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十五話

王都が戦いの渦が現れ、民衆は逃げ惑っていた。その中心にて、大和田達は厳しい戦いを強いられている。

「なんなんだ…こいつらは!?」

「何回倒しても起き上がるし、ジリ貧なんですけど」

「本格的にヤバいっすよ、アニキ!」

黒尽くめの集団は、それぞれ武器を持ち襲いかかってくる。そのたびに大和田は致命傷レベルの攻撃を繰り返していたのだが、倒れた者もゾンビのように起き上がり、再び攻撃を仕掛けてくるのだ。

本田の魔力も無限ではなく、このままでは敗北濃厚だ。

(いかにも闇って感じだな…)

「おい、光魔法みたいなの使えたら闇っぽいし、はらえそうじゃねぇか?」

「それな、効きそうだけどね…あーし光属性ムリ!金宮か今田っちなら使えるんだけど…」

打つ手ナシ!と、おもわれたが…?

「無敵の大和田も成す術なしか?じゃあ僕に任せろ!"光の雨矢シャイニングレイン"!」

背後から現れいきなり光属性の魔法を敵に浴びせたのは、勇者。金宮颯である。

敵兵にリンクされた魔法が切断され、力を失っていく。

「金宮っち!マジタイミングいいね。エモいかも!」

「…心配してたんだぞ、こっちは」

「ごめんごめん、許してよ♪」

安心したのか、二人は軽口を叩きあった。

「大和田、お前の仲間がガルシアと交戦してる。ここには隔離結界?が貼られてるらしいから、破って助けに行け。」

「何だと?あのオッサン、敵なのか」

「輪田曰く、支配されている可能性が高いらしい」

その時、大和田のスキル"覇者"が発動する。

大和田も忘れかけていたが、仲間と登録した者のステータスが見られる機能が起動したのだ。

「あいつら…死にそうじゃねぇか?」

体力などのゲージが軒並みなくなりかけな上赤くなっている。

「え、何の話っすか?」

「輪田と伊澄がヤバいみたいだ、死ぬぞ」

「マジっすか!?」

「お前、小さくなれ」

そう言いながら大和田は立ち止まって空を見た 。

空の色が王城を中心として変わっている。結界が発動しているようだ。

「…?」

「なんか分からんが間に合わない速度で変な壁が降りようとしてるから、お前を先に行かせる」

小さくなったパチコを大和田は…

「飛んで行けェ!」

フルパワーで投げた。

「ちょ、ふざけんな…ウワァァァァァァァ!」

そのセリフを置き去りにしてパチコは飛んでいった。

必死に走る大和田。しかし努力も虚しく結界は閉じてしまった。

「ヤベェぞ…!」


ーーーーー


「隙が見えないな…輪田、まだ動けるか?」

「もうやめたい、とだけ言っておきますぞ」

次が最後の攻勢になる、と二人は確信した。

伊澄は居合の構えをとり、輪田は全力で魔力を注ぎ、鋼の鎖を生成してガルシアの動きを止める。

邪魔する瓦礫はすべて地面と合成し、最適な環境を作り出した。

「殺った!」

抜かれた刀はガルシアの首めがけ、美しく曲線を描く。しかし…

「「ーーッ!?」」

ガルシアの強さは伊澄たちの想像を超えていた。

鎖は引きちぎられ、刀は小手で受け流された。その後、目にも留まらぬ速度で二人は殴られ、伊澄は首を掴まれた。

「すまない、殺すことになりそうだ…」

ガルシアは依然支配から逃れることができず、命令を遂行せんと剣を伊澄へと振るおうとする。

助けるタイミングを外し、出るに出られなくなったパチコも息を飲む。

(こんなはずじゃ…誰か、誰か…!)

ここに来て、伊澄にもかけられていた精神支配…いや、感情抑制の効果が切れて、高校生相応の恐怖心が還ってきた。普通の高校生ならば、戦う前に降伏するはずだった…戦場から音が消えたように感じる。

その時、走る音が聞こえてきた。

次の瞬間には、ガルシアは何者かの攻撃を防いでいた。

「何してやがる…クソったれがァ!」

大和田勝海。異世界にて覇道を歩む少年であった。

「どうやって結界を破ったんだか…」

「根性に決まってンだろ、止まれバカ英雄が」

こうして、漢同士の闘いが始まったのだった。


ーーーーー


鬼気迫る攻防戦。一言で表すと2人の戦いはこうだった。初撃で剣を吹き飛ばし、肉弾戦に持ち込んだ大和田は長年にわたって使ってきた体術を駆使して現役の異世界トップクラスの戦士と渡り合う。低姿勢から無作為に繰り出される打撃は、ガルシアにとっても脅威であった。

「いい動きだ、膂力も十分。身長差も物ともしないとは、君なら私に届き得るかもしれないな」

「うるせぇな…上からブツブツとよ。さっさと支配振りほどけや!」

お互いに致命打になる攻撃が頬を掠め、回避できないときは正確に防御する。

「…魔力の使い方が鈍いな。もっと体循環を意識してみろ」

「あァ…余裕だな、テメェ?」

「私もこの戦いは不本意だ。支配を受けているのも家族を守る為なのだよ。私に勝て、大和田勝海」

国に対する忠誠心の低い冒険者上がりのガルシアは、家族の安全と引き換えに支配の魔法を受け入れていた。たとえどれだけ強くとも、人は群れなければ生きにくいのだ。そんな思いでこの国に所属していた…

(魔力を血みてぇに回しゃいいのか?)

