪田に魔力を供給し始めた。

塔の力でゴーレムからエネルギーを吸い上げ、ひたすらにつぎ込んだ。

輪田はいくつもの魔法を重ねがけし、結界を強化して、周りを岩で覆い尽くした。

そして最後にもう一つ発動させる。

「なんだ…?硬そうだね。関係ないけどッ!」

クルシェは、作った巨大な魔力槍を放つ。

竜皇必滅槍エルドラ・バースト

拮抗する防御壁と魔力槍。鍔迫り合いをするように、甲高い音と波動を起こす。

「耐えろ…!耐えろ…!!」

槍は防御壁ごと爆散した。つまり、耐えきったのだ。

「すごい、耐えたじゃないか」

クルシェは笑顔でそう言った。

対面した兄妹は、睨み合う。

「兄上、私は屈しません…!」

「だから何だ。お前がどうしようと私は止められない。奇襲の一つも対応できない癖に、夢をほざくな」

「私はちっぽけでも、私には協力してくれる人がいます!だから、諦めないんです!!」

「もういい、さっさと消えてくれ」

クルシェはもう一つ魔力槍を作り出し、エリュシアに照準を合わせた。

エリュシアは、自分で魔力障壁を作り、防御しようとする。

(これじゃあ防げません、ここで終わり…?いや、それでもッ!!)

