表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/36

2話

 色々と訳あって異世界に来た大和田は今、太ったメガネのオタクである輪田と相部屋の掃除をしていた。

「はあ…」


「どうしたんですか大和田氏。朝から元気がないですな」


「放っとけよ、うるせぇ奴だな」


「言い方がきついですぞ……」


(大体なんなんだ。勝手に呼び出しておいてこんな狭い部屋に二人一組とは…ふざけやがって。)


「大和田氏、ここに服を置かないでもらえ…え?」


 学ランと一緒に置いてあったアウターを手にとって、突然輪田は声を止めた。


「あん?」


「お、大和田氏、服から、服から女の子が!」


 フードの中から、制服を着た手のひらサイズの少女が出てきたのだ。流石の大和田も輪田の手のひらに載った少女を見て驚愕した。


「なんだその聞いたことがあるフレーズはよ、見せてみろよ。……コイツは……!?」


「むにゃ…アニキ、大きくないですか?これはアタシのアニキを慕う想いが具現化して…?」


少女は目覚めたてのようで目をこすりながらそう呟いた。


「何をふざけたことを言ってやがる、パチコ」


蜜蜂映子みつばちえいこといって、見栄を張って吐く嘘が下手なためパチコと大和田は呼んでいるそうだ。


「な、アニキ…!?てかここどこ?てかこの馬鹿にでかいブタ野郎はなんスか?!」


「ぶ、ブタ……辛辣ですな」


相変わらず口が悪いやつだな。


「大和田氏、この方は?」


「こいつはパチコ、ヤンキー時代について回ってきやがってた鬱陶しいヤツだ」


「ひどい!アタシはアニキに助けられたんですよ!?恩返しの為にこんなに可愛い後輩がお供してたのに、なんすかその言い草はァ!」


 そうだった。こいつはザコのくせにスケバンだとか言っていきがって男に囲まれて襲われそうになってたとこを助けたんだっけか。


「にしてもなんでここにいやがる?お前は不登校だから学校にきてなかったし、学年も違うはずだろ」


「そりゃアニキの高校復帰を覗きにきてたに決まってるでしょ!窓から覗いてたらいきなり地面が光って気づいたらここだし、なんか身体は小さいしでびっくりッスよ」


「あっそ、じゃあこっちからも色々教えてやる。ここは異世界で俺たちはこの国のお偉いさんに呼び出しを食らって帰る方法はほぼほぼない、以上だ。分かったか?」


「あ、そっすか。へぇ〜〜。まぁアニキといられるならどこでも都っすよ〜〜!」


「黙れ」


「二人ともスーパードライですな」


「あん?そうか?」


「はい、ついでに言うと大和田氏を慕ってついてきてるのにこの対応は可哀想だな、と思いますな」


 このクソガキの無駄に整った顔に絆されたのか、輪田がパチコの肩を持っちまった。


「お前はこいつがどういう奴か知らないからそんなことが言えるんだよ」


「彼女は一体何を…」


 大和田は数々のパチコの蛮行が脳裏に浮かんだ。勝手に因縁をつけて俺を盾にしたり、喧嘩中に他の連中にまでちょっかいをかけて袋叩きにされかけたり…


「思い出したくもない。まあいい、お前どうする?」


「もちろんアニキについていきますよっ!!」


「却下」


「そんなぁ!」


「プッ、嘘だよ。お前が巻き込まれた理由が俺にあるなら俺がケジメを付けなきゃな。ただ俺の指示には従えよ?」


 大和田は面倒見が良いのだ。そういうところが彼女の乙女心を刺激するのだが、それは彼の知るところではない。


「はいっ!よろしくお願いします!」


「くれぐれも余計なことをするなよ?余計なことはな!」


 そんなわけで小人になった舎弟パチコが仲間に加わった。すると、輪田が少し思案して発言した。


「ところで大和田氏、提案があるのですが」


「なんだ?」


「パチコ氏の存在を隠しておきませんか?」


「どういうことだ?」


 詳しく質問すると、輪田は早口で話し始めた。


「僕の長年蓄積された転生ものの話の記憶を辿るにたまに呼び出した国の人間がとんでもなく危険な奴だったりするのですよ。そうなった時に行動を把握されない味方がいたら便利では?」


 思ったより良いアイデアに、大和田達は感嘆した。そして、彼は良いアイデアはすぐに取り入れる。


「そうか、じゃあそうしよう。他のクラス連中にも黙っとけよ」


「勿論、情報はいつどこで流出するとも限りませんしね」


「それに今のアタシじゃあオタク野郎の仮定が本当だったとき見つかりでもしたら人質ルートまっしぐらっすもんね」


 確かに。悔しいがそうなればパチコごときのせいで俺は国の連中に逆らえなくなるな。


「そろそろ訓練時間では?行きましょう、大和田氏」


「パチコ、お前は…」


「大和田氏、この部屋に置いていくのは危険ですぞ。ベッドメイキングが来るらしく、パチコ氏が十中八九見つかってしまいますからな。僕は錬金術士の練習で屋内なので、僕の手提げに入るのはどうですか?」


