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十二話

王立学園入学者懇親会のホールはある二人の男女に対する拍手に包まれていた。

「チッ、余計面倒なことになったぜ…」

「……」

「灯香?」

「うひゃぁッ!?」

「ブハハハ、なんだそりゃ!」

「…笑うな!」

二人が話していると、スカーレットがやってきた。

「護衛如きが私より目立つとは…生意気ですわよ」

スカーレットは笑いながらそう言った。

「面目躍如の立ち回りですな、大和田氏」

「うるせぇな、こんな活躍いらねぇよ…!」

時間も丁度よく、挨拶も終わったので、スカーレットは早上がりすることにした。

すると…

突如照明が落ち、辺りが真っ暗になる。

「は…?」

いきなりの暗闇に、大和田の目も追いつかない。

周りが見えず、学生たちは大騒ぎになった。

「三時から五時の方向、武装した何かがこちらに接近している。 輪田、魔法の準備を」

「了解ですぞ」

「スカーレット様、私の側にいてください」

伊澄は刀を抜き、陰陽の目に頼って周りの気配を探った。

(今のところ無差別な殺人は起きてない…これは、誰かを狙った攻撃だ!)

「"視覚強化ヴィジブル"ですぞ」

大和田、輪田、伊澄の視界が開け、暗視のような状態になる。

「私は自分でやりますわ」

スカーレットは魔法の心得があるようで自ら発動した。

「俺は侵入者カスをぶちのめす、二人でしっかり守っとけ」

(声一つ出さねぇな…こいつらは本業プロの殺し屋だ)

「そこォ!」

大和田が空を蹴ると、そこからローブを着た暗殺者が現れる。

「ぐぁ…異世界人か…!?」

「頭数と目的は?」

「言わん」

「じゃあくたばれ」

自殺されると不味いため、即刻首を刈り気絶させた。

しばらくすると、金宮も動き出した。

「見えてるぞ、お前は誰だ!」

「喋るな異界の民が…グワァ!?」

「バ〜ン。効いてんね〜、ウケる」

背後からの炎弾。暗殺者の一人は意識を失う。

「情報を聞き出せよ!」

金宮の取り巻きは本田を叱る。

「あれ?そっか、ごめんね〜」

一般人は阿鼻叫喚。

暗闇で行われる戦いに巻き込まれまいと、必死で逃げ回る。

『みんな、相手の目的と人数を特定したよ!』

この声は、先生の班に所属していた傀儡術師の鈴木彩芽すずきあやめだ。

『目的は王子殿下、数は二十人ポッキリ、繰り返すよ?敵の目的は王子殿下で数は二十人だよ、全力で守ってね!それと、一部の暗殺者は透明化できるローブを持ってるから注意!』

傀儡術師は精神系の魔法に長けた職業ジョブだ。

彼女は近くに偶然いた敵を魔法で捕らえ、精神攻撃して情報を喋らせた。そして、精神系魔法を利用したアナウンスで瞬時に情報を伝えたのだった。

「ここまで目立たなかったのがびっくりなくらい優秀ですな、鈴木氏は」

「まったくだ。しかし人が邪魔だな、これでは白虎が出せない。」

白虎の嗅覚は鋭く人を探すことが出来そうだが、実行に移せなかったのはそのせいだ。

しかし、大和田には関係ない。その野生の勘は尋常ではなかった。

「…そこにいやがるな?」

「何ッ!?」

人垣の中のわずかに出来た不自然な隙間。それを見逃さず、大和田はローブをつかみ、剥ぎ取った上で拳を浴びせる。

「こいつはもらうぜ、バカが」

「クッ…」

五分もたたず、複数の暗殺者を仕留める大和田。

向かってくるナイフをものともせず徒手のみで敵をなぎ倒す様は、さながら武人だった。

「金宮班、四人撃破!」

とにかく情報を交換し続ける。大和田は輪田に合図を送った。

「大和田班、六人撃破ですぞ!!で、話とは何ですぞ?大和田氏。ふむ…」

混乱はつづく。


ーーーーー


一人の暗殺者は逃げていた。

(こんなに強いなんて聞いてないぞ!ただのガキじゃねぇってのか!?)

ローブを破られ、間一髪逃げ出したのだ。

「お前っすね、アニキの敵はァ…」

「…!?」

空中から聞こえる声、いや、その声の主は背後にいた。透明化ローブを身に纏ったパチコである。

彼女は制服に変化させた大和田の外套のポケットに潜んでいたのだ。

「ーー?!」

足と手で肩のあたりに飛びつかれた暗殺者は、そのまま口を塞がれた。

暗殺術に長けた彼女の職業ジョブは、盗賊。

「アタシは緊急出動なんだよ…お前は黙ってここで倒れな」

そしてスキルでサイズが小さくなり、再び消えるパチコ。これが彼女の盗賊としての初仕事だった。


ーーーーー


しばらくして、魔法の照明が復旧した。外に待機していたガルシアが妨害していた魔法使いを捕らえたらしい。

「初日からコレでは苦労しそうですな」

「割に合ってんのか、この仕事はよ?」

暗殺者を全員捕らえ、大和田と輪田は軽口を叩きあっていた。

「ふむ、この規模だとしばらくは来なさそうだな」

ガルシアが会場に入ってきた。

「ガルシア様、それは何でだ?」

理由が気になった伊澄は詳しく聞いた。

「金の問題だ。暗殺者もボランティアではないからな。命を懸ける仕事は基本前払いで金を払う。学園は警備が厳重であるからして、手練を雇う必要もあるだろう」

「なるほど…」

「皆、気を引き締めて護衛を頼んだ。学生諸君も、迅速な避難痛み入る。今日のところは下校するといい」

ガルシアはそう締めくくり、懇親会の参加者を帰した。

油断の出来ない学校生活が始まったのだった。


ーーーーー


学校生活も板につき、大和田達三人は交代で護衛としてスカーレットの付き人をすることにした。

とある日の昼下がり、大和田は暇だったので校庭で一人飯を決め込んでいた。

「チッ…」

(この学園のクラスでも全然ダチができねぇな…)

