表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猛獣の化け方ガイド  作者: 水蛍
96/98

真面目というより

生い茂った緑。

色とりどりの花々に果実。

室温、湿度も適度に管理された快適な空間。


僕:「…………ここは……」


連れてこられたのはガラス張りの温室。

屋根は半円状で、支柱の数はそれほど多くない。

白がベースのシンプルでオシャレなデザイン。


ゆったりと施設の中央まで歩いていき、着いたところで彼は僕の方に振り向いた。


???:「では始めましょうか。」


僕:「……え、ここで?」


こんなまったりとした空間で修行するの?

てっきり道場みたいな場所に行くものだと思ってたんだけど…………

あと、準備って言ってなかった?


???:「自己紹介がまだでしたね。私はセトと申します。」


僕:「あ、はい、よろしくお願いします(?)」


淡々としてるなぁ。

セトさんか…………この人、ほんっとうっすいなぁ…………

顔が全然見えねぇ………


僕:「あの、ずっと気になってたんですけど、それ何ですか?」


セト:「それ、というのは私の顔のことでしょうか?」


僕:「そうです…………なんていうか、全然見えません。やっぱりそれも魔術ですか?」


透明化、光学迷彩的なものかな?

何にしろ日常生活でそれは怖すぎる。

全体的に薄いけど、顔が特に薄くてもうよくわからない……

いや、薄くはないのか……?

けどよく見えないというか…………???


セト:「人に見られるのが怖いのです。」


へ?

どうしたんですか急にそんな、お悩みを吐露されましても………

見られるのが怖いって………えぇ……


僕:「えっっと…………そうなんですか……あ、だから顔を隠していらっしゃるんですか?」


セト:「そう、ですね。概ねその通りです。ただ私は、意識的にこの魔術を使っているわけではありません。」


無意識で隠しちゃうってこと?それは中々大変そう……

魔術ってそういうのもあるんだ。

まあ僕も感覚的に使ってたし、初めて使った時も偶発的にだったし、おかしくはないか。


セト:「…………思考は現実を歪め、思想には形が与えられる。”戦乱の魔女“アトラーネ・フラーケイルが、魔術の基礎を説く上で伝えた言葉です。」


…………誰なの?アトラーネ・フラーケイルって。

歴史的偉人とかかな?

にしても二つ名が”戦乱の魔女“って、厨二心には刺さるけどちょっと…………


セト:「つまり、この魔術は私の心そのものを表しているのです。」


…………なるほど。


セト:「疑問は解消されましたか?」


僕:「……はい、教えてくださって有り難うございます。それと……その…………」


無神経な質問をして申し訳ありませんでした!

もっと、気をつけて聞けばよかったですね。

って、言ったほうがいいかな?

いや、かえって気まずい雰囲気になってしまうのでは………

う〜ん…………


セト:「では早く始めましょう。」


僕:「あ、はい…………」


何とも思ってない、のかな?

まあ、何も言ってこないならわざわざ掘り返さなくていいか。

……何となく、カルネさんとはまた違った社畜臭がする。

もっとゆっくりやってくれてもいいんですよ、セトさん?


セト:「お話したとおり、私には魔術師としての才覚はありません。己の思考に呑まれ、碌に制御ができないのです。したがって、私が貴方に教えられるのは至って原始的な戦闘方法です。」


ほうほう、何ですかその構えは?

相撲でもとるんですか?


手袋を嵌め身を屈めて、拳を握り込むセトさん。

こんな真っ昼間の美しい温室の中央で物騒な構えをするセトさん。

はよ構えろと言わんばかりの眼差しで睨んでくるセトさん。


セト:「最初は肉体で、次に飛び道具、最後は剣です。初歩的なものに過ぎませんが、戦いの土俵に立つ上で不可欠なものでもあります。」


僕:「…………え、と、ボクハ、ドウスレバイイノデショウカ。」


棒読みカタコトにもなるよ。

修行ってやっぱりガチの修行なんだね。

僕が?ぐうたら大好き暴力反対の僕が…………組み手?

…………どうしても、どうしてもやらないとダメなのこれは?


セト:「…………戦うのはお嫌いですか?」


僕:「え、はい、嫌いです。」


痛いの嫌だし。

血は怖いし。

あ、やばい、昨夜のトラウマが蘇る……


セト:「そうですか。しかし、選択肢は与えられていないというのはわかっているでしょう?」


………………


セト:「此処から逃げ出しても貴方は直ぐに連れ戻される。何もせずただ此処にいるというのなら、貴方は物として扱われることになる。国籍を持たず、名前も明かせず、出自、親族も不明の貴方は事実、この帝国での人権そのものを持たないのですから。」


………………うっわ、嫌なこと言いますね。

実際そうなんでしょうから何とも言えないですけど…………


セト:「正直、貴方より優秀な侍従はいくらでも用意できます。貴方が侍従に任命されたのは旦那様の戯れのようなものです。しかし、これが貴方が唯一自由に過ごすことが出来る手段でもある。」


僕:「だから大人しく…………ってことですか?」


セト:「ええ…………アルシエラ様も、貴方のことを大層気に入っていらっしゃいます。」


………………


多分今めっちゃ眉間に皺がよってる。

アルシエラくんが気に入ってくれてるのはいい。

けどこの不当な扱い!

人権が、ないぃい?

あの公爵は絶対許さん。

けど…………


此処から出ていっても荒野を身一つで乗り越えるようなもんだし、行く宛もない。

公爵は僕を此処に留めておきたいみたいだし、逃げてもきっと捕まる。

セトさん(この人)の言うとおり、侍従として働くしか道はないんだよね。


僕:「はぁぁ〜〜…………侍従じゃなくて給仕とかじゃダメなんですか?」


セト:「私から旦那様への進言は期待しないでください。さぁ、構えて………」


堅物キャラかよ…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