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風旅立ちぬ  作者: 白百合三咲
10/10

最終回 風旅立ちぬ

 1947年10月芳子に死刑判決が下された。

中国人でありながら日本軍が作り上げた国満州国建国に携わったのが罪状だ。

自分は6才のときに日本人の養女になっている。だから日本人だ。

そう証言したがそれを証明できる物はなく中国人としてみなされ呆気なく死刑判決になってしまった。

 判決を言い渡された夜何者かが芳子の独房へやって来た。

「芳子様、芳子様」

芳子は名前を呼ばれる声を聞き目を覚ます。

「美佐子ちゃん。」

やって来たのは美蘭だった。

「美佐子ちゃん、夜這いにでもきたのか?若い女の子が1人で夜中に男の部屋に来てはいけないよ。」

死刑判決が下されたにもかかわらず冗談を口にする。

「そんなこと言ってる場合じゃありません。わたくしと一緒に逃げましょう。」

「君は正気か?!」

「はい。これからもわたくしが美佐子ちゃんの代わりを務めます。だから一緒に。」 

「ありがとう。でももういいんだ。」

芳子は優しく微笑む。

「今までよく僕に尽くしてくれたね。でも僕は本物の美佐子ちゃんのところに行く。それに僕の自己満足のために君のこれからの人生を犠牲にはできないよ。」

芳子は引き出しから手紙を渡す。

「これは君宛に書いたもの。いつ呼ばれてもいいように今渡しておく。さあ、君はもう戻りなさい。」

芳子に諭され独房を後にした。




 その後美蘭は自分に与えられた世話係用の私室に戻ると手紙を開く。   


「美蘭ちゃんへ

 僕が今の心情を詩にした。読んでほしい。

 

   家あれども帰り得ず

   涙あれども語り得ず

   法あれども正しきを得ず

   冤あれども誰にか訴えん  


 君のことは天国へ行っても忘れないよ。僕の可愛い美蘭ちゃん。これからは美佐子ちゃんではなく君自身の人生を歩んでほしい。今までありがとう。

       1947年10月17日 川島芳子」


 美蘭はようやく理解した。芳子が死刑になるのを知っていてもなお笑みを絶やさなかったわけを。きっとこの世には未練はないのだろう。

帰る場所もなく待っていてくれる人もいないのだろう。

そう思うと涙を流さずにはいられなかった。



 


 年が明けて1948年3月25日明朝。

芳子の監獄の扉が開く。

「金壁輝、出ろ。」

看守が来た。傍らには美蘭がいる。

(いよいよか。)

芳子は美蘭を見ると満面の笑みを見せ美蘭の涙を拭く。

「どうか泣かないで。僕の美蘭ちゃん。」

美蘭との別れを惜しむと看守に拘束され刑場へと連れていかれる。




 壁の前に立たされる芳子。目隠しを拒み執行人が構えた銃と対峙する。その時

「芳子様。」

(美佐子ちゃん?!)

執行人の背後に美佐子の姿を見た。芳子を見つめ微笑む姿を。

「美佐子ちゃん。随分と待たせたね。今そっちへ行くからね。」

執行人の放つ銃と共に芳子の魂は風になり愛しい人の元へと旅立った。



                  FIN

完結しました。

公式企画には芳子様はもう1作投稿予定です。

是非そちらもお読み下さい。

ちなみに百合の相手は秘密です。

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