異世界に来てから手に入れた魔力。大和田は扱いが苦手だった。魔法は使えず、かろうじて操作できる程度。そのはずだった。

ガルシアは大和田の身体に変化を感じていた。一撃が重くなり、そのスピードも上がる。そして、フェイントに反応してくる反射神経。

「おい、脳に魔力を流してるのか…?」

基本魔力による身体強化は、筋肉のみに行われる。しかし血液循環のイメージで魔力を全身に巡らせた大和田は脳にまで強化効果を与えていた。

ガルシアの職業ジョブ"英雄"が最大限に警鐘を鳴らす。ここで倒さねば、負けるのは自分であると。それは、ガルシアにとっては愉快な音であった。

「ハッハッハ、気分がいい!」

「楽しいなぁ、おっさん!」

感じたことのない危機感、刺激に二人のボルテージが上がる。

外套が翻り、火花すら散る戦いに"覇道"が強く反応し、大和田の攻撃威力は高まり続けた。

「オラァ、トドメだ!"鐵拳てっけん"ッ!」

ガルシアの防御はその暴威に打ち砕かれた。

受け止め、踏みとどまったもののその身体にはもう力が入らない。

「素晴らしかった、見事だ、よ…!」

大和田の目の前で、英雄は倒れた。

【条件を達成しました。"覇道"と"覇者"が統合され、新スキル、"覇王"が誕生しました。これにより新たに条件が達成され、義賊のスキル、"曲がらぬ正義"が追加されました。】

そんな言葉が脳裏を走る中、大和田は充足感に包まれた。しかし、それもつかの間、事件が起きる。

「アニキ、伊澄さんが!」

「なんだよ、怪我でもしてんのか、って…コレ…」

伊澄の体の状態は思ったよりも悪かった。

打撃痕まみれで、内臓をやられており、生きているのが不思議な損傷具合だ。

「マジかよ…」

「大和田…氏…!勝つと信じておりましたぞ…!」

「輪田か、死にかけじゃねぇか」

「伊澄氏ほどではありませんが、まあ満身創痍ですぞ。それより、兎にも角にも伊澄氏がヤバいので、はやく今田委員長を連れて来たほうがいいですぞ。動かすとたぶん死ぬから…限界なので後は任せました…ぞ…」

輪田は気絶した。

「ここまで輪田が伊澄を魔力で生命維持してくれてたんっす!」

「行ってくるわ。そいつら守っとけ」

大和田は休む間もなく走った。


ーーーーー


「皆大丈夫かな…!鈴木さん、どう?皆は見つかった?」

鈴木の傀儡師の力で人形を飛ばし索敵していたのだが、戦況は厳しいものだった。

担任小堂の守護騎士の力でチームの身を守りつつ、クラスメイトの情報を集めようとしている。

「あ、大和田君だ…こっち見てる、っていうか走ってきてるね。このままこっちに誘導するね」

「よかった…怪我はしてなかった?」

「そんなにはしてなかったよ、でも焦った顔してるよ」

しばらくすると大和田が到着した。

「おい、お前回復できるか?」

「うん!怪我、見せて?」

「じゃあお前ら。こいつ連れてくから、南に百メートル向かった先の広場に来い。」

「ひゃぁっ!?」

大和田は突然今田を肩に布団のように担いだ。

「行くぞ」

「え、ちょ、この体勢恥ずかし…あぁぁぁぁ!」

小堂と鈴木は走り去る大和田を見て呆れた。

「自由だなぁ、おい」

「まああっちに怪我人がいるっぽいし、行きましょう、先生」


ーーーーー


今田を担いだ大和田は必死に走る。

「大和田君!ちょっと、なんでそんなに急いでるの!?」

「うるせぇ、着いたらわかるから回復の用意でもしとけ」

「もしかして…灯香ちゃん?」

大和田は少し黙り込んだあと、頷いた。

「……あと輪田もな」

「わかった。任せて、大和田君」

広場に着くと、今田は伊澄の酷い容態に驚いた。しかしすぐ冷静になり、治癒魔法を施した。

「大丈夫、治るよ。これなら何とかなる」

「集中しろ、頼むから。喋るな」

大和田は珍しく心配そうに伊澄を見つめていた。

(なんだか意外だけど、こういう人だったんだ…!)

戦いは依然終わらないが、一段落ついて大和田は久しぶりに落ち着いたのだった。



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