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猛獣の化け方ガイド  作者: 水蛍
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鬼教官降臨

あの公爵、行動が早すぎる!!

えぇ?侍従見習い?僕が?

了承したっけ?…………したかな…………


記憶の混濁、寝起きの低血圧、僕の意識には今だに靄がかかっている。


カルネ:「早く出てきてください!午後までに貴方に仕事内容を叩き込まなければならないんですから!!」


やべぇ!さっきとは別の意味で行きたくねぇ!!

無理無理、聞いてないよそんなの!

ベビーシッター的なやつだと思ってたのに…………


というかそれよりも、さっきの叱責に気になる言葉があったな。


僕:「あの、“アーデン”っていうのは?」


カルネ:「貴方の名前でしょう!?いいから扉を開けなさい!」


はは〜ん、さては公爵の仕業だな?

そういうのは事前に言っておいて欲しいんだけど…………言わないだろうな〜。


メイレア・アーデンか…………語呂がいいからいっか。


名前については一旦置いておくとして…………大分ご立腹だね、カルネさん。

どうやら寝過ぎてしまったらしい。

ここ最近はずっと同じ部屋で寝て起きての繰り返しだったからね。

早起きの習慣なんて身についてない…………まっ!元からだけどね!!


……こういう時無駄に抵抗しすぎるのはまずい、とりあえず謝ろう……


僕:「あのう……すみませ」


扉を少し、ほんの少し開けたその時、その僅かな隙間にすかさず指が入り込んできて、バッと扉をこじ開け…………


カルネ:「…………は?なんでまだ着替えも済ませてないんですか?ただでさえ時間がないのに舐めてるんですか?私にも仕事があるのに……っああもう!さっさと支度しますよ!!」


鬼の形相で詰め寄られた。

こえぇぇ…………ん?着替えはもう済んでますけど?

クローゼットにあった服はちゃんと着たし…………


カルネ:「失礼しますよ!!」


カルネさんはズンズン僕の部屋の中へ…………あ。

すっかり忘れてしまっていた。

カルネさんが来る前までしていたこと…………


カルネ:「は?はぁあああああ!?」


手鏡探すのに部屋を荒らしまくったんだった。

火に油を注いでしまったよ。

見て、カルネさんのあの真っ赤な顔!

今にも爆発しそうだよ!どうしよう!?


カルネ:「どうしてこんなに物が散らばっているんですか!?なんて汚い……!!」


汚い!?汚いとは失礼な!!

散らかしはしたけど汚くないよ!

綺麗な服に、綺麗な本に、綺麗な食器に、綺麗な小物!

みんな綺麗だよ!!


…………いや、違うな。論点がなんか違う。

そこじゃないよ、僕。

駄目だ頭が働かない…………


僕:「すいません…………」


カルネ:「部屋はもう自分で片付けてください!兎に角今は身嗜みを整えて持ち場に行きますよ!」


サー!イエッサー!!

僕は心の中でそう叫んで、カルネさんに身を委ねた。


<それから>


カルネさんは散乱した部屋の中の何処かから服を引っ張り出した。

一体何処に仕舞われていたのだろう。

というか、置き場所は事前に伝えておいてくれないと。

これは僕の所為ではないよ。

うん、僕悪くない。


カルネ:「ちょっ、着方が違うじゃないですか!!」


え?これ?今僕が着てる服?

何が違うの?え?


僕が不思議そうにしてるのを無視してカルネさんは僕の服の紐とボタンを…………なんか色々やっていった。

え、服ってこんなに複雑なの?


カルネ:「こっちに来て!これを着て!!」


僕:「ガッテン!!」


カルネ:「ガッテン?」


言われた通りに服に袖を通した。

わぁお、お子ちゃま執事の完成!

手鏡しかないから全体はわかんないけど、多分可愛い!

こう…………いかにも漫画のネタキャラみたいな見た目になった。


僕:「これ誰の趣味ですか?」


カルネ:「知りません。無一文なんですから服が着られるだけ有難いと思ってください。」


ひどっ!無一文て!いや無一文だけど!!

でもそんなきつい言い方しなくても…………はぁ〜、わかりました。

我慢しますよ。

ネタキャラとして仕事頑張りますよ!


僕:「お帰りなさいませ御主人様!!」


カルネ:「はぁ“?」


やばっ、声に出しちゃった。

ノリが良すぎるってのも考えものだね。

恥ずかしい!あと、カルネさん怖い!!

そんな怪訝な顔してこっちを見ないで!


僕:「すみません忘れてください…………」


カルネ:「…………これから坊っちゃまの身の回りのお世話を出来るようになるまで徹底的に扱き上げます。」


え、無視?辛…………


カルネ:「掃除、洗濯、料理、ベッドメイクから紅茶の淹れ方、ついでに害虫駆除にいたるまで、余すことなく叩き込んで差し上げます!!」


かっけ〜…………けど、害虫駆除いる?

僕虫はちょっと…………


僕:「……………………」


やばい、頭イタイ。

貧血かな。

さっきから頭の中がごちゃごちゃしてる。

なんなんだろう。

頭痛薬…………はないよね。

辛抱だ。


僕:「…………で、何をすれば?」


カルネ:「ひとまず坊っちゃまの部屋に向かいましょう。口頭で説明する気はありません。実践あるのみです。」


今どき珍しいスパルタ教師スタイルなんですね、カルネさん。

これはもう、腹を括るしかなさそうだ。

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