輪田は展開していた魔法を発動した。

魔法陣から現れた男は、槍の攻撃をいとも容易く受け流す。

「危なかったな、大丈夫か」

「大和田氏…」

「よくやった輪田、休んでろ」

その時、エリュシアの脳内である声が響く。

職業ジョブ"軍師"が"君主"へと二次転職しました。新たなスキルが強制発動します。】

そのスキルの名は、"代理戦争"。

発動対象に絶大な力を与える力だ。

「大和田さん、勝ってくれますか?」

「…信じることが大事だろ」

振り返った彼は笑っていた。その頼れる笑顔に、かつての母を重ねて…

「何だ…これ?」

大和田の体を光が包み、輪田達の技で周囲に集まってきていた魂が共鳴する。

光が消え、現れたのは女性だった。

長身の美しい身体に、途轍もないエネルギーが流れている。意志の強さを感じる凛々しい瞳に、後ろ向きの竜の角。

竜皇ルイーズが、大和田の身体を通じて復活したのだった。

「忙しないね、全く。殺したり生き返らせたりさ」


ーーーーー


再び対峙する親子。クルシェの目には、怒りが宿っている。

「さて、いい機会だ。あたしが止めてやるよ、わが息子を」

「死人が出しゃばるな」

その時、ルイーズの身体に変化が生じる。

『待て。人の体を勝手に乗っ取るんじゃねぇよ』

「え?まさかこの身体、義賊の少年の…?」

本来このスキルは所持者の記憶で一番強い者の力を発動対象を媒介に召喚する能力で、召喚されると意識を呑まれるのが普通なのだが、大和田は何故か耐えていた。

『まだアイツと決着がついてねぇんだよ。戦闘中にお前の娘を殺しに行きやがったせいでな』

「流れ的にあたしが戦う流れじゃないの?」

『…知らん』

「ふふ、あはははは!わかったよ。でもこの力を御しきれないでしょ。手伝ってあげるわ」

ルイーズは愉悦を感じた。懐かしさと、新鮮さが入り交じったような感覚を覚えた。ルイーズは暴れ狂う力の奔流を制御するため、大和田と意識を同調させる。

「「じゃ、タイマン張ろうや、クソ野郎(クルシェ)」ちゃん♡」

大和田ルイーズは、剣を向けながらウインクした。

「ふん…望むところだ。私の時代であるということを理解してから逝くがいい!」

誰も介入できない超高速戦闘。最初は戸惑ったが、大和田もすぐに技の冴えを取り戻した。

「アッハハハハ!速え!!なんだこれァ!!」

『落ち着け落ち着け、大和田くん。ハイになってるよ。てか、凄いねぇ。あたしも最初から適応するのは無理だったのに…』

湧き出る力の流れに身を任せ、全身を強化する大和田に、クルシェは必死で食らいつく。その様子にルイーズは呆れた。

「何なんだ…何なんだお前は!このチンピラがァ!」

「まあ間違っちゃいねぇな、その解釈はよ」

めちゃくちゃな速度で放たれる、怒涛の連続攻撃。

クルシェも、魔力で壁を作りながら、小さな魔力槍で弾幕を張る。

騎士といえども、彼と正面から斬り合うことは無理だと判断したようだ。

「腰が引けてるぞ、もっと前に出たらどうだ?」

「そっちこそ距離を取ったほうがいい。これで終わらせてやる」

クルシェは、大きな竜へと姿を変える。そして、その口から、破滅の光線が放たれた。

「死ね!竜皇命滅殲エルドラ・ノヴァッ!!」

「終わるのはお前だよ!鐵剣テッケン竜骨投ストレート!!」

循環する魔力が剣に詰まっていく。魔力で拡張された柄を握り締めて、真っ直ぐに投げ飛ばした宝剣は光線に真っ向から対抗する。

恐るべき衝突の波動。

「ヤバすぎ…ッ!」

本田は箒を塔に突き刺して、しがみついて耐えていた。

「塔がブッ壊れるぞ!」

ゼノンがエリュシアを庇いつつ、生命の危機を感じた。

辺りが光に包まれる。そして…


ーーーーー


「疲れた?」

「あァ、もう動けねぇよ。死んでねぇだろうな、俺」

いつの間にか、元の姿に戻った大和田はルイーズの膝の上に頭を乗せていた。辺りは白い霧に阻まれて見えない。

「勝ったよ。よくやるもんだ、アレを正面から受けるバカがいるか」

「ハハッ…受けなきゃいけねぇと思ったんだよお前の姿なら尚更だ。」

ルイーズは遠くを見つめた。

「優しいんだな、そのナリで」

「馬鹿なだけじゃねぇ?あと一言余計だ」

彼の顔を見て、懐かしい気持ちが再び湧いた。

「一つ、いいことを教えてあげようか」

「有益な情報を頼む」

「もし元の世界に帰りたいなら、天空の森を目指せ。行き方は、キミの周りの人が知っているはずだ」

ルイーズはそう教えて、立ち上がった。

「行くのか?」

「そうだね、来世あしたが待ってる。今度は何になるのかな」

「信じれば、何にでもなれるだろ」

彼女は苦笑して、光の向こうへと消えていった。

すると、後ろから肩を叩かれた。

母上かのじょは往ったようだな。一足遅かったか」

クルシェだ。

「お前も行くんだろ。それとも何か言いたいことでもあるのか?」

「文句はありますが、感謝もしてますよ」

「…感謝?」

クルシェは、ルイーズの歩いていった方向を見つめながら、呟くように喋りだした。

「ある日、声が聞こえたんです。どこからともなくね。私をこの運命みちへといざなう声が」

それに導かれ、彼は狂った。

教わった慈愛を捨てるように、ひたすらに走らされた。

母の愛すら忘れるほどに。

「…やはり世迷言みのうえばなしを聞かせるのは苦手だ。簡潔に教えよう。」

「……」

大和田は黙ってそれを聞く。

「造物主に気をつけろ。それだけ覚えておいてください」

クルシェは、前を向いて歩き出した。

「お前は、何になるんだ」

ルイーズとの会話を裏で聞いていたことをからかうように、大和田は無邪気に笑い尋ねる。

「悪趣味な。…猫にでもなれたら、良い方じゃないですか。」

「そりゃ楽そうだ」

「姉と妹にお伝え下さい。『家族を大切に』、とね」

お前が言うな。そう言いたくなったが、彼はもういなかった。

大和田は、彼らとは反対方向に歩き出した。

目覚めると、仲間達が心配そうにこちらを見ている。

「勝海!」

「死んじゃいねぇよ、安心しろ」

気づくと大和田の手の中には輝く宝玉が収まっていた。

「これが…」

立ち上がり、大和田はエリュシアに宝玉を手渡した。

「大和田さん…!」

「家族を大切に、だとよ」

「ーーッ!?」

エリュシアの目に涙が浮かぶ。

腐っても家族だったのだ。当然そうなるといったらそうなのかもしれない。

後ろを向くと、仲間が見守っていた。

「勝ったな!」

「勢いだけで行くのはどうかと思いますが、まあ結果オーライですぞ」

「大和田、あの馬鹿げた力は何なんだ!」

輪田と金宮は、大和田にそう言った。

「お前ら、今日はもう夕方だし、宿に戻るぞ!」

沈んでいく夕日を背に、クラスメイトたちは騒ぎつつ帰った。

補足コーナー!

こんにちは、一介です。対クルシェ戦は、もっと書きたいことがあったのですが、なにぶん勢いで文を書くもので、いるはずなのに、存在感がゼロの人が何人か生まれてしまいました。そんなあるキャラに何をしてたか伺いたいと思います。

どうです、貴方何してましたか。パチコさん?

パ「お前が本編で書けば良かっただろ。あたしのせいにするなよ?」

ぐ…えっとですね、ルイーズさんの一人称とあなたの一人称が被ってしまいまして、少しややこしいかな、と…

いいから教えて!!!

パ「輪田とかが作った塔の周りで偵察してたよ。全く、あんなバカデカい塔を戦場のど真ん中に建てるから、あたしが働かなきゃいけないんだ。ふざけんな!」

だそうです。ありがとうございました。

皆さんもキャラに質問等ありましたら、ここで取り上げて聞いてみるので、是非感想などで聞いてみてはいかがでしょう。では…


今回の話は面白かったでしょうか?

モチベーションにも繋がるので、レビューや感想をぜひ書いていってください!

ここのシーンが好き、このキャラが好き…なんでも構いませんので、お気軽にお願いします!

不定期更新にはなりますが、投稿は午後7時に統一しようと思っているので、是非ブックマークをして気長に待っていただけると幸いです。

では次回お会いしましょう。

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