黙ってサンドイッチを頬張りながら、そんなことを考えていると、一人の女子生徒が近づいてきた。

「げっ!私の特等席が…」

「はぁ?」

「ここ、いつも使ってるんで驚いただけです。友達いないんですか?」

あまりのストレートさに大和田は面食らった。

「喧嘩売ってんのか…?」

「あ、なんでもないです他を当たりますね」

「あァ、俺はもう用が済んだから使え」

大和田はなんとなくいたたまれない気持ちになったので、その場を譲ることにした。

「え、譲ってくれるんだ。ありがとっ、ボッチさん!」

「うるせぇな、黙って座れや…!」

その場を後にして歩いていると、噂話が聞こえてきた。

「あそこのベンチに座ってる子、親がいなくて貴族に養子にはいった平民らしいよ」

「どうやって知り合ったんだろうね ?」

(学校のこういうところはあんまし好きになれねぇな…)

しかし大和田の心には「ボッチ」という言葉のナイフが地味に深く刺さっていた。なので関与はしない。

その後は何をするでもなく学校周りを歩き、昼休みが終わった。教室で授業を受けていると、前の方の席の女子が妙に目についた。

(あ、アイツ、何でこの教室に…)

ベンチの特等席発言から先輩と睨んでいたのだが、まさかの一年生の教室で授業を受けていた。

すると、視線に気づいたのかこちらを向いてウインクをする。大和田はシカトしたが…

「おい」

「あァ…誰だテメェ?」

隣の席に座っていた男子が話しかけてきた。

「怖ッ…俺はクラスメイトのジャスターだよ」

「で、何の用だよ?」

「今聖女様がコッチをみたのか?」

「聖女?何の話だ」

「知らねぇのか、あの人は平民だが聖女という素晴らしい職業ジョブを持ってて、貴族に保護されてんだよ。美人だろ?あの人は学園の3大美女の一人なんだ」

聖女については噂は聞いていたが、この学校にいるということを知って、大和田は少し驚いた。

「へぇ…そりゃすげぇな。じゃあ何で一年生の授業受けてんだ?」

「違えよ。聖女様は教師になりたいらしくてな。その勉強だとよ。話聞いてたのか、お前?」

「ぐうの音も出ねぇな…」

勉強は出来ないこともないと自覚していたが、一年のヤンキー生活で少し、いや大分知力が落ちたなと大和田は反省した。

そんなこんなで授業も終わり、スカーレットを送り届けて大和田は宿舎に帰った。

「あ、大和田氏。ご飯を作っておいたから食べるといいですぞ」

机の上にはパンと何かおいしそうな香りのスープが置いてあった。

「ミネストローネか…お前器用だな、料理まで作れるのか」

「褒めてもおかわりしか出ないですぞ」

「じゃあアタシにおかわりをよそうっすよ、輪田!」

「はいはい」

パチコも元気そうだ。

「…何か見つかったか?」

そう大和田に聞かれたパチコは真面目な表情に変わった。パチコは入学式の襲撃から、大和田の命令で日中は透明外套を纏い街を見回っていたのだ。

「ここ最近、変なヤツがこの辺をうろついて回ってるっす。アタシもバレたくないからあまり近づけなかったけど、寮や王城、訓練場までやって来て何かを確認していくような素振りをしてたっすよ」

「物騒ですな。万が一のこともあるし、近づかなかったのは正解ですぞ」

不穏な気配のある王都で、三人は意見を述べあう。

「一回学校休んで一人捕まえてみるか?」

「すぐ撤退されて何も分からず終わりだと思いますぞ。」

「そうっすよ、ああいう輩は何も喋らないと思うっす」

「はぁ、じゃあどうしろってんだよ…」

すると、大和田の後ろから声がした。

「何を話してるんだ?」

「ノックぐらいしてはいってきやがれ、そもそも夜だぞバカ」

伊澄だ。

「元から奥の椅子にいたからノックもクソもない。今日はここに泊まるんだ、許可も出てるぞ」

よく見ると、伊澄はいつもの転移時に支給された服ではなく、寝間着だった。新鮮な寝間着姿に見惚れてしまったが、大和田は首を横に振り、

「何でだよ」

と勢いでツッコんだ。

「少し私から相談があってな」

「明日じゃダメなのかよ…」

大和田のボヤきは無視された。

「一言でいうと、このままではこの国に内乱が起きる」

「「はぁ!?」」


こんにちは、一介です。今回の話は面白かったですか?

この物語が好き、このキャラが好きという方は是非いいねや感想、ブックマークをお待ちしています。有識者や先輩ユーザーの方々もアドバイスお願いします!では、また次回お会いしましょう。

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