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猛獣の化け方ガイド  作者: 水蛍
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過ぎ去る日々は本人にしかわからない

体が変体を遂げてからもう随分時間が経った。

その間に変わったことがたくさんある。

まず一つ目、浮遊少年がちょっと、ちょ〜っと優しくなった。

蹴られなくなったし、まあ鈍臭いと殴られるんだけど。


浮遊少年:「今日は朝何を食べた?」


僕:「ジャムが塗られたパンを食べました!」


で次に、なな、なんと!言語マスターした〜!!

日常会話程度なら結構スラスラ喋れるぜ!

いや〜本当に大変だった。

来る日も来る日も鬼畜教官に単語を叩き込まれてやっと!!

あ〜、思い出したくもないので勉強中の出来事については割愛する。


浮遊少年:「よし…………もう基本的な会話はできるな。それじゃあ、俺は戻る。明日からはもう来ない。」


僕:「…………え?終わり?み、見納めですか!?」


浮遊少年:「いや、すぐまた会うことになるだろう。資料室にいるし、()()()のこともあるからな。」


あいつ…………って一体誰なんだろう?

いい加減教えてくれないかなぁ。


浮遊少年:「あ、それと…………今日からまたあの騒がしい餓鬼が来るぞ。」


ああ、あの子ね。

僕の言語学習が始まった途端あまり来なくなってしまった、馬鹿力で可愛いあの美少年。

元気にしてるかな。


浮遊少年:「それじゃあ。」


僕:「お世話様でしたぁーー!!」


つい軽い感じでお礼を言ってしまったが、浮遊少年はなんの反応もせず、素っ気なく部屋を後にした。

てっきり蹴られるかと思ったけれど、刺さらなかったみたいだ。

自分は煽りの天才だと思っていたのだけど、まだまだみたい。

いや、彼が僕の言語学習期間中に耐性をつけたと言うべきかな。

…………まあ、思い出したくないからなんでもいいや。


…………悪漢襲来、火事、僕の体の変化、そして僕のことについて知っている(らしい)イカれている(らしい)人。

色々気になるなぁ〜。

一番気になるのは、僕のことを知っている人。

どこまで僕のことを知っているのかわからないけれど、この世界に生まれてから人の姿になるまでの間に僕がまともに会話をしたのは浮遊少年以外にはいない。

そもそもまともに話せる様な状態じゃなかった。

それなのに僕のことを知っている時点で、かなりきな臭い。


一体どんな…………

…………ずっと思ってたんだけど、異世界ものの漫画って転生だけじゃないよね。

転移とか召喚とか、色々ある。

ひょっとして僕のことを知っている人っていうのは、僕をこの世界に召喚した魔法使いとか!?

…………いやでも、召喚されたとかなら僕が狼の姿だったことの説明がつかないか。

ああ〜、夢を見すぎるのは良くないな。

大体仮に召喚されたとしても、なんなんだって思うし。

僕弱いし。ぶっ壊れた能力もないし。

魔術は…………そういえば火事の時に使えてたな。

でも瞬間移動って、まるっきりサポート用の魔術な気がする。

はぁ……何故僕には特別な力とかがないんだ……!!

なんて嘆いてもしょうがないんだけど。


僕:「願わくば、異世界から召喚されたから勇者でした〜…………とかがいいなぁ〜」


ペット扱いされまくってた分、チヤホヤされたいなぁ〜〜。


そんな淡い願望を抱きながらベッドの上で寝転ぶ。

ゴロゴロゴロゴロ、暇なので寝転び続ける。

すると…………


僕:「…………ん?」


床から何やら音が聞こえてくる。

初めは小さかったその音はだんだん大きくなっていき、それに合わせて振動まで伝わってくる様になった。


ドスドスドスドスドスドスッ……


何かが近づいてくる。

こういう時に焦ってはいけない。

こういう時に一番大事なのは冷静さと、タイミングである。

一歩でもタイミングを間違えれば命に関わるかもしれないから絶対に失敗できない。


ドスドスドスドスドスドスッ……


来るッ!3、2、1、せーのっ!!


ちょっとお行儀悪いけどベッドの反発力を使って高くジャンプ!!

必殺の!!ベッドランポリン!!


幼児:「ばぁあああーーーー!!」


扉から飛び出し、そのままの勢いでベッドにダイブしてくる幼児。

しかし言語学習期間中にもうそれは一度食らった。


幼児:「…………あれ?」


ワンパターンすぎてぇ!!お見通しじゃあああ!!

くらぇえ!必殺コンボ技!!全体重アタック!!


幼児:「グワッ!?」


僕:「フッ、そう何度も同じ手は食いませんよぉ。」


使用人の人:「ちょっと!!何をしているんですか!?その方を誰だと思って!!今すぐ退きなさい!!」


…………ッハ!そ、そうだった!

この子一応お坊ちゃんだった。

ヤンチャすぎてすっかり忘れてしまっていた。


幼児:「…………ぐ〜ッッ、避けられた〜〜!!!」


甲高い声が部屋中に響き渡った。

この感じ、なんだかどうして、凄く久々に感じる!!

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