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番外編・群星の休暇

クラスメイトたちは帰路の群星(ノスタルジア)としての活動に慣れてきて、遠征の費用をさらに集めるため、日々働いていた。

早朝、目が覚めてしまった本田は、女子寮の共用スペースで寛いでいると、装備を着けた伊澄がギルドに向かおうとするのを見つけた。

「灯香っち〜、おはよ」

「奈子か、おはよう。こんな朝に起きてるなんて珍しいな、どうしたんだ?」

「灯香っち、なんか最近頑張り過ぎじゃない?そろそろ休んだら?」

「うむ。しかしな、資金集めは重要な仕事で休むわけには…」

そうは言いつつも本田の言葉で伊澄は確かに働き過ぎているな、と気づいた。

「別に誰も文句言わないよ〜!だって伊澄っちトップクラスで働き者なんだし」

クラスメイトの中では、今田・伊澄・鈴木が働き者の3大巨頭だ。

「そうか…。まあ息抜きがなくては精神もすり減りそうだ。今日は特に急ぎの仕事もないし、休むとしよう」

伊澄は装備を片付け始めた。すると、続々他の女子も起き始めた。

本田は朝食を食べていた女子達に話しかける。

「ねぇ、今日皆休みでしょ?」

「おはよう、奈子ちゃん。うん、休みだよ」

「女子会っていうか、女子だけでお出かけしない?」

「いいね、それ私もいく〜!」

鈴木も手を挙げた。

数人のクラスメイトも賛同し、行くことになった。

「灯香ちゃんはどうする?休むことにしたんでしょ?」

「えーっと、私は…」

「ね、行こ!灯香っち!」

本田の屈託のない笑顔に伊澄は負けた。

「わかったよ、行こう」

「決っまり〜!」

準備が整い、外に出ると大和田が通りがかった。

「あ、大和田っち。どうしたの?」

「さっき城門にワイバーンが数体出たって、オリ…ギルマスがウチに泣きついてきたから行くだけだ」

大和田は軽くそう答えた。

「金宮達は?」

「あいつらはギルマスが来た頃にゃ遊びに行ってたよ。輪田も忙しそうだったし、他の奴は来ても足手まといだから俺だけだ」

「「え…」」

女子達は気が引けた。

大和田は珍しいメンバーだな、と思いつつその姿を見ると、あきらかにオシャレをしていたのに気づいた。

しかも、伊澄までいたのだ。今田と目が合って、そこで察した。

「あ〜…まあ相手もザコだろ。気にすんな、俺だけで十分だ」

鈴木はニヤニヤした。

(不良が空気読んでてなんかうける)

