25話
王都直通の街道から少し外れた道を封鎖しながら、ならず者達は談笑していた。
「ハッハッハ!マジでこの街道カモが多いな!」
「ほら、またきたぜ!女だ!!」
外套をかぶった女は、近くに来ても止まろうとしなかった。
「おい、ここを通るならカネを払いな。じゃねーと酷い目に合わせるぜ」
「すまない、それは出来ない」
盗賊達は目を合わせて、笑った。
「じゃあ俺達のおもちゃになってもらうぜ!女らしくな!!」
外套を掴み、殴ろうとすると、そこに人はいなかった。
「あ…?」
「恨むなよ。私も仕事でやっているんだ」
綺麗な囁きが聞こえ…斬られる。
「テメェ!何のつもりだ!!」
背後から飛びかかるが、空から何かに攻撃され、倒される。
「流石に多いな。来い、白虎!」
掌印を結ぶと気高き白虎が現れ、狩りを始めた。
刀を操り、護符を駆使して戦う姿は華麗そのものだった。
逃げた先には、不気味な雰囲気の女性が杖を持って立っていた。
「何だテメェ!どけガキ!!」
「誰がガキよ…!」
地面から死霊の軍勢が現れる。痛みを感じない死霊兵たちは狂ったように盗賊を襲う。
逃げ道は見つからない。見つけた者が何者かに殺されているからだ。
その正体は勇者、一条志乃だ。
勇者の基礎能力は凄まじく、スキルを使わずに敵を蹂躙し続けた。
「終わりか。あっけないな」
周りに敵がいないことを確認して、伊澄は魔法道具で空に照明弾を放つ。
すると、グレンダール王国軍がやってきて、盗賊を拘束した。
「凄まじいですね。この後は我々にお任せ下さい」
「勝海は?」
「オオワダさんですか?彼は…」
ーーーーー
大和田は、王国軍を連れ回し大暴れしていた。
「来た!ヤツが来たぞ!」
盗賊からは恐怖の象徴になっていた。
「待てや!人への借りは、人に返さねぇとなァ!」
「そうだ!アニキはお前らみたいな奴は絶対に許さねぇぞ!!」
一人残らず丸腰の男女、大和田&パチココンビにボコボコにされていく。
「続けぇ!王国軍!!」
森に逃げられたり人質を取られたりして、王国軍も盗賊には辛酸を舐めさせられてきたのだ。彼らに感化された兵たちも、剣を納め拳で盗賊を仕留めていく。
相手の武器は、空飛ぶ剣や地面から飛び出す棘に吹き飛ばされていたので、丸腰でも簡単に倒せる。
「全く、どちらが盗賊か分かったものではありませんね」
「そうですな。勢いだけはとんでもないですぞ」
輪田と秤は頷きあった。
「ところであなた、太りました?」
「あ、はい。わざとですぞ。」
錬金術の材料になるのでわざと太ったのだと説明する輪田。
暴飲暴食していたらなぜかパチコに殴られたのだが、無理矢理太った。
説明しても怒られたので、こっそりと、少しづつ太っていったのだ。
「合理的とはいえ、流石の私でもそれは真似できませんね」
「お褒めにあずかり恐悦至極ですぞ」
「…褒めてはないのですが」
しばらくすると、大和田が戻ってきた。
「奥に盗賊の拠点があったぞ。お前ら索敵とかしろよ、罠があったらイヤだ」
「了解ですぞ」
輪田は大和田のところに駆け寄った。
「では私は周囲を警戒しておきましょう」
洞窟にできた盗賊の拠点に入ると、そこはもぬけの殻だった。
「誰もいねぇな、ここに追い詰めるように進んだはずなんだが…?」
「あ、こっちの壁ができたてですぞ。魔法で造った痕跡がありますな」
輪田はあたりを見回して、壁を指差した。
「お前の鑑定、そんな優秀だったか?」
「あ、これの効果ですぞ」
輪田は指輪を見せてそう言った。
「迷宮の時のやつか。なんか見た目が違うような…?」
