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20話 死んだふりが上手だね~

 酒場で日本酒を飲んでいた萌美はすき焼きが食べたくなった。

 なので作ることにした。


 魔石を動力源にした卓上IHコンロと鍋、材料を生成し準備は完了。

 全てを生成するその(かん)、わずか2秒のことであった。

 客も店員の娼婦も誰もが気がつかないうちに、すき焼きセットが現れたのだ。

 忙しい時間帯のためヴェイグも気がつかないし、厨房のカウンター席は萌美専用の席という認識からか客が座らないので見られることもない。

 やりたい放題の環境ができあがってしまっていたのだ。


「まず牛脂~。それから肉~。砂糖に割り下~」


 自重しない萌美の作るすき焼きは、どうやら関西風のようだった。

 薄い霜降りロース肉は少し焼くだけですぐに色が変わる。

 赤色が残っているうちに取り出し、ひと口で頬張る。


「ん~、脂あま~い。そして甘口の日本酒を……ぷはー、生きてるー!」


 鍋半分に豆腐、白滝、椎茸を置き、再び肉を入れる。

 2枚目も火が入りすぎないうちに取り出して、今度は溶き卵に潜らせてから大きく口を開けてひと口で。

 口内が卵や脂の甘さでまろやかになっているところに、甘口の冷酒を飲んで余韻に浸る。


「はぁ~、さいっこ~。何枚でもペロリだな、これは」


 萌美が再び肉を焼こうとすると、すぐ横に大きな人影が現れた。

 黒髪に側頭部から2本の角を生やした、巨乳巨体巨尻のオークのマリアであった。


「カ、カ、カ、カ……」

「カ?」

「カネダ様、な、な、何を食べているんですか~!? めちゃくちゃいい匂いしてますよ!」

「え? すき焼きだよ。食べる?」

「いいんですか!? 食べます~!」

「誘っといてなんだけど給仕しなくていいの?」

「今日はもうおしまいにしました。私はカネダ様のそれを食べるんです!」

「そうなの? じゃあお肉焼いてあげるよ。あ、その前に卵も出さないと。生卵イケる?」

「初めて食べますがきっとイケます! だってカネダ様が美味しそうに食べてたし!」

「ははっ、じゃあマリアの初体験を頂いちゃいましょうね~」


 発言が中年オヤジのそれである。

 萌美の横のカウンター席へ座ったマリアは、鍋の中身と皿に入った肉をひたすら凝視していた。

 お腹が空いているのだろう。


 ちなみにこのやりとりはヴェイグがしっかりと見ているため、本日のマリアの賃金は僅かしか発生しない。

 怒られないだけマシだが、オーナーが許可しているので大丈夫なのである。


「マリアはお酒飲む?」

「飲みま~す。えへへ、ありがとうございます」

「いいえー。はいどうぞ」


 清涼感のある青いガラスのお猪口に入った冷酒を受け取り、顔の前まで持ち上げたマリアがまじまじと眺めていた。

 萌美が「どうしたの?」と聞けば「青いお酒が小さな海みたいで、きれいで見とれちゃいました」と返ってきた。

 こういったメルヘンチックさが皆無な萌美では絶対に考え付かないことであった。

 マリアの爪の垢を煎じて飲ませることができれば、この女の粗暴さなどが消えるかもしれない。


「もう煮えるよ。このお肉は半生で、むしろ生でも食べられるから、脂が溶けるくらいで取り出して食べなきゃダメ」

「はい!! 食べていいですか!!」

