馬鹿力流、犬の散歩の仕方
モグモグ、モグモグ…………
今は朝ごはんの最中。
とーっても静か!
こうやってしんみりご飯を食べているとテレビの偉大さが身に沁みて伝わってくる。
テレビ…………見てぇなぁ〜〜〜!!
ん?僕は何食べてるのかって?
見ればわかるでしょ?ドックフードでしょ?(怒)
ああ〜、犬扱い、慣れたような慣れてないような……
幼児:「####!」
メイドさん:「####……」
幼児はメイドさんに食べさせてもらっている。
流石御坊ちゃま。様になってる。
けど………………
机には幼児一人。
あの美男美女の夫婦はいない。
…………お仕事かな?
……………………
昨日のことについてぼーっと考える。
…………昨日も一昨日もだけど、やっぱりもう図書館には近づかないほうがいいかな。
ていうか、よくよく考えてみればアホだよね、僕。
だって殺されかけたっていうのにノコノコ近づくなんて…………
いや、魔術を習いたかったっていうのは本心だよ?
このままペットとして、このお屋敷の中で、退屈なまま短い一生を終えるなんて嫌だったし…………
でも、あの感じはもう無理かなぁ〜。
ま〜た蹴り殺され…………
ふと思い出した。
目と鼻の先に剣が突きつけられていたことを。
…………アレも魔術?やっぱり凄いなぁ。
風圧に、火の玉に、剣まで…………何でもあり。
ハッ……!もしや魔術ならご飯とかスイーツも作れる!?
作れるんだとしたら…………うわぁあああ!!やっぱりもう一度…………いやでも、でもぉおお!!
…………それにしても、昨日のあの怒り様(?)、何だったんだろう?
何で突然…………
浮遊少年(回想):『お前、魔術を使ったことがあるだろう?』
…………いや、ないよ!
ないから教わりに来たのに…………結局……
………………僕が魔術を使った時、なんか戸惑ってた様だったけど…………
戸惑って、僕を殺そうとした?何で……?
…………でもまあ、浮遊少年の言っていたことを信じるなら、本当に僕は魔術を使うことができる。
転移…………だっけ?
わかる、テレポート的なアレだ。
……………………あの言葉の意味も聞きたいし、転移についても教わりたいし…………やっぱり……
いやでも、やっぱり少し様子を見よう。
そうだよ、暫く行かなければ癇癪も治るかもしれないし。
うん、そうしよう、そうしよう。
というわけで、まずは気分変えていこう!!ご飯に集中!!
僕:「ムシャムシャ…………」
セルフムシャムシャ。
それにしても…………
ドックフード、悪くないな……
やばい、犬化が進んでいる!
どんどんどんどん犬っぽくなっていっている!!
ダメダメダメダメ、ぜっったいダメ!
(朝食後)
……………………
僕:「ハァァガガッガ、ハァッ……ァ、ァガ……!」
前略、皆々様へ。
ワタクシ、本日をもって、死ぬかもしれません。
幼児:「####〜〜〜〜〜♪」
ぎゃぁああああ!!待って落ち着いて!!はやまるんじゃなーーーーー…………
僕:「あ、アガがガガガガガガガガガ!!」
床に二十三回、壁に十回、途中途中に置いてある小さな机や椅子に六回、打ち付けられた。
そう今僕は、首輪をつけられて、手綱を握られ、首を絞められ、尚且つ引き摺り回されている!!
床と何回キスしたかはもはやわからず、そして…………
使用人の一人:「#、##、##########〜〜〜〜〜!!」
チラッと見ただけだけど、こっちに手を伸ばしてた。
それはもう、止まってくれと言わんばかりに。
哀れも哀れ。
何せこのじゃじゃ馬、壁に飾られていた絵やら、装飾用に置かれた花瓶、計八つ、いやそれ以上の数を壊して回っているのだ。
………………まあ、正確には僕がぶん回されて色々なところに当たっているからなんだけどね。
本当にもう、怖い。
割れ物とかガラスに当たったときひやっとする。
あと………………
僕:「ググゥッゥウウウウウ!!」
く、くるじぃィイイイイ!!
死ぬぅうう!
首ッ、息がァアアああ!!
あと皮も!皮もすりむけちゃう!!
もう真っ赤っか!!熱い!!燃える!!
誰かァアアア!!この暴れ馬を止めてーーーーー!!
ガシャンガシャン、パリン…………
そんな思いも虚しくまた一つ、物が壊れる音が響き渡るのであった。
……………………
(それから)
幼児:「#ー、#ー、#ー〜〜…………」
気づくと部屋の中にいた。
幼児の部屋だ。
幼児:「####ーー〜〜…………」
幼児はベットで眠っている。
ぐーぐー寝言を言いながら………………
………………寝顔だけはめっちゃ天使。
……今日のはヤバかった。
首が持っていかれるところだったよ。危ねぇ危ねぇ。
……はぁ〜、いいことないなぁ〜…………
ゴロンと仰向けになって寝そべった。
寝そべりながら、浮遊少年のことについて考えた。
いたぶり尽くされた記憶しかなかった。
…………小動物相手に手厳し過ぎる。
幼児もそうだけど、もうちょっと僕を労ってくれないかな。
このままだと僕の体が持たな………………ん?
天井を見上げていたため気づかなかったが、ふと視界に人影が映っていた。
僕は目線を天井から人影の方に移した。
するとそこにいたのは………………