「……オタク野郎の鞄?」


「よしそうしよう。大人しくしてろよパチコ。じゃあ俺は訓練行ってくるぜ!」


 大和田は颯爽と駆けていった。


「あっ!逃げた!?待ってアニキ、ってもう行っちゃった…」


「パチコ氏、何卒大人しくお願いしますよ?」


「……チッ」


 自らハズレくじを引いたが、輪田が自分で提案したことなので複雑な気持ちになった。


ーーーーー


 訓練施設に行くと、既にクラスメイトや兵たちが集まっていた。クラスメイト達はそれぞれ準備体操やアップを済ませて待機している。どうやら遅刻したようだ。


「訓練を始める。午前は基礎体力、午後は能力スキルの検証だ!」

午前中は訓練施設を走り回った。


「おい貴様、遅刻者だろう?追加で十周走ってこい!」


「…ッス」


 別に走るくらいならどうということはないが、絶対に目を付けられている。

 追加の十周を走っていると、なにやら人が四五人たむろしている。近づくと若い四人の訓練兵であることがわかった。


「おい止まれ。異世界人」


「あァ…?」


「お前初日から遅刻とは調子に乗ってんな」


「だからなんだよ、そこをどけ」


「ふざけやがって、身の程を知れクソ野郎!」


(ランニング中だってのに因縁付けてきやがった!)

 だがここで喧嘩を買えばクラスメイトとの距離が遠くなりそうだと思った大和田は、グッと拳を抑えた。

「いや〜すいませんね、腹が痛かったもんで。昨日宰相の唾でも口に入ったかもしれねぇ」


「ブッ…お前、それ…ブハハハハ!」


意外とこの国の若者は国に忠誠心がないんだな。


「お前を叩きのめせと言われてたが、やめだやめ!」


「こんどウチの寮に来いよ、お前なら歓迎するぜ」


やっぱり教官の差し金だったか。


「どうも〜」


俺は何事もなくペナルティのランニングを終えた。


「な、お前!終わったのか…?」 


「なんだよ、ぶっ倒れるとでも思ったのか?」


「いや、何でもない。飯を食ってこい」


「ッス」


(まったく、おもしれー顔してやがったな。)

 初日の昼食はマッシュポテトと…なにかの肉を焼いたもの。刑務所のような待遇にさっきの興が冷め、大和田はため息をついた。


「おい、ババァ。ここに使っていい食材はあんのか?」


「え、今はもうないけど。何に使うんだい?」


「俺が飯を作りてぇ」


「へぇ、やっぱりコレは不満かい?」


「たりめーだろ。俺は囚人か?」


「わかったよ。明日は料理せず待っとくから、午前の訓練を早く終わらせて来な。料理に文句を付けるのはそれからさ」


 大和田を舐め、挑発するような事を言う食事係のおばさんに、闘争心を刺激されつつ、大和田は飯の一部をパチコ用に包んで、午後の訓練に繰り出した。


「ステータスボードを、注視してスキルと念じてみろ。スキルが表示されるはずだ。確認できたら、各自発動しろ。」


 ステータスボードに熱い視線を注ぎつつ、スキルと心のなかで唱える。

義賊専用スキル

・武器マスタリー(B):あらゆる武器の基本的な使い方がわかる。

・義賊の余裕:状況に左右されない判断能力を得る。

・義賊のテクニック:錠前開けなどの盗賊の技術アーツが一通り使える。

・崩れぬ気勢:体力のある限り、致命的な身体欠損や状態異常に抵抗する。

非専用スキル

・ツッパリ:カッコよさに比例して攻撃力が上がる。

・覇者Level1:登録した仲間の状態やスキルがわかる。また、所持者のステータスを参照して登録した仲間のステータスが上昇する。

という情報が、いきなり頭に浮かんだ。

(職業スキルや覇者とかはなんか強そうだ。にしても、ツッパリのカッコよさってなんだよ!?誰がそんなステータスを決定するんだ?)

 義賊のスキルはほとんど常時発動型パッシブだったようで、使うと念じると"義賊の余裕"の効果で心が落ち着き、いつもより周りが見えてくる感じがした。視野が広がったような気分になった。


「おお、なんでだ?解るぞ。こんな武器なんか初めて持ったのに…」


 武器を握ると、その使い方が熟練のように理解できた。頼り過ぎは良くなさそうだが、大和田のスキルは基本的に使い勝手がいいようだ。

 周りを見ると、委員長は回復魔法を強化するスキル。クラスのリーダー格である金宮かなみやは魔法と剣を組み合わせることができるスキルを身につけていた。

 いまだに魔法というものをまじまじと見たことはなかったが、不思議なものだ。手から火が出たり雷がいきなり降るとか、まったくふざけた世界である。

 スキルを使って色々やっている内に、その日の訓練は終わった。明日は何をするのか。未知の力に関心を持ちつつも、大和田は鍛錬を続けるのであった。
















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