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すやすやお休み


 ゴシゴシ、ゴシゴシ

 体のいたるところにスリスリされていた。ゴワゴワとした毛皮が強い力で押し付けられる。

 まるで洗濯されているような感覚だ。押し付けられるたびに体が左右にゆさゆさ揺れる。

 なんだこれ。どうしてこうなった。

 だいきは、普段から意外とスキンシップが多いけど、こんなの子犬みたいだ。ゴールデンレトリーバーの子犬に囲まれてもみくちゃにされるのってこういう感じなのかな。もっとずっとやわらかいんだろうけど。

 ワンッ

 しつこすぎるので、やめろと一吠えする。

 覆いかぶさるように首元に頭を押し付けて来ていただいきが、びくっと首をすくめた。

 うるさかったでしょう。わざとです。もうやめてください。

 ダメ押しでハイエナの顔面に肉球スタンプ、というか両前足でつっぱって距離を取ろうとしてみる。

 ようやくわかってくれたみたいで、だいきはやっと起き上がった。

 ふう。

 それを確認して、ぼくも起き上がる。だいきのせいで体中の毛が好き勝手な方に向いている気がする。気持ちが悪くて、ぶるぶるっと体を震わせた。やっと落ち着いた。いや、完全に落ち着いたわけではなかった。見られている。そろりと振り向くと、だいきがじっとこちらを見ていた。

 もうさっきみたいにかわい子ぶってはいない。まがおだ。と、思ったら、ハッっと口を開いた。笑ったのか?

 こちらが身構えているうちに、上半身を低く下げて近づいてくる。おしりにずつきをされた。

 うわっ。そのままずるずると押される。

 カチャカチャ

 爪を立てて踏ん張ろうとしてみるが、全然かなわない。だから僕は中型犬。普通なんだよ~。だいきとの体格差だけじゃない。床もだいきの味方をしている。ツルツルしててちっともひっかからない。

 子供の頃、雪が積もった日にそりに乗ったことを思い出した。ゆるい坂でそりにのっかったら、全然すすまなくてこうやって背中を押してもらったな。ちょっと楽しくなってきた。

 今回の目的地は坂じゃなくて、どうやらベッドのようだ。

 そのまま行ったら顔面激突しそうだったので、自分から走り出してベッドのに飛び乗った。

 それにしても広いベッドだ。数歩進んで、良さそうな場所を物色していると、だいきがベッドに飛び乗った。衝撃で僕はちょっと浮いた。素敵なスプリングマットレスだな。

 着替えもどこにあるか分からないし、もう今晩は犬のまま寝てしまおう。

 だいきのことを考えて中心をさけて、毛布にくるまる。床に座っていて、すっかり冷えた。鼻先で毛布をまさぐってどうにか自分の上にかけると、丸まって寝る態勢に入った。

 さっき吠えたから、もうだいきも放っておいてくれると、たかをくくっていたのだ。

 モゾモゾ

 せっかくかけた毛布をなぜかめくられた。何すんだよ、と頭だけ動かして振り返った瞬間、ドサッとだいきが覆い被って来た。

 またかよー。なぜくっついて寝るとかじゃなくて、のっかってくるんだ。

 苦しい。最後の力を振り絞り、もがく。

 しばらく格闘して、なんとかだいきの前足一本を僕の体の上にのせたところで落ち着いた。

 後ろから囲まれて、これはまるでバッグハグ。せっかく犬の格好しているのに、人間みたいな寝相になってしまった。首の後ろにゴワゴワとしたものが押し付けられる。

 あったかくて、もう眠気が限界だった。明日の僕に全てをたくそう。おやすみ。

 僕はムニャムニャして、まぶたを閉じたのだった。



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