避けろ避けろ避けろ
???:「ねぇ、どうなの?知ってるなら教えて?」
知らないし教えるわけないでしょうが!
落ち着いて、こういう時の対処法は………
僕:「…………誰かぁあーーー!!ここに殺人鬼がいますぅう!!」
まあこうだよね!?
僕1人でどうにか出来るわけないし、ここは素直に助けを呼ぶのが最善!
しかし…………反応がない!?
???:「ムダよ?」
僕:「え……?」
……無駄ではない!
無駄ではないはずだ!
騙されちゃダメだよ僕!気をしっかり……
???:「さっきから変なのよね。この屋敷、相当な大きさなのはわかっていたのだけど、それにしたって広すぎるもの。歩いても歩いても、ずぅ〜っと廊下。まるで端がないみたい。」
………端が、ない……?
それって……いや、ちょっと待って。
???:「おそらく空間系統の大規模魔術。流石は公爵家、優秀な魔術師を雇っているのね…………それで?それを知らない貴方は誰なのかしら?使用人というわけでもなさそうだし……」
端がないって!
それって、僕も出られないってことじゃん!!
いや落ち着くんだ、ハッタリかもしれない。
そりゃあ、馬鹿みたいに長い廊下ばかりだとは思ってたよ?
でも端がないわけ…………
???:「まあいいわ。子息の居場所も知らないみたいだし、さよなら。」
そのとき、さよならを言い終えるよりも先に、刃物が僕の目前に迫った。
僕:「…………ッッ!!?」
チッかコッワムリィ!!
イナバ、ウワー!!
???:「え…………」
僕:「ヘェ……ヘェ……!」
い、イナバウアー、で、避けた……?
今とんでもなく腰が曲がってるような気がする。
軟体動物かってツッコまれそうなぐらい曲がってる気がする!
いやそんなこと今はどうでもいい!
???:「可笑しな避け方……素早いのね。」
直様体勢を変えようとした僕、よりも先にナイフ回しからの垂直落下刺しぃぃい!?
と、まあ一見すると絶体絶命なのですが。
焦りながらも解説できているだけに、一応反応できたわけで……
僕:「ッッ……!!」
???:「………………」
避けた…………
避けた避けた避けた!!
凄いぞ僕!
ゼオくんの蹴りは全然躱せなかったのに!!
やっぱり人型だから?
まあ、四足歩行よりかは遥かにしっくりくるし!
よしっ!一先ず避けれないことはない。
……とはいえ、このまま避け続けながら逃げるのはしんどいよね。
どうにかして人と合流しないと……………………合流……?
…………この殺人鬼の髪や服についている血、人の血だって言ってた。
このまま誰かと合流するのは、まずい?
……………………
僕:「……………………え?」
ほんの一瞬だった。
ほんの一瞬の間に、吹っ飛ばされた。
僕:「あッ!がッ!!ッ!!!」
壁側ではなく、廊下に沿って蹴り飛ばされた。
つまり吹っ飛んだ僕を止める障壁はないので、僕は幾度となく床にぶつかって、ぶつかって、ぶつかって…………
僕:「ッッ…………〜〜〜ッッッ!!」
やっと、止まった!!と思った途端痛い!痛い痛い痛い!!
ぁあ〜〜ッ!!トラウマが再発するぅうう!!
クソ餓鬼ことゼオくんにサッカーボールの如く蹴り飛ばされていたあの記憶がぁああ〜〜!!
僅か数秒、僕は混乱状態に陥った。
が、直ぐに立ち直った。
自分でも思うけれど、図太いのだ、僕は。
僕:「…………イッたい……クッ!!」
どっか折れた?……いや、立てる。
少なくとも足腰はまだ大丈夫。
腕も問題なし。
…………それにしても、接近、構え、蹴り、それらが一瞬で行われた。
早すぎる!!
真正面からだったのに、蹴られた衝撃しか分からなかった!
これはもう、背中を見せたら確実に死ぬ!
不幸中の幸と言うべきか、吹っ飛ばされて距離が空いた。
今のうちに逃げ……
???:「貴方、変ね。変な魔術師なのね。」
!?もう来たの!!?
五十メートルはあると思ったんだけど、もう十メートル以内にいる!!
???:「三回も躱された。あんな避け方でどうして躱せるのか不思議だったのだけど、蹴った時に確信したわ。」
殺人鬼の瞳孔が広がり、輝いた。
???:「攻撃を躱そうとする時は動体視力が上昇し、肉体速度もやや上がる。攻撃を受ける時は攻撃に気づいた瞬間肉体強度が上昇する。」
……………は、え?
???:「柔らかかったお肉が、蹴る途中で急に硬くなったんだもの。驚いたわ…………それ、付加系統魔術の類ね。」
付加、系統魔術…………
え…………?