「はは、どうぞー」

「いただきます!」


 とても気合の入ったマリアがフォークで肉を取り、卵に浸してから口へと運ぶ。

 瞬間、マリアの目がカッと見開き、その後「ふぬぅ~……」という怪奇音を発しながら腕だけではなく全身をバタバタさせ、やがてとろけるような笑顔に変わった。


「美味しい?」

「神様の食べ物だと思いました……」

「わかるよ。すき焼きを食べたときにしか得られない幸福感ってのは存在する。そしてお酒も飲んでみな。これにとてもよくあうから」

「はい……。ん~、まろやかで飲みやすいです~。これは幸せの味ですね~……」

「おやおやマリアくん、まったりしている暇はないぞ。次のお肉がいい感じに──」

「いただきます!!」


 素早いフォークさばきで肉を取り口へと運んだマリアは、幸せそうに目尻を下げてまさに喜色満面(きしょくまんめん)の笑みをする。

 そうやって肉を調理してマリアに餌付けをしているときだった。萌美の脳内に『ご歓談中に失礼致します』とエイシェトの声が響いたのは。


『主様、至急お耳に入れたいことがございます』

『ああ、エイシェトお疲れー。チンピラ関連?』

『はい。総勢50余名からなる集団が下水道へ向かっております。中にはドルンブと思わしき人物もおりました』

『誰だっけそれ?』

『スラムを支配している男でございます。こちらで処理をしてもよろしいでしょうか?』

『あ、待って。あたしがやりたい。すぐ用意していくから待ってて。帰るようなら引きとめてて』

『承知いたしました』


 萌美が次の肉を投入せずに1点を凝視して固まっていたため、マリアが不思議そうな顔で鍋と萌美の顔を交互に見ていた。


「ごめんマリア、ちょっと急用。お肉とか置いてくから、食べたい人たちで楽しんで。じゃあね」

「あ、はい。お気をつけて~」


 山盛りの霜降りロース肉や卵、割り下に日本酒などをカウンターへ所狭しと生成する。

 優に100人前を超す量の霜降り肉に、マリアの視線は釘付けであった。


 萌美の生成を見ても客である冒険者たちは慣れたもので「ああ、また何かやってる」としか思わない。

 むしろ「きっと明日には新メニューが増えているだろう」とすら思っている。

 なぜならば、ヴェイグが獲物を見るような目ですき焼き鍋を見ているからだ。

 熱狂的料理マニアのあいつに任せておけば、あの気難しい女からすら新料理を引き出してくるだろう。という謎の信頼感がヴェイグにはあるのだ。


「カネダさん、私もご相伴にあずかってもいいかねぇ? 向こうまでいい匂いしててたまらないよ」


 言いながら本物のドワーフであるエラが、マリアの横の席へと腰かけた。

 そのまま流れるような動作でおちょこに冷酒を入れ、ぐいっとひと息に飲み干す。

 萌美と同じく酒が好きなので、今の一連の動きはおそらく無意識なのだろう。


「もちろん、皆で食べてよ。足りないかもだからもうちょい足しとくか」


 萌美が追加で山盛りの肉を10皿ほど出してから「それじゃ」と手を上げて地下室へと去っていった。

 肉が大量に置かれたカウンターは、仕事を放棄したウェイトレスの娼婦たちで溢れかえっていた。

 ある程度料理が行き届いてしまえばあとは客が自分で酒をおかわりにいくだけになるので、暇を持て余したウェイトレスたちがすき焼きを楽しんでいても誰からも文句は出なかったようだ。

