無事な町
「あ、町が見えてきたわよ。」
「む、なら速度を落とすか。」
「このままだと建物すら吹き飛ばしそうだしね。」
「本気の速度だと人の命すら消し飛ばせるぞ。」
「……なんか前科ありそうね?」
「村を滅ぼすのが面倒になった事があってな、散歩ついでに全力で走らせただけだ。」
「跡形は残したのね珍しい。」
「去り際に酸の雨は降らせたから処理はしっかりしてるぞ。」
「そ。」
「さて。」
そういうとザスタは着ている鎧に手をかけ魔力を流すし鎧を消した。
「わぁ!?」
「どうした突然。」
「こっちの台詞だけど!?」
「鎧を脱いだだけだが。」
「隣の人の格好が音も無く変わったら人間は驚くのよ!」
「そうなのか。」
「……で、なんで脱いだの?」
「今回は勇者として名声を稼いでいる場合では無いからな。一般旅人として町に入るつもりだ。」
「それもそうね。で?あの町に泊まるの?」
「そのつもりだ。」
「そ、部屋は一緒でいいわよ。お金もったいないし。」
「そうか、分かった。」
門番の軽い検問を通り町に入った2人を出迎えたのは賑やかな町の光景だった。
馬車の通り道として案内された大通りの真ん中を通りながらザスタは辺りを不思議そうな表情で見渡していた。
「人間の町に入るのは初めてじゃないんでしょ?なに見てるのよ?」
「いや、不自然だなと思ってな。」
「不自然?活気はしっかりあるし、格好も変な人はいないし何も無いわよ。」
「地図の足跡を思い出して見ろ。」
「んん……?」
「あの足跡はこの町をぐるぐると回っていたのだぞ?」
「……あれ、なんで活気あるのよ。」
「正直、復興中か何かだと思っていてここに寄ったのだ。」
「成る程……じゃあちょっとどこかで魔物の情報でも調べてみる?」
「そうだな……その前に荷物を宿屋に置くか。」
「了解。」
町中で最も奥まった場所にある静かな宿屋に泊まることにした二人はノワールを消し、宿屋に入った。
「あ、いらっしゃいませ!イレンの宿屋にようこそ!」
宿屋に入るとカレン並みに若い女の子が出迎えをしてくれた。どうやらここはイレンの宿屋というらしい。
「角部屋、二つベッドがある部屋で頼む。」
「はーい。……え?同じ部屋ですか?」
「そうだが。」
「あ、あの恋人か何かですか?」
「ふむ……いや、ただの仲間だ。」
「え?え?ただの仲間が同じ部屋……」
どうやら見た目年齢通りそういった事には興味津々らしい。
「ん、んん。ちょっと用事があるから、早くしたいんだけど。」
「早くシタイ!?」
「ちょっとー?女将さーん娘さん機能しないんですけどー」
その後出てきた受付の母親が受付処理をしてくれた。ちなみにどうやら受付の子はリューデというらしい。
部屋に着いた所でカレンは溜め息をついた。
「はぁ、ああいうのが嫌だから人がいない宿を選んだっていうのに。」
「ふ、あのくらいの年頃は年の近い男女がいれば妄想にふけてしまうからな。宿屋で同じ部屋というワードを聞いたら仕方あるまよ。」
「あの様子だとルームサービスを口実にここに来そうね。」
「いっそ嬌声が出る様な事でもやるか?」
「あの子が眠れなくなっちゃうでしょ辞めなさいよ。」
取り敢えずベッドを決めた二人はそこに荷物を置き、西をザスタが、東をカレンが行くことにし、やらかした時は空を飛ぶことにした。
「調べるのは魔物だけでいいのよね。」
「うむ、なんでこの町が無事なのかを調べたいだけだからな。」
「了解、それじゃ2時間後ここ集合ね。」
「分かった。」
そうして町を一人で歩き始めたカレンに対して突然声がかけられた。
「やっほお嬢さん、今暇?俺、ロイっていうんだけどちょっとお茶しない?」
そうナンパだ。