小動物にファンタジーは厳しいらしい
こんなんでわかるかーーッッ!!
なんじゃこの…………グジャグジャした字は!暗号か!?
僕は本をボコボコ叩いて言った。
僕:[あの!これだけじゃわかりません!]
浮遊少年:[初歩中の初歩的な魔術だぞ?子供でも使える。]
なんの嫌味でもないのだろう。
平然とした顔で言われ一層頭にきた。
それでも僕には使えないんですぅ〜!
文字読めないんですぅ〜!
それとこういうのは教えるじゃなくて放任って言いますぅ〜!
浮遊少年:[………………………………]
ん?な、何…………?
じーっと見られている。
…………
浮遊少年:[…………そもそもお前、魔力、あるのか……?]
…………え……………………
僕:[いやいやいやいやいや、あるでしょう!!?]
ない筈がない!だって…………えっと…………ファンタジーなんだから!(?)
浮遊少年:[…………こればかりは俺にもわからん。]
手を広げて、さぁ?のポーズをとる浮遊少年。
……んえ?魔力って感じたりとかできないの?
こう、すごい魔力だ〜、って。
浮遊少年:[お前は見ただけで相手の体重や筋力がわかるのか?]
いや…………わからないけど…………
え、どうしよう。
僕、魔力あるよね!?
いや〜でも、狼はないのか?動物は魔術を使えないのか!?
そんな理不尽な〜!!
浮遊少年:[…………お前、なんでそんなに魔術が使いたい?]
突然の質問。
僕は、理由はあった筈なのに、いざ聞かれると咄嗟に返せないタイプだ。
僕:[…………え?それは…………]
それは…………えっと…………
火とか出してみたいし、空を飛んでみたいし、他にもこう……土とかを操ったり…………
夢、ロマン、あと…………
僕:[…………ど〜しようもないぐらい、暇だから…………?]
浮遊少年:[…………………………………]
飛んでいるからということもあるが、虫を見下ろすような目をされた。
うわぁあ見下されてる!
やめて!
その、ゴミカスを見るような目はやめて!
浮遊少年:[…………はぁ〜、お前に構うだけ時間の無駄のように思えてくる。]
グッ…………!
僕の心が20%傷ついた!
浮遊少年:[だが…………二言はない。使えるのかどうかは兎も角、教えてはやろう。]
…………え、マジで!!?
案外、真面目なのか?僕はそんなふうに思ったり、思わなかったり…………
…………
<〜魔術(初歩)の説明〜>
担当:浮遊少年
[初めに、魔力とは身体機能の一つである。]
[お前は奇跡だとでも思っているようだが、この世界では人は誰しも魔力を持つ。]
[お前みたいな小動物までは知らんが…………]
[その魔力を練って形を作る。物質を作り出す場合に重要なのは作り出す物をよく理解していることだ。]
[火なら、熱や、気体や、色なんかでもいい。それを理解して覚えていれば、再現できる。]
[魔術の基本は理解と想像力だ。]
<〜終了〜>
浮遊少年:[以上。]
僕:[早ッ!]
ちょっと待って!
魔力を練るって言ってたけどどうやって練るの!?
僕はそこが出来ないんだけど!?
浮遊少年:[魔力は生まれた時から使えて当たり前。使えないならお前にはないということだろう。]
はぁ〜ッ!?そんな適当な!
こう…………なんかもっとあるでしょ!?
力がぁああ!みたいな!
浮遊少年:[…………お前は手足の動かし方を習ったことがあるか?]
…………え?
手足…………?
浮遊少年:[魔力とは身体機能。生まれながらに手足を持ち、動かせるのと同じだ。魔力の操作なんてできて当然。だがお前はそれすら出来ていない。一体どう教えろと?まさか手取り足取り教えろなんていうんじゃないだろうな?]
いや、それは…………それは…………
ぬぅぅぅう〜〜〜ッ……
淡々と説明し終えて面倒くさくなったのか、浮遊少年は本を読み始めた。
誠に勝手である。
親切にしてくれるようになったのかと思ったらこれだ〜……
こんな右も左も分からない仔羊、じゃなくて小狼にどうしろと〜ッ!
ああぁあああ!!折角抜け出して来たのにぃィィ!
思わずブリッチして頭を地面に擦り付けそうになる僕。
僕:「アウゥゥウウ…………」
…………魔力は使えて当たり前か。
本当に初歩の初歩の初歩なんだろうなぁ〜。
僕は浮遊少年のさっきの説明を思い返す。
確か…………理解と、想像力………?
…………そんなもの僕にある?
試しに火を思い浮かべてみる。
熱くて、暖かくて、赤色で…………
うん、イメージ出来た。
で………………
………………………………………………
だよね〜〜!!?
そうなるよね!?
想像して、はい次は?ってなるよねぇ!?
大体何もないところから火を出すなんて、最初から難易度高くないか?
浮遊少年(回想):(初歩中の初歩的な魔術だぞ?)
…………ッ、ムカつく。
ッ…………だってぇ!出来ないんだもん!!
無理無理、一人でなんて絶対出来ないよこんなの!!
僕は床に疼くまってまた悩んだ。