 厨房内で鷹のような目で萌美を見ていたヴェイグも、すき焼きを食べることができたので満足そうであった。


 地下のマスタールームへと戻った萌美はすぐさま全裸になると、パソコンでなにやら調べ物をしていた。

 このパソコンも萌美の「ネット繋がってないと不便なんだけど」という言葉により、擬似インターネットが使えるようになっている。

 擬似インターネットとは、アカシックレコードに限定的に繋がったもので、地球のインターネットにできたことはなんでもできるようになっている。

 調べ物からアニメ観賞まで、別世界のものを寸分(すんぶん)(たが)わず再現できているのに、萌美は何も気にしていなかった。


 とんでもない偉業を行った自らのダンジョンをもっと誇るべきであるが、萌美が気がつくことはないのでそんな機会は永遠にやってこない。

 箪笥(たんす)の肥やし、知恵の持ち腐れ、無用の長物、猫に小判、豚に真珠、萌美にダンジョンである。


「銃とかバカスカ撃ちたい。銃作ろ。エイムには自信あんだよね~」


 発想が危険人物のそれであった。

 現代日本にも実銃を実際に試射してみたい人は一定数いるだろう。

 中には実際に海外へ行き、射撃場で実弾射撃を行った者もいるだろう。


 しかし萌美の『撃ちたい』標的は、(まと)ではなく人である。

 ゲーム感覚で人を殺そうというのだ。

 もはやそのことに疑問すら抱かない萌美は、人間性を(いちじる)しく欠如している様子だった。


 この世界には、ダンジョンマスターに人間がなると100%の確率で暴走を起こし、討伐されるという歴史がある。

 自らの欲望に飲まれ、悪意で思考が支配され、そして人の住む地へと牙を剥くのだ。

 そうなれば国が総力を上げて強力な討伐隊を組み、実に容易くあっけなく排除されるのである。

 しかし萌美の場合は最初から欲望全開なので、暴走をしているのかどうかは不明であった。


 動物がダンジョンマスターをしている場合は生きるという本能に忠実なせいか安定し、暴走することがないので排除対象にはならない。

 英雄フラナングがこの村のダンジョンに来たのはそういった調査の対象になったのではないか、というのがダンジョンに潜り生計を立てている冒険者たちの見解だが、それは正解である。


 ダンジョンマスターが人間なら、ダンジョンが有用だろうが何だろうが絶対に殺す。

 それが萌美のダンジョンがある国の基本方針なのだ。

 そんなギリギリの綱渡りをしていることなど露知らず、萌美は鼻歌を歌いながら銃を作っていた。


「やっぱ強力なのっしょ。なんかあたし力ついてるから反動すごいのでも平気だろ」


 以前、チンピラたちを処刑した車輪は、重量が80キロを越えている。

 それを軽々と振り回し、あまつさえ「発泡スチロール持ってるみたい」と(のたま)う萌美は、人外の膂力を持ち合わせていた。

 そんな萌美がパソコンに打ち込んだ文字は『ハンドガン 最強』であった。

 中学生男子が好きそうなワードセンスである。


 検索ででてきた銃の名は『パイファーツェリスカ』というものだった。

 ハンドガンと言うには大きすぎて重すぎるそれは、もはやハンドキャノンと呼んでもいい代物である。

 実用性皆無のその銃の説明を読み、萌美が「なるほど……」と呟いた。


「つまりこの600ニトロエクスプレス弾ってのが撃てるから最強なんだなぁ。お? 700ニトロエクスプレスってのもある。つまりあれか、弾がでかけりゃ強いってことか」


 ハンドガンと大砲を比べたら、大砲の方が強いのは道理である。

 それから萌美は銃弾についていろいろと検索し、やがて辿り着いたのが『.950JDJ弾』であった。

 萌美の手の平くらいある大きさの、製作者の頭を疑いたくなるような弾だった。


「殺傷能力は、ホローポイントっってやつのほうが高いんだな。じゃあこの弾とそれを撃てる銃を作って……あ、どうせならあのキャラみたいにしよう」


 パイファーツェリスカを軸に、萌美がやっていたゲームのキャラが持っている銃の見た目にして、そして頭の悪い銃弾を撃てるように魔改造がなされていく。

 できあがった銃は重量15.8キロ、銃身88センチという絶対にハンドガンとは呼べない代物であった。

 それを片手で軽々と持ち上げ、振り回す29歳全裸ダンジョンマスター。

 体内に蓄積されている魔素と、ドワーフの種族特性である膂力上昇も相俟(あいま)って、化物と化した萌美であった。


「銃めっちゃかっけ~、どうせなら全身あのキャラにしよ」


 トリコーンと呼ばれる三角帽子に大きな羽根を挿したものをかぶり、レザー製のパンツ、ブーツ、グローブ、ロングコートを着て、ジャボと呼ばれる襟飾りをつければコスプレ完成である。

