謎の現象
浮遊少年:[違う、そうじゃない。]
…………え?
何か違ったらしい。
まあ、イラスト見ただけだからね。
僕:[何が違うんですか?]
浮遊少年:[ただ見るのではなく、本に描かれている動作や想像図から真似るんだよ。]
そう言って浮遊少年は、こんな風にと言わんばかりに自分の指先から火の玉を出した。
…………今思ったけど、暑くないのかな。
そんなことを考えながら火について描かれたページを捲る。
描かれていたのは火と、火に関連する道具や色んな炎のあり方など。
このモヤモヤは…………熱?
…………………………………???
浮遊少年:[それと、自分の魔力を自覚して動かすのも基本だ。]
…………自覚?って言われても…………
こう、目には見えないオーラを感じるってことかな?
う〜ん……?
さっぱり訳が分からず、とりあえず意識してみることにした。
自分の手を見て、念じて、そして…………
予想通り、何も起きない。
…………はぁ〜〜〜。
今僕のテンションは地の底にまでついている。
浮遊少年:[…………次。]
え?…………次って…………
浮遊少年:[なんだ?やらないのか?]
え、いや、やりますけど。
でも、あんまり興味ないのかと…………
…………いや、あの目は高みの見物する時の目だ。
うっわ、なんか小馬鹿にされてる感じがしてカチンとくる。
ふん!でもまあ、それならそこで見ているがいい。
絶対成功させるんだから!!
僕はめげない。
そして…………
(暫くして)
僕:「ハァァ〜〜〜〜〜〜」
終わった。
もうページがない。
全て試した。
ああアアアアアア!!終わっちまったぁあ!!
浮遊少年:[なんだ、つまらない。]
グッ!!む、胸が痛い!
でもだって!だって…………
ぬぁあああああああ!!←ヤケクソ
浮遊少年:[………………………………]
ああもう!こんなことしてたらすぐ朝になる!
どうしたら…………ん?
ふと(イラストだけの)本をもう一度見た。
……………あ!
そして気づいた。
もう読み終わったと思っていたけれど、最後の方に少しだけページが残っていたのだ。
僕:[師匠!これ、これは!?]
浮遊少年:[誰が師匠だ。ん?………………ああ、それは…………]
…………やっぱりちょっと優しくなっている気がする。
昨日とは打って変わって、なんか感動〜〜ッ!
浮遊少年:[あ“?]
え…………?
次の瞬間頭を鷲掴みにされた。
そして潰されそうなぐらいの力が加わった。
浮遊少年:[…………お前、調子に乗ってるだろ?]
僕:[いいえ!乗っていません!!]
浮遊少年:[そういう軽い情緒は全部見えてるんだよ。]
僕:[…………す、すみません。]
浮遊少年:[……………………フンッ。]
僕の頭から手が離れた。
…………林檎みたいに潰されるんじゃないかと思った。
こっわ。
体がプルプル震えた。
あの時、幼児がプルプルしてた気持ちが少しわかった気がしたのだった。
浮遊少年:[さっき言っていたこれ、これはかなり難易度の高い魔術だ。お前には使えない。]
…………え?高難易度……?
僕:[どんな魔術なんですか?]
知りたい知りたい。
もしかしたら使えるかもしれないし。
浮遊少年:[転移。]
…………んえ?
てて、転移?
って、瞬間移動、テレポートみたいなあれか。
…………使えそうにないな。
でも瞬間移動ができたらめっちゃ便利だろうなぁ。
こう、シュッシュッシュっと。
……………………
僕は改めて本を見た。
そこには球体の絵と、移動するような意味合いの矢印が描かれている。
あとは立体的な絵だったり……………………
……………………まあ、やってみよう!
浮遊少年:[無駄だと思うが。]
黙っとれ!!
浮遊少年:[は?]
(無視)こう、意識して…………別の場所にグワッと移動する感じね。
フンッ!
僕は頭に目一杯力を入れて念じた。
しかしやはり何も起きない。
僕は暫く念じ続けた。
念じて念じて、念じ続け…………
………………………………
浮遊少年:[……………………]
………………なんか小さく、はぁ、ってため息が聞こえた気がしたんだけど。
ん?…………ってうわぁアアアアアア!!!
なんと、浮遊少年が何故か欠伸しながら火の玉を撃ってきた。
何故、と聞かれるても分からない。
暇だったのかもしれない。
………………いや、暇だからって火の玉撃っちゃダメでしょ!!
やばいやばいやばいやばい燃える燃えるも・え・る!!
ギャァああ!!!こんな燃えやすいものがたくさんあるところで火遊びなんてやるなぁあああ!!
死ぬぅーー!!
浮遊少年:[………………………]
僕は逃げ惑った。
必死になって、逃げようとして、そして…………
シュンッ…………
浮遊少年:[…………!?]
僕:[え………………ええええええ!!ちょっと待って!!]
突然と視界が変わった。
さっきまでは下にいたはずだったのに、気づけば宙を飛んでいた。
僕:[ギャァアアアアアア!!誰かーーーーーーー!!]
初日のトラウマが蘇っていく。
どんどん頭が真っ白になっていって…………
浮遊少年:[ん。]
ってイッタァァア!?
尻尾を浮遊少年に掴まれた。
本当に初日を再現しているのかと思えた。
浮遊少年が逆さになった状態の僕をジロジロ見てきた。
そして…………
浮遊少年:「#、##ッ…………」
え?な、何?笑って、る…………?
浮遊少年:「#ッッ########!!!」
浮遊少年は信じられないほどの大笑いをした。
…………え、ど、どうした?あ、頭でも打った?




