違和感の正体
アルベド:「まあ、いい名前なんじゃないかな。今後もそう名乗るといいよ。」
え…………
僕:「あの……いいんですか?本名を聞いたりとか…………」
心臓めっちゃバクバクいってるよ。
お貴族様に嘘ついちゃったんだもん!!
ただでさえ放火の容疑がかかってるのに!
アルベド:「ああ、いいよ別に。名前なんてなんでもいいさ。」
手をひらひらさせてこれまた軽い対応をしてきた。
…………寛大、なのか?
それとも単に興味がないとか?
すごい雑に扱われた気がしたけど。
ディオルネス公爵家。
帝国有数の由緒ある大貴族様……らしい。
えっと確か、男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵、そして皇族の順番だったけ。
へぇ、上から二番目……
アルベド:「さて、早速だが君に少し用があってね。」
僕:「はい……何でしょうか……」
我ながらぶっきらぼう過ぎない?声が死んでる……
アルベド:「そんなに緊張しなくていい。別館の火災と君が無関係であることはわかっているからね。」
僕:「え!?」
て、てっきり疑われているのかと……
あんな状況で見つかったし……
でも僕が放火魔じゃないってわかってるのか。
よかったぁ〜。
…………ん?
僕:「あの、それじゃあ僕に御用というのは……?」
アルベド:「…………用件を話す前に、まずは謝罪をしておこう。一ヶ月と少しの間、狭い部屋に閉じ込めてしまって申し訳ない。」
公爵は僕に向かって頭を下げてきた。
あ、やっぱり狭い部屋なんだ、そっか……って違う!そうじゃない!
僕:「いえいえ、お気になさらず!」
これぞ世渡り。
まあここで土下座しろなんていう人がいたらドン引きするけどね。
アルベド:「…………こちらにも色々と事情があってね。君の身元を確定させるのと、その他諸々の偽造に時間がかかってしまったんだ。」
…………ん?
アルベド:「話を戻すが、君に折り入って頼みたい事がある。私の息子の世話係をしてほしい。」
…………はぇ?
なんかコンマ数秒で一気に話が変わった気がしたんだけど。
息子って、アルシエラくんのことだよね?
世話係?なんで僕!?
保育士資格持ってない、じゃなくて!!
おかしいでしょ、こんな怪しい奴に子供のお世話をお願いするって……何考えてんだこの人!?
僕:「えっとそれはどういう…………」
アルベド:「火災の件については君にはなんの非もない。だがあの場にいた事自体は問題なんだよ。」
声音が変わった。
軽い空気に包まれていた室内が一気に重苦しくなった。
…………
アルベド:「公爵邸への不届な侵入、本来であれば極刑だ。それに火災のことについても、私は君が無関係であることを知っているが、周りの者たちはそうではない。皆君を疑っている。」
……あ、わかった。
アルベド:「だから君に帝国民としての身分を用意した。職業はディオルネス公爵家の子息専属の世話係。」
僕:「…………僕が此処からいなくなると、不都合でもあるんですか?」
アルベド:「まあね。もっとも、私個人に問題が生じるわけではないが。」
隠しもしないんだ。
やっぱりこの人、僕に申し訳なさなんて感じていない。
それどころか、脅迫までしてきている。
僕が世話係にならなかった場合は、さっき言っていた通り極刑………
僕に拒否権はないって事だ。
……軽い雰囲気にまんまと騙された。
火事のことについて聞かれるんだと思ってたのに………全然違った。
これは最初から話し合いでもなければ、尋問でもなかった。
でもなんで!?なんで僕を此処にいさせたいの!?
一体どうして…………待って……
僕:「あの、どうして僕が火事とは無関係であると知っているんですか?」
アルベド:「書庫の小人さんから聞いたんだよ。」
……浮遊少年のことだ。
この人は彼のことを知っている。
…………
僕:「……わざわざ国籍まで用意して、僕をここに留めたい理由ってなんですか?」
心当たりはある。
アルベド:「君に言う必要がない。」
…………
浮遊少年(回想):「だがお前よりもお前のことに詳しい奴は見つけた。お前のその体のことに関してはそいつから聞き出すから気にしないでいい。」
…………考えてみればそうだ。
僕を公爵邸に連れて来たのはこの人だ。
僕:「あなたは………僕が何処から来て、僕が今何故こんな体になっているのか知っているんですか?」
アルベド:「知らない。そんなことを気にするより、私からのお願いに対する答えを急いだほうがいいよ。私はせっかちなんだ。」
…………
僕:「……わかりました。お引き受けします。」
浮遊少年が言っていた通りだ。
この人は…………気色が悪い。