 コスプレキャラの武器である、柄の両側に刃のついた双刃剣はすでに作ってある。


 右手に剣、左手に銃を持ったどこぞの貴族然とした萌美が、鏡の前でいろいろとポーズをとっていた。


「やべー、なんか自分の顔なのに違う人に見える。っていかんいかん。そろそろ行かなければ」


 初コスプレで浮かれている29歳独身女性であった。


 自らの感覚を外に広げてダンジョン内を感知すると、チンピラ集団の反応が下水道の3つの車輪のところにあった。

 萌美が車輪刑を行った日から既に7日が経過しているが、くくりつけられた男たちは未だに生きていた。

 全身をネズミや虫に食われ、産み付けられ卵が孵り体の内側をウジ虫が肉を食いながら這い進んでいても、意識は失えないでいた。

 それは萌美が望みダンジョンが調整した覚醒剤と回復薬を適宜、胃の中へと直接生成されていたからだ。

 全身の感覚を鋭くされ、眠ることも狂うこともできずにひたすらに強烈な痛みを味わわされていた男たちは、目の前に来た仲間の姿を確認すると枯れた声で「殺してくれ……」と繰り返すだけになっていた。

 そのやり取りを感知で見ていた萌美は「お~良かったじゃん」と手を叩いている。


「あいつらもようやく死ねるか~。ちゃんと罰も受けたから地獄行きは免れただろうし、あたしに感謝しろよな~」


 地獄を見せた張本人が頭のおかしいことを言っていた。

 いよいよもって萌美の人間性は皆無となってしまったのかもしれない。


 萌美は目をつぶり、耳に手を当てて眷族たちへと語りかける。

 脳内念話は電話をするような感覚でやると話しやすいらしい。


『さて、じゃあ殺すよー? 皆準備オッケー?』

『オッケーですよー』

『ええ、主様。いつでも行けます』

『我が剣技、ご照覧あれ』

『ご指示をくださいませ』

『オッケー。じゃあ皆は外まで逃げたやつを殺してね。あたしひとりでやるから。じゃないと巻き添えにしちゃいそいうで怖いんだよね』

『はーい。逃げてきたやつだけ殺しますね』

『承知いたしました』

『はっ!』

『謹んで拝命致します』


 眷族たちの返事を聞いた萌美は、転移を使ってチンピラの近くへとやってきた。

 車輪の男たちにばかり集中していて、まだ萌美に気がついていない集団へ向かって、「んんっ!」と咳払いをして注意を引く。

 全員が同じタイミングで振り向いたことがおかしかったらしく、萌美が「クッ」と笑い声をもらしていた。


「なんだ、お前。こんな場所にそんな上等な服で、おまけに大層な武器なんか持ちやがって。なにもんだ?」

「どうしたよぉ、揉め事か?」


 萌美が気さくな調子で声を掛けるも男たちは腰から剣を抜き、先端を萌美の方へと向ける。

 下水道に貴族じみた格好の美女が、酷薄(こくはく)な笑みで武器らしきものを向けながら冷やかすようなことを言ってくるのだ、警戒もする。

 しかし萌美はそんなことはどこ吹く風とばかりに「あのさぁ~」と男たちへと銃を向けながら言う。


「人んちでおいたしたら叱られるのは当然だよな? わかる? あたしの言いたいこと」

「なんだ、キチガイか。おい、女。お前がこいつらをこんなんにしたのか? 他に仲間がいるのか?」

「ああいるよ。数億数兆数京の配下がな」


 なおそのうちの99.9%は湖に住む微生物である。

 数字がでかい方が強い、と思ってしまう萌美の脳内には、きっと小学生が住んでいるのだろう。

 このままじゃ無敵バリアや無敵バリアを壊すビームなどを作り出してしまうかもしれない。


「話にならねえな、おい、こいつを──」


 突然、(いかずち)が落ちたかのような轟音が下水道内に響き渡る。

