魔剣
村を出る際どこから聞きつけたのか、村の住人達が山のように押し寄せていた。
「もう行っちまうのかい!?なら旦那の作ってる保存食持っていきな!収納魔法あるならいくらでも持っていけるからね!」
「まだまだ礼をしたりねぇのによぉ……仕方ねぇ!俺と女房で作ってる薬全種類持っていきな!なぁに収納魔法でなんとかなる!」
「二人共旅に出るのね……なら色んな服必要よね!これ砂漠用、こっちは水中用、こっちは雪山用、火山用、サイズは勝手に変わってくれるから大丈夫よ!収納魔法あるならいくらでも持っていけるわね!」
数多の旅用の道具やらなんやらを渡され終わった後ザスタの目は若干死んでいた。
「ここの住人がやたら収納魔法でに対して信頼を置いてるのは伝わった。」
「まあ、本当に何でも入れれる上に冷たい物は冷たいままとか出来るから当たり前よね。」
「はぁ……あれ入ってるものの容量で消費魔力変わるんだがな……」
「あんた多分私並みに無尽蔵だと思うから問題ないでしょ。」
「それはそうだが。中身を思い出すのが面倒なだけだ。」
「へぇ〜あんた記憶とか苦手なんだ〜」
「俺の頭の中は目の前の事だけを考えていればいいわけではないのだ。」
「そっかそっか悪魔にも苦手なことってあるのね〜」
「……それでいい。」
泥沼になりそうなのでザスタは突っ込むのを諦めた。
本来なら5分程度で辿り着く入口までの道を1時間かけ、辿り着いた二人にさらに声がかけられた。
「おい、坊主。」
「ん?」
「あれ、魔法鍛冶のおじさん?どうしたの?」
「持ってけ。」
「ん。」
突然投げ渡された、剣を危なげなく受け取るとそれを見る。
「うわぁ……なにこれ闇の魔力で溢れてる……」
「お前さんの一撃を受けて残っていたゴーレムの破片を混ぜた剣だ。」
「え、この闇全部あんたの奴なの?どんだけ力込めてんのよ。」
「本来の十分の一だ。」
「本気出すと近くにいる私に影響出そうね……」
「俺色に染まるだけだ問題は無い。」
「大問題よ!」
「その剣の補強に使った鉱石は、」
「あ、普通に続けてくれるのね。」
「使い手の魔力を吸収し続け頑丈になっていく。」
「魔力を吸収して頑丈に……」
「本来の得物の一つや二つ持ってるだろうがそれ使えない内はそれを使っておけ。使うだけ頑丈になる。」
「悪くない。有り難く使わせてもらう。」
「そうしてくれ。」
それだけ言うと彼は何処かに歩いて行った。
「おじさん凄い上機嫌だったわ……相当その剣に納得が言ったのね。」
「そうか、なら信頼できるな。」
「銘はどうするの?」
「そうだな……あの技から取って魔剣カオスグローとでも呼ぶか。」
「また安直ねぇ……覚えやすくていいけど。」
「そろそろ出発するか。」
「仕方ないけどね。移動はどうするの?」
「ノワールに地上を常識的な速度で走らせるさ。」
「それが妥当ね。」
鈴を鳴らしノワールを呼び出し馬車に乗り込む。
「それじゃあ出発ね。」
「ああ、行こう。行け!ノワール!」
ノワールが走り出す。
目的地である、交易街レードチェインへと向けて。