「何だ、言いたいことでもあんのかテメェ…」

「イヤ、ナンデモナイヨ」

大和田は逃げるように走り去った。

「大和田君、ストイックだよね…」

「ね、最近マジでイメージ変わってる」


ーーーーー


女子達は戦争が終わり活気だつ町を散策した。

「灯香っち、いつまでもその支給服でいるけど、服買った方が良くね?」

「いや、別にこれも着れるしな…」

伊澄もおしゃれは好きだが、仕事の方が大事と思うタイプなのだ。

「そんなんじゃ大和田君も振り向いてくれないかもよ…!」

「は…何だと!?私は別にそういう気持ちでアイツと接してるわけじゃない!!」

「はいはい、服屋見ようね〜」

結局、女子達の勢いに押されて服を買うことにした。

「灯香ちゃんは何もしなくても可愛いしスタイルとか良過ぎるから何でも似合うね」

「そ、そうか?」

「灯香っち、これは〜?」

本田が持ってきたのは、深いスリットの入ったドレスだ。

「そんな大胆なやつはいらない、試着する必要も…」

「「………」」

無言の圧にまたもや押され、着てしまった。

「ちょーかわいい!!」

「うわ、ビジュよすぎでしょ!」

「何で今までおしゃれしなかったの?無知の罪超えて無知の大罪だよ!!」

その後、色々と見て気に入った服を購入した。買った物は後日届けてもらうことにした。

昼は城下町の外でピクニックすることになった。

商店街で弁当を買って、揃って外に出る。

門を通り抜けようとしたら、大きな荷車が大量に運ばれてきていた。

「なにこれ?」

「これ、ワイバーンじゃない…?」

今田はある男を想起しながら呟いた。

血塗れのワイバーンの死体が運ばれていたのだ、それも十数体。

「オオワダはバケモンだよ!こいつら全員独りで殺しやがった!!」

「怖ぇ、異界の戦士は何回か見たけど、あんな強いのは初めてだよ…」

一緒に戦場に出たものの、ワイバーンには歯が立たなかったようだ。

「「……」」

見なかったことにした。

門を抜けた先の丘に、敷物を敷いて弁当を広げる。

「いい景色だね〜。まじ平和!」

「ほんとにね、戦争が嘘みたい。」

空は晴れ渡り、緑の平原が広がっていた。そして、赤い血の塊が一つ…

「…あれは何だ?」

伊澄達はそれが人だと気づいた。

「まさか…おーーーい!!」

「結構遠かったが、聞こえたみたいだ。こっちに来るぞ」

真っ赤な人間の正体は、薄々気づいていた通り大和田だった。

「何してんだ、お前ら…」

「うわ、生臭ッ!?」

「ワイバーンの血なの?ケガは?」

「軽く切り傷があるくらいだな、マジで疲れたわ」

本田は生活魔法を使った。この系統の魔法は身体や服を清潔にしたり、生活に便利な効果を持つ。

「悪いな」

とりあえず町を歩ける程度にはなったようだ。

「これ、弁当ね。多かったからあげる〜」

「おぉ…スゲェ量だな…買い過ぎだろ」

大和田は礼を述べてからそそくさと帰った。

「ここで食べないんだね…」

弁当を渡した今田は呟く。

「こんな女子女子してたら勝海も落ち着かないだろう」

それとあるが、いきなり掃除やら治療やら手際よく行われて、大和田はびっくりしたのだった。

「てかさ、灯香っちって大和田っちのこと下の名前で呼ぶんだ」

「え?」

「「やっぱりそういう…?」」

「違う!」

慣れないながらも、伊澄は女子トークを楽しむのだった。


ーーーーー


夕日も沈みかけたころ、女子会は寮に戻ってきた。すると、張り紙がしてある。どこか見覚えのあるデザインに、小堂の手書きの文章が書いてある。

「これは、学級だよりか?なにか連絡だろうか。」

『お知らせ。少し前にグレンダール王とお話する機会があって、温泉の話になったんだよ。それで…』

「先生は、文才が無いのかも」

あまりに分かりにくい文に、鈴木が毒を吐いた。

要するに、王と話していたら風呂の話で盛り上がって、城の大浴場を1日貸し切って使えるようにしてもらったらしい。

外で学級だよりを読んでいると、金宮が通った。

「あ、帰ってきたのか。男子はもう入って、僕が最後だ。後は女子で使うといい」

「そうなんだ、わかった。すぐ皆で行くね」

今田は金宮にそう言った。

金宮はかすかに湯気を立ち昇らせて、満足気に男子寮に戻っていった。


ーーーーー


城の大浴場は、ふわりと湯けむりがたっていた。

「広ーーい!」

「ほら、志乃ちゃんに萌花ちゃん、遠慮しないで」

「久しぶりに見た。こんな大きなお風呂…!」

「わ、悪くないわね!」

並んで身体を洗い、湯船に浸かる。

「照屋さん、でっか…」

鈴木は照屋の胸をガン見した。

「うるさいわね…でも、ちょっと自慢なの」

「「む…」」

今田と彼岸の唸りがシンクロする。二人とも自分のと比べて、少しだけ劣等感を抱いたのかもしれない。

「あ…えっと…」

「ふん、大きさだけが価値じゃないわ。あなたもそう思うでしょ?」

「えへへ、そうだね…!」

二人は顔を見合わせて、苦笑し合った。

一条はなんとなく気まずくて、湯船から出て周りを見渡す。

すると、浴場の端に木製の小屋のようなものを見つけた。

「蒸し風呂…?」

ドアには「使用中」の看板。

一条は好奇心が抑えきれず、入ってみることにした。

ドアを開けると蒸気が押し寄せ、抜けていく。

「zzzzzz…」

「え…? 」

一旦閉めた。蒸気で顔こそ見えなかったが、明らかに男性がいた。

あらかじめタオルを体に巻いて、もう一度のぞく。

そこには、全身が引き締まった大和田が、汗だくで寝ている姿があった。

(え?!どゆこと?!もう男子入ってないって金宮アノヒトいってたよね!?てか何で寝てるの…?死ぬよ…?)

大混乱である。

「志乃っち、どうしたの?」

本田が気になって見に来た。

「えっと…あの…あ…あの…ヒトが…!」

「よくわかんないけど、この中誰かいるの?てかこれ何?サウナ?最高じゃん」

本田は何の躊躇も無く開けた。

「え!?」

その驚きの声は、大和田を起こすには十分な声量だった。

「んあ…寝てたか…?」

そこで、本田と目が合う。もちろん本田は大和田がいることなんて知らないため、生まれたままの姿だ。

「は…?」

「えっと…もしかしてこれ、金宮バカの見落とし?」

本田は焦り過ぎて逆に冷静に、持っていたミニタオルを大和田に目隠しとして使った。

「もうちょっとここにいれる?」

「…大丈夫だ」

(全身真っ赤だし、絶対大丈夫じゃないでしょこれ。)

もちろん丈夫な大和田も、蒸し風呂で寝ては熱中症必至だ。

「一応聞くけど、大和田っち。わざとじゃ…」

「殺すぞ」

不良に見えて大和田は超硬派だった。というか、奥手とも言う。

「だよね…待ってて!」

もう数人は出ていったが、湯船にはまだ人がいる。

「さっき向こうに行ってたが、どうしたんだ?」

伊澄は戻ってきた本田に尋ねる。

「落ち着いて聞いてね…まじで衝撃ニュースだから…」

大和田が見落とされて、気づかず自分たちが入っていたことを告げた。

「「ええええええ!?」」

当然の反応。風呂の間沈黙を貫いていたパチコすら反応した。

「え、じゃああそこに一糸まとわぬアニキが…!?」

「お前は見に行くな」

「なんでだよ!介抱しなくちゃ…!」

パチコは何故か他の女子に連行された。

「バカがいなくなったな。」

とりあえず外に転ばせて冷やすことにした。

目隠しした状態で出てきた大和田は、真っ赤になっていた。それがどういう方向のものなのかは、もはやわからない。

(身体凄ッ…)

彼を見た全員が思った。転移前から喧嘩に明け暮れた大和田は、贅肉はおろか、無駄な筋肉がついておらず、細く、それでいて頼もしい感じに引き締まっていた。

伊澄に関しては、赤面して目を逸らす。すると、巻いていたタオルが落ちた。

「うおッ!?」

綺麗にタオルを踏んでコケる大和田。

そのまま前に倒れ、気付いたら伊澄に覆いかぶさる様に受け身を取っていた。

「「あ…」」

顔の距離がかなり近い、というか、色々丸見えだったのだが、洗いたてのシャンプーの香りやらなんやらで、二人とも脳がパンク寸前になった。

周りの人も、その状況に息を飲む。

「あ、あ…どりゃあッ!!」

「がっ…!?」

伊澄の全力パンチで、大和田は綺麗に吹き飛ぶ。

「何なんだ、つくづくツイてねぇな…」

目の前にはタオル一枚の女子達がいる。とんでもないラッキースケベなのだが、大和田は熱中症も相まって気絶した。

「なんだろう、不憫だね…!」

裸を見られたとか、云々抜きにしても色々と可哀想だと鈴木は呟いた。

「仕事で疲れて、寝てたみたい。」

今田は大和田の状態を解析して、そう言った。

ワイバーンに受けた傷は治っているものの、身体には疲労が溜まっていた。それと、さっき倒れて頭を打ったので、こぶができている。

「とりあえず、なかったことにする?」

照屋は気まずそうに提案した。

「「うん…そうしよう…!」」

そんなこんなで、彼は服を着せられ、男子寮に運ばれた。

女子たちは、少し気まずさが残ったのか、出かけたチームが自然にお開きになった。

大和田は目覚めたものの、風呂での事件は覚えていなかった。しかも、女子全員が口を噤んだので真相も分からずじまい。

本田たちにとっては楽しい、大和田にとっては不幸な休日(?)が幕を降ろしたのだった。


こんにちは、一介です。今回の話は面白かったですか?

この物語が好き、このキャラが好きという方は是非いいねや感想、ブックマークをお待ちしています。有識者や先輩ユーザーの方々もアドバイスお願いします!では、また次回お会いしましょう。

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