「その通り。これは迷宮で手に入れた指輪にあるアイテムを錬金術で合成したものですぞ。鑑定によると、その名は威霊の錬金石というそうです」
「へぇ…なんなんだ、それは?」
敵がいないのをいい事に二人は雑談を始めてしまう。
「戦争のときに賢者の石という人体錬成でできるヤバい代物を敵軍のゾンビで作りましてね…」
「おい!?なんか物騒だけど、いいのかそれ?」
流石の大和田も心配になった。
「まあ、それが打開策だったので…」
「今更の話か」
「そういうことにして貰えるとありがたいですな」
そういうことになったので、輪田は呑気に説明を続けた。
「賢者の石を作って、敵軍相手に無双できたとこまでは良かったんですぞ。でも、その後一人では制御不能になってしまいましてね」
輪田の話によると、賢者の石は人間の複数の魂が合成に対して拒否反応を示して爆発寸前だったらしい。
そこで傀儡師の鈴木と神聖術師の今田が協力して、浄化を手伝ってくれたそうだ。鈴木の支配魔法で無理矢理石の力を抑え込み、少しずつ今田の神聖力で絡まった魂の浄化、分解をした。輪田は鈴木にエネルギーを供給し、制御をサポートする。
「それで出来上がったのがこれですぞ。持って帰って調べていたら、これの元となった指輪と強く反応する事に気づいたのですよ」
すこしワクワクするような話を、大和田は謹聴している。
「合成したらびっくり、装備した時に魔力の流れや周りの環境が可視化されるようになった、新生錬金術師専用指輪の完成ですぞ」
「スゲェな、俺の外套もなんか合成したら強くなんのかな」
「さぁ…?でも可能性はゼロではありませんぞ!…っと、話しすぎましたな、この壁を開けますね」
壁の土を錬金術で分解し、通れるようにすると魔法陣が設置されていた。
「これは…転移魔法の術式ですか」
輪田が解析したところ、そこまで性能は良くないようだ。
「座標的に考えると、遠くに行ったわけでは…って、これ護衛対象の降り立つ港ですぞ!?」
「はあ?つまりどういうことだ?」
「港町に拠点を構えられるということは、ただのチンピラではない、ということですぞ」
大和田は少し考えた。
「そっちのスジってことか?」
そう聞きながら、大和田は昔不良をボコしたときに出てきた強面の黒服を思い出す。
「おそらく。あの町には有名な日陰者は聞いたことがないのでおそらく小規模ではありますが…」
「行ってみるか?」
大和田はうずうずしながら言う。
「これを設置してるとなると、相手は完全に黒なので処罰は確実にできますからな。ありですぞ」
「じゃあ行ってくる。輪田、お前は報告な」
「了解ですぞ。それと出待ち対策にコレどうぞ」
輪田は一つのビー玉のような球体を袋から取り出して大和田に渡した。
「…?」
「照明弾ですぞ、目潰ししてから侵入したほうが吉かと」
「ありがとよ」
照明弾に魔力を込め、先に魔法陣で向こうに飛ばす。
「じゃ、行ってくる」
「迎えに行くので落ち着いたら待機してて下さい」
大和田は魔法陣に吸い込まれていった。
「心配はしてませんが、どうなることやら…」
ーーーーー
転移した先は建物の中だった。狭めの部屋に出たので、辺りを探った。カーテンを外した外を見るに、ここは二階のようだ。
「誰もいねぇな…」
しかし、外には明らかに人の気配がする。
「ちょっと、やめて下さい!何なんですかあなた達は!?」
「黙れ。こっちも仕事なんだよ、お姫さん。アンタを他国に売り渡しゃ、俺等は大金持ちなんでね」
聞き耳を立てていた大和田が、そんな会話を聞き取った。
(おいおい…まさかコレって、金宮がやらかしたのか?)
ドアを開けると、見張りが立っていた。
「なんだ、見ねぇ顔だな。雇われた盗賊か?」
「あぁ、国に雇われた義賊だぜ」
「は?お前なんて…ぐっ!?」
一瞬で首を掴み、さっきの部屋に引き込む。
「仲間の数と配置、あと目的を吐け。そしたらお前だけは助けてやるよ。それか、金もやろうか?」
そのただならぬ覇気に、彼我の差を悟った日陰者はそれを聞き嗤う。
「イイね、教えてやる。正確な数や配置はねぇが、目的はここに来る竜皇国の姫君の誘拐と売却だ。うまく行ってると思ってたが、あんたみてぇなのが動いてたとはな…!」
その男も雇われで、あまり情報は持っていなかった。
「わかった、豚箱で会おう」
「は…ぐブゥ!?」
大和田は男の腹を殴り、気絶させた。
「バカは単純で助かるぜ。さて、手柄でも持って帰るか」
大和田は力を込め、地面を殴る。
たちまちに床は砕け、大和田は一階に降り立った。
「何だテメェ!!」
「よお、どいつだ?」
「私ですッ!!!!」
縄で拘束された同い年くらいの少女が轡を噛みちぎり、声を張り上げて叫ぶ。
「いい顎と返事だな、オイ」
「動くな!こいつがどうなっても…」
サングラスをかけたボスらしい男がそう言いかけた頃には遅かった。
刹那、少女を掴んでいた男の顔が凹み、吹き飛ぶ。
すでに少女はそこにはいなかった。
「ひゃっ!?」
「じゃあな、カス共!」
大和田は笑顔で壁を蹴破り走り去る。
「奪われてどうする!追え!!」
下っ端が必死で追跡を始めた。
「おい。"カマイタチ"、仕事だぞ」
「……ふん」
サングラスの男が横にいる和装の男に話しかけると、男は風のように消え去った。
大和田は町を駆けていた。後ろからはヤクザ顔負けの強面男達が本気で追ってくる。
「おい、"帰路の群星"の護衛はどこにいやがる!」
「あの…勇者様のことですか?」
「そうだ!金髪のあのバカはどこで何をしてやがる!」
「私の護衛中に周りで事件が起きて…勇者様が解決しに行った隙に死角からさらわれてしまって…!」
(余計な仕事増やしやがって…!本当に俺のお手柄でどうすんだよ!?しかも後ろから来るこの気配…ただ者じゃねぇ!!)
振り向かず走りながら、大和田は思考する。この町は来たことがなくて土地勘がないのだ。
「お前、魔法使えるか?」
「え、はい!」
「上に撃て、一番派手なやつをな」
「え、どうして…」
「仲間は祭りによくたかるからな、はよやれ!」
少女は呪文を唱え、空中で大きな爆発を起こした。
あまりの威力と爆風に、大和田はぶったまげた。
「やりすぎだろ、コレは…!」
ただ、仲間を呼ぶには十分過ぎた。
「大和田!!何でここに!?」
金宮が駆けつけたのだ。しかし、大和田は金宮を無視して通り過ぎた。
「は…?」
目の前には見るからに野蛮そうな集団と人斬り剣士。
「任せたぞ、隙だらけ勇者〜!」
馬鹿にしたような口ぶりで、大和田は走り去る。あと何故か護衛対象の姫があっかんべーをしていた。大和田に指示されたらしく、ぎこちなくて可愛いものだったが、それよりもイラッとした。
(何でこんな損な役回りに…!?)
自業自得である。相棒の白銀に制止されたのにトラブル解決に行ってしまい、護衛に支障が出たからだ。
このあと、勇者金宮は図らずも最初の武勇伝、"ヤクザ百人斬り"を達成する。が、この状況ではどうでもいい話である。
ーーーーー
姫の行方も追えず、金宮が先走って途方に暮れていた金宮班の四人。
「あれ、大和田っちじゃね?」
「本当だ!姫様抱えてるよ!?」
「マジじゃん。俺索敵するわ」
「ハァ、良かった…!」
白銀はほっとため息をつく。が、いきなり顔面に蹴りが飛んできた。
「テメェら、仕事しろや…!」
「「「すいませんでした…!」」」
その言葉に皆ぐうの音もでない。
「まあいいや、さっさと安全なとこまで連れてくぞ」
「あの、下ろしてくれませんか…?」
「あ、悪いな。じゃなくて、失礼しまし…致しました?」
「ふふ、苦手なら敬語は結構ですよ。恩人なんですから」
緑髪の姫は綻ぶように笑った。
金宮は完全に忘れられ、和気あいあいとしていると、ガタイのいい男が不安そうに走ってきた。
「姫様、お怪我はありませんか!」
「大丈夫よゼノン、この殿方が助けて下さったの。」
「この男が?なにやら野蛮な見た目ですが…」
ゼノンという名の立派な鎧を着けた男は、不審な目で大和田を見た。
「あ?」
「姫の御前だぞ。もう少し畏まったらどうだ」
「オヒメサマには畏まるが、テメーには畏まらねぇよ。ナメてんのか?」
「礼儀を知らぬ輩め」
「ハッ、笑えるぜ。主人をさらわれておいて、お前こそ恩人の俺に対して礼儀がなってねぇな」
その前に同僚が致命的なミスをしたのは自分の責任ではないので棚に上げる大和田。
「貴様…」
「早くこの町を去りましょう。町の人の迷惑になりますよ。それと、私はオヒメサマですが、ちゃんとというエリュシアという名前があります。」
この場を収めようと、緑髪の姫君エリュシアは鶴の一声をあげた。
そこに輪田達も合流する。
「大和田氏、来ましたぞ。無事そうで何よりですな」
「お仲間ですか?」
「おや、もしや貴方様が姫君ですか?お初にお目にかかります。その通り、大和田氏の相棒の輪田と申しますぞ」
「このようなだらしない体型の男が護衛…?」
ゼノンはまたも怪しむような目線で輪田を睨む。
「…少し黙りなさい、ゼノン」
「はっ、失礼しました」
後ろからついてきていた秤は無駄話にしびれを切らして発言した。
「予定から随分遅れているようですが?」
「あ、そうですな。では行きましょう!大和田氏はアクセラレーターを持ってきたので、それに乗って先導をお願いしますぞ。前後を我らの馬車で守って進むので、ええっと、そこの強そうな御人は…?」
「ゼノンだ」
輪田の質問に軽く答えるゼノン。どうやら優秀な人間が来たと察したらしい。
「ではゼノンさんは姫君と共に真ん中の馬車に乗っていただき、護衛をお願いしますぞ
「承知した、輪田殿」
後は皆空気を読んで前後のメンバーを決め、馬車に乗った。
「あの…"アクセラレーター"?とはどういうものなんでしょうか?」
「魔法で動く二輪の車ですな。僕の設計なので、馬の数倍は速いと自負しておりますぞ!」
大和田はヘルメットを被り、外からアクセラレーターを持ってきた。
アクセラレーターは前回の使用から改良され、車体のデザインが空気抵抗を減らすような形になっていた。メタリックな赤色は、見る者の心をくすぐる、ロマン全開の見た目だ。
「わぁ、かっこいい!!」
エリュシアはアクセラレーターの周りを回って色々と見始めた。
「「あの…」」
中々出発しないのでイラッとした秤とゼノンの声がシンクロした。驚いて目が合った二人は苦笑しあった。
「苦労しますね、子守は」
「全くです。気が合いますね」
エリュシアは急にわがままを言い出した。
「ゼノン、私はコレに乗って王都まで行きたいわ!」
「「はあ!?」」
またもやシンクロする2人。
「どう考えても危ないでしょう!だいたい…」
「大和田さん、早く前を走りなさ…」
もうバイクは走っていってしまった。それもエリュシアを乗せて。
「すご〜〜い!!速いです!本当に魔法で走ってるんですね!」
「これは怒られ確定だな。お前が弁護しろよ?」
「わかっています。あと私はエリュシアです。もっと速度出ますか?」
「怪我させたら即処刑だから出さねぇ」
なんなら大和田は身につけていたライダースジャケットとヘルメットを危険防止のためエリュシアに着せているのでノーヘル&軽装状態だ。絶対に事故りたくないのである。
「お、盗賊だ」
道端で追い剥ぎをしている盗賊を大和田は撥ね飛ばした。
「うわ…すごい威力ですね」
「多分アイツはもう虫の息だな」
二人は王都までツーリングを楽しんだのだった。
こんにちは、一介です。今回の話は面白かったですか?
この物語が好き、このキャラが好きという方は是非いいねや感想、ブックマークをお待ちしています。有識者や先輩ユーザーの方々もアドバイスお願いします!では、また次回お会いしましょう。




