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魔女の里の危機

「私達の村を助けて!」

「君達の村?」

魔王は困惑していた。

助けを求められた事ではない。

村が滅びかけているという話についてだ。

今、自分自身が把握出来ている中でこの地域まで入り込めている魔王軍は存在していない筈なのだ。それでいて人界側に村を滅ぼせる程の魔物の軍はこれもまた存在していない筈だ。そして人間同士で争っている様子もここ一ヶ月の間見えなかった。村が滅びる様な事が起きないはずなのだ。

「何に襲われているって言うんだ?」

「魔物によ!なんか変なマーク付けた魔物達の大群に襲われてるの!」

「変なマーク……?」

「こう……悪魔の顔みたいなの!きっとあれ魔王軍よ!」

「いや、魔王軍のマークは龍の顔だ。」

「え!?じゃ、じゃあ……」

「……野生魔物(イリーガル)ということになるな。」

「な、なんで野生魔物が……」

「さてな。」

「そんなことはどうでもいいの!助けて!」

「……対価はなんだ?」

「私自身!魔法も村の中で一番だから戦力にもなるし……そ、それに……か、体も魅力的……だと思うわ!」

そう言われて初めて彼女の体を見る。

豊満な胸部と臀部に程よく引き締まった腹部と脚部、それでいて身長も低すぎも高すぎもしない、顔のパーツも人間に問えば十人中八人以上が良いと言うであろう整い方だ。

魅力的と言われればまさにその通りだろう。ここにいるのが本物の勇者であれば助けてくれと言われただけで下心丸出しで助けていたぐらいに魅力的だ。

「私の人生を全てあげるわ!貴方の奴隷になる……だから!貴方の力を……貸してください……」

今にも崩れ落ちそうな少女、今ここで要求を追加で伝えればその全てを飲みかねない勢いだ。どうやらそれ程までに彼女の故郷の置かれた状況というのは切羽詰まっているようだ。

「分かった、行こう。」

「……!」

少女の目が輝く。自分の身よりも故郷が大事なようだ。

「そ、それじゃあ!早く!」

「お、おい!」

手を引っ張られ外へと連れ出されて行く。そして彼女が恐らく移動の為の箒を取り出そうとした時になんとか止める事が出来た。

「な、なによ!急がなきゃ!もうあれから二日経っちゃってるからもしかたらもう……!」

「別に引き止めようと言うつもりはないんだ。」

「じゃあ何よ!」

「君の移動方法よりも早い移動手段があるんだよ。」

「……?転移魔法なら私の故郷には使えないけど?」

「転移魔法は行ったことない場所には使えないから使うつもりは無いよ。」

「それじゃあ何なの?」

「これだよ。」

何も無い空間に手を伸ばすとまるで空間が水面の様に手が沈み込む。

「あ、収納魔法(ストレージ)使えるのね。」

「勇者だからな。」

「そうなのね。」

「ふん!」

収納魔法から取り出したのは手持ちのベルだった。

「なにそれ。」

「俺のペットを呼び出すものだ。」

「ペット……?」

リンとベルを鳴らすとどこからともなく馬の声が聞こえてくる。するといつの間にか馬車を引いた半透明な黒い馬が現れていた。

「よく来たノワール。此度もよく働け。」

いつものごとく馬の頭を撫でながら囁く。するとノワールは嬉しそうに鳴き声を上げるような真似をした。

「すごい……霊馬なんて……一体どこで……」

「乗ってくれ、こいつで向かう。」

御者台に乗った魔王は少女に声を掛ける。

「え……?いやいや箒で飛んだ方が早いわよ!この子がどれだけ早いかは知らないけど地上より空の方が……!」

「ふふ……こいつを初めて見た人はみんなそう言うんだよ。試してみるのが吉さ。」

「分かったわよ。遅かったら箒で行くから。」

「驚くと思うよ。」

少女が乗ったのを確認した魔王は手綱を握り命令を出す。

「行くぞノワール!」

その命に従い力強く走り出す。

その早さは出入り口から最も遠い場所だった宿屋からあっという間に出入り口の門まで間近に迫る程だ。

「わぁ……早い!さすが霊馬……だけど……」

「焦らない焦らないここからだよ。はぁ!」

手綱を鳴らすとふわりとノワールが空へと駆け出していく。それに連れられ馬車までもが空へと浮かび上がっていく。

「す、すごい!空飛ぶ馬車なんて!それにさっきの速度で空を飛べるならたしかに……」

「さぁ、細かい場所を教えてくれ!そこに向かうぞ!」

「あ、うん!ここから南の方向!霧のかかった森だから分かりやすいはず!」

「行けノワール!全速力だ!」

主の呼びかけに高らかに反応した様子を見せたノワールは風よりも早く走り出す。その様子は地上の人々からはまるで流星のようだったという。

「そういえば君の名前を聞いていなかったな。」

「あ、そうね。私はカレン、カレン・ラクル!貴方は……?」

「俺か、俺は……」

少し悩む。本来の名前か勇者の名前かどちらを名乗るかを。少し悩んだ後、本名を言う事にした。

「ザスタ、ザスタ・カミティだ。」

「ザスタね……改めて勇者ザスタ様よろしくお願いします。私の故郷をお救い下さい!」

「ああ、任せておけ!」

単語コーナー

このコーナーは恐らく作中で説明をする暇が無い可能性のある単語を説明するためのものです(もしかしたら説明するため機会があるかも)。


勇者

魔王を倒す役目を生まれたときから背負っている人の事を言う。選抜は占い師の力を借りている。そして唯一魔王を倒し封印することが出来る。


魔王

魔物達の王

彼が生きている限り彼の臣下である事を選んだ魔物達に力が与えられる。

魔王によって人間を滅ぼそうとするか支配しようとするかは別である。今の魔王であるザスタは支配を選んだ。


魔物

生き物や物体、霊体に魔力が過剰に付与され、独自の命と意志を持ったもの。霊馬等もこちらに分類される。

魔物は本能的に人間を敵視する傾向がある。

何故か人間と友好的になろうする魔物もいるが感情が高ぶった際に本能が出てくることがあるため未だ成功例は発見されていない。

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