 萌美の持つ銃の銃口から煙が上がっていた。撃ったようだ。


「ひ、ひいいぃぃ!!」

「うわああぁ!!」

「おお~、グロいな、こりゃ」


 銃口の先にいた話し相手の男、スラム街の支配者であるドルンブが下半身だけの姿に変わり果てていた。

 上半身がバラバラに弾け飛び、後ろにいた男たちへと肉片が降り注ぎ小さい破片となった骨が突き刺さっていた。

 萌美の銃撃によりドルンブが砕け散り、その後ろにいた男の胸に風穴が開き、更にその後ろの男の頭が吹き飛んだ。

 3人目の頭に当たって軌道が逸れたらしく、その後ろの男たちは無事であった。


「はははっ、めっちゃ反動きたわ。ドカーンってなったよドカーンって。ねえ?」


 話しかけるも、返事をする者はいなかった。

 萌美の口角が上がり三日月のようになっていく。

 アルカイックスマイルの萌美が銃を男たちに向けると、すぐに爆発音が連続して3回轟いた。


 1発目は5人、2発目は7人、3発目は4人が肉塊に変わった。

 隣にいた仲間の肉片を浴びて尻餅をついた男は、ショックで思考が停止してしまったのか、口を大きく開けて萌美を見ていた。

 手に持った筒から煙が出ていて、自分のほうへ向いてきて──。

 それが男の最後の思考であった。もはや飛び散った脳では考えることは不可能なのだ。


 再度の銃声に、ようやく我に返った男たちが脱兎の如く我先に逃げ出していく。

 しかし轟音が響くたびに逃げる男たちの横にいる誰かが弾け飛び、肉片に変わってしまう。

 涙を流しながら半狂乱で逃げる男の背中を、萌美が楽しそうに撃っていた。


「あっはは! あはは! おいおい、転んだら死んじゃうぞ~? ほら逃げろ逃げろ! あっはっはっ!!」


 萌美がゆっくりと歩いて追いかけながら銃を撃ちまくる。

 頭を抱えてうずくまる者を撃つ、転んで踏まれて動けなくなった者を撃つ、死体のふりをしている者には1度通り過ぎて気付かないふりをしてから「死んだふりが上手だね~」と話しかけて撃つ。

 悪意の塊となった萌美は、残酷な笑みを浮かべていた。


 銃が飽きたのかダンジョンに吸収させると、双刃剣の柄を持ち仕掛けを動かし、ふた振りの剣へと変えた。

 赤い可燃性の液体が滴るふた振りの剣は、血に塗れているようにも見える。

 萌美がゲームキャラの武器を再現したいと望んだため、ダンジョンが叶えて生成可能にしてくれた魔法の剣である。

 機構は英雄フラナングの使う光の剣を応用したものだ。

 あの剣を吸収したおかげで、萌美の作るロマン武器の幅が格段に広がった。


 萌美が逃げる男へ剣を振ると血の斬撃が飛び、遅れて炎が同じ軌跡を描き、首の泣き別れた焼死体ができあがった。

 飛ぶ斬撃は射程が長いらしく、壁や天井にまで焼け焦げた刀傷ができている。


「お前らも女子供に手を出さなきゃ死ななかったかもしれないのになぁ。やっぱ人のテリトリーに土足で踏み入るのは感心できないな」


 炎に巻かれ下水に飛び込んだ男が呻いていた。

 それにゆっくりと剣を突き刺しながら「でもわかるよ」と萌美が語る。


「圧倒的優位からの暴力って楽しいものだ。だからこそ、より上位のものに狩られる可能性があることを考えなくちゃあならないんだよ」


 逃げ出した男たちの前方に転移を使って出現し、一刀の元斬り伏せる。


「皆殺しにして吸収しちゃえば証拠は残らないだろ? だからあたしは安心してお前たちを殺すことにするよ」


 血に酔っているかのような笑みをした萌美が、誰に言うでもなくそう呟いた。

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