エイゴって何?美味しいの?
あの火事から何日かが経った。
目覚めてからなら今は三日目の朝だ。
ここ二日は幼児と戯れたり、ご飯もらったり、お風呂入れてもらったりとしたが、まあそれは割愛しよう。
ご飯は意外と質素だったし、お風呂も意外と普通だったし。
特に印象に残る出来事は無かった。
強いていうなら幼児がメチャクチャ面倒見てくれたことかな。
ご飯を食べさせてくれたし、髪洗うの手伝ってくれた。
可愛い上に親切で、凄くいい子。
力加減が出来ないところを除けば、正に完璧な美少年だよ、あれは。
…………さて、突然だが今僕には悩みがある。
(多分)先生:「#########。####?」
僕:「…………ワッツ?アイキャントスピークイングリッシュ!ワタシエイゴワッカリマシェーン!!」
そう、何故か知らないが今僕は言葉、言語の勉強を受けている。
理由はわからないけれども、言葉を学べるのは非常に助かる!非常に助かるのだけれども…………
(多分)先生:「#######、#########。####、#######。#######…………」
ペースが早い…………
何言ってるのかまるでわからない。
片手に本を持って、その中に書かれている絵を指差しながら言ってくれてるから、この絵の単語であることは間違いないと思うんだけど…………
多分(先生):「##########、######。##########、##########…………」
早い、とにかく早い。
こんなハイペースで覚えられるわけないでしょう。
それともなんだ。このペースでも覚えられるぐらい簡単な単語なのか!?
だとしたらこの世界の子供達凄く優秀だね。
僕には無理だ…………
[さらに五日後]
(多分)先生:「#######、######?」
僕:「これが、リンゴ。これは、アメ。」
これが、それが、リンゴ、アメだけは覚えた!
これが!五日間の!成果だ!!
…………いや〜、だってね〜、日本語で教えてくれるわけじゃないからね〜。
殆ど絵で判断しているからこんなもんだよ。
ん?僕の物覚えが悪いんじゃないかって?
そんなわけはない。断じてない。
(多分)先生:「##########。」
僕:「これが、ブドウ。これが、ケーキ。これが、お肉。これが、焼き魚。」
ブドウ、ケーキ、肉、魚は覚えた。
…………あれ僕、食べ物しか覚えてない?
僕、こんなに食欲旺盛なやつだっただろうか。
確かに絵を見ながら、美味しそ〜、とか考えていたけど!
……こんなことで覚えられるのかな。
でも、話せる様にはなりたいし……
[それからさらに十日後]
無理だぁ〜。
食べ物の絵がなくなってからまるでわからなくなっちゃった。
言葉先生(仮)もお手上げって感じだったし。
まあ始めてからまだ十六、七日しか経っていないわけだし、根を上げるのは早すぎる気もするけれど……
いやでも、こんなの日本語訳なしに英語を覚える様なもんだよ!?
英語のテストで連続で赤点を叩き出していたこの僕に出来るわけがないんだよ!
せめて、せめて翻訳出来れば……
…………スマホが欲しい。
[そして翌日]
僕:「…………zzz」
朝、とてもとても幸せな眠りについていた。
のだけれど…………
???:「………………」
隣に誰かいる。
目を開けていないから誰かはわからないけど、絶対誰かいる。
最近は幼児が朝起こしに来てくれるのが日課だったんだけど、時間になっても来ないし…………
ど、どうしよう。
何故だか体が勝手に硬直して、寝たふりをしてしまっているのだけれど……これはアレか?
ヤバいやつか?
そーっと、うっすら目を開いてみた。
すると…………
浮遊少年(今は椅子に座っている):(起きたか)
僕:「ホギャァアアアアアアア!!」
浮遊少年:(煩い。)
僕:「ぎゃっ!?」
いでデデデ!!頬引っ張らないで!
ていうか蹴るんじゃないんだ。ちょっと優しめ…………じゃない!
ああぁぁ、起きるんじゃなかった。
この今はぷかぷか飛んでいない浮遊少年、最後に会ったのは少なくとも十八日以上前。
僕の記憶が正しければ、大分癇に障るようなことした様な……
最後逃げる様に立ち去ったし。
いや癇に障らなくても結構酷い目に遭わされてきたけど……
浮遊少年:(…………相変わらず騒々しい。)
人の心をいちいち覗くんじゃぁないよ!
プライバシーの侵害!ダメ!絶対!
浮遊少年:「はぁ………………」
深いため息が耳にキタ。
なんであなたがそんな嫌そうな顔しているんですか?
浮遊少年:「今日から俺がお前に言葉を教えるからだ。」
……………………は????




