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祝祭

夜が明けて朝、里を上げての祭りが行われた。里の蔵という蔵のドアが開けられ飲めや歌えやの大騒ぎとなった。その中心には今回の立役者たるカレンの姿はあった。村の皆から彼女の好きなジュースや食べ物、おしゃれな服とアクセサリー等を渡されまくっていた。だが本来、もう一人中心にいるべきである人物がいない。カレンは皆の礼を貰いながらある建物の方向に視線を飛ばしていた。


カレンが視線を向けていた先の建物、そこにはマーリンとザスタが2人で座っていた。

「すまないな、このようになってしまって。」

「騒がしいのは嫌いじゃないさ。」

「そうか。ふむ……話をする前にワインでもどうだ?」

「貰おう。」

グラスに注がれた色鮮やかなワインを受け取る。それを兜の口元を動かして飲もうとしたザスタにマーリンは声をかける。

「ここには私と君しかいない兜を外してはどうだ?……魔王。」

「ふん……そうだな。気配感知にも我々2人しか掛からず、盗聴魔法の可能性も先程消し飛ばしたからな、良いだろう。」

兜を外し、机の上に置き、ワインを一口飲む。

「ふむ、やはり味がよくわからぬが熟成しているのは分かる。良き感覚だ。」

「はぁ……隠しもしないんだな、()()。」

「懐かしい名だ。今の名はザスタだ。頑固坊主。」

お互いに昔の呼び名を呼び合った事で何かの線が切れたのか大声で笑い合う。

ひとしきり笑い合ったあと、少し懐かしい話を始めるのだった。

「あの頃から本当に変わらないんだなお前は。」

「我は悪魔だからな、変わる方が難しい。」

「もう少し異形の部分があったはずだが?」

「今の鎧が着づらくてな、調整した。」

「ホント、人外だなぁ……」

「そういう貴様もあれから千は超えているのだぞ?変化がなさすぎないか?」

「ああ、この森から出ないことで体の成長を止めているんだ。森から出た瞬間骨すら粉になるさ。」

「ふむ、学術院跡で見つけた古代魔法だったか?現代に蘇らせたのか。」

「中々大変だったぞ。」

「それはそうだ。」

「……あの子の事、見てくれてたのか?」

「ああ、子を成して曾孫達に見送られるまで見ていたぞ。」

「そうか……。」

まるでそれ以上は話すつもりは無いとも言わんばかりにワインをザスタは口に含んだ。

「また、召喚されたのか?」

「否、我は今回生命として誕生した。」

「そうか、悪魔が生命として世界に認知されたのも2代前の事だから抜け落ちていたな。」

「まあ、悪魔故に全ての力を持ったまま、親の力まで吸収して以前より強くはなったが。」

「そういうのは弱体化するはずなんだが。」

「これでも最上級悪魔だからな。」

「それでいて、()()()()()として魔王を倒した大悪魔だ。」

「ああ。」

「先に聞いておきたいんだがお前が目指す先は絶滅か?それとも支配か?」

「支配だ。流石に多少の情がある。」

「そうか……」

マーリンは安心した様に椅子にもたれかかる。知り合いが本当の敵にならなくてよかったという安堵だろう。改めて真面目な顔になったマーリンは向き直り、礼をする。

「改めて、ザスタ殿我が里を救っていただき感謝する。報酬は貴方が欲しい物を何でも差し上げよう。」

「必要は無い。貴様の娘から先にその話はされている。」

「娘、カレンは何を対価に差し出した?悪魔のお前に。」

「自分自身、魂、肉体、人権その全てだ。」

「そうか……そうかぁ……」

マーリンは頭を抱えてしまった。

娘の思い切りの良さを褒めるべきか怒るべきか迷ってしまう。父親として聞いておかねばならない事が出来てしまったので取り敢えずそれを置いておいて聞くことにした。

「ちなみに何をさせる気だ?」

「ふむ、世継ぎでも産ませてみるか?悪魔の子を孕むという前例自体はある。それに今の我はかなり人間に近づけているが故に対して母体には問題は無さそうだしな。」

「……父親の前で言う冗談に聞こえないんだが?」

「冗談のつもりは無いが……これでも四人の子がいる身ではあるからな。」

「……確かお前が魔王になってから二十年は経っている筈だがその子達は今はどんな立場にあるんだ?」

「四天王だが。」

「完全身内四天王なのか。」

「うむ。」

「話は後で聞こう。それはそれとしてカレンの件だ。」

「まあ、孕ませるのは冗談として旅の同行者にでもするさ。」

「それなら私も安心だ。だが、いつ正体を明かすんだ?」

「今日の夜にでも明かそうかと思っている。」

「……魔王、ということは黙っておけ。」

「ふむ、つまり偽勇者であり人では無いことは言ってもいいが魔王である事は隠せ、と?」

「ああ。」

「まあ、良いだろう。」

「理由を聞かなくていいのか?」

「今後共にするなら理由は透けてくるだろうからな。」

「……あの子には刺激が強すぎる。」

「そうか。」

それ以上は話が続ける意味が無いとザスタは兜を被り席を立ち部屋の扉に手をかける。すると後ろから信頼が乗った言葉が聞こえてきた。

「では、娘を頼んだぞ。」

「任せておけ。」

その後部屋を後にしたザスタは里の人々に揉みくちゃにされたのだった。


手遅れの単語説明

ゴブリン

子鬼とも呼ばれる下級魔物の一種

緑色の肌に人間の腰ぐらいの大きさで無駄に賢く罠を作ったり他の動物や魔物を従えるといった人間の様な知識を持つ。


ゴーレム

鉱石で作られた人型の人形。

基本的には意思はあまり持たず他の魔物に命令されるとどんな魔物でも言うことを聞いてしまう。

大きさはまちまちで大きいものは森の木よりも大きく、小さいものは人と大体同じくらいだ。

石に鉄、ミスリルなど多彩なパターンな存在